特別企画
【Editor’s Column】オペラ馬鹿のレコード古地図

名前も長けりゃ、聴き応えもたっぷり(?)

皆様あけましておめでとうございます。さて昨年2025年の「新語・流行語」ならぬ(個人的)「最頻出語」は、何と言っても「DFD」だった。なにせ担当した連載名が「週刊」フィッシャー=ディースカウ(DFDはDietrich Fischer-Dieskauの頭文字)ということで、毎週毎週〆切、校了に追われて、100回以上は口にしたかな。

ここでさっそく横道にそれるんだが、去年は前年(2024年)末に80歳の誕生日を祝ったMTT:マイケル・ティルソン・トーマス記念CDボックスがDG、Sonyからそれぞれ14枚組、80枚組で発売され、かなりの話題になったのも印象深い。あと2025年が没後20年だったCMG:カルロ・マリア・ジュリーニも60枚組のメガボックスが出たのも朗報だった。一方HSI:ハンス・シュミット=イッセルシュテットは、昨年が生誕125周年のアニバーサリーということで復刻ラッシュを期待していたんだが、こちらはマイブームで終わってしまった感じ。その後も、好評配信中の『不滅の名盤』ではABM:アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(ドビュッシーの名盤)の担当が回ってきた。ヴァイオリニストではASM:アンネ・ゾフィー・ムターFPZ:フランク・ペーター・ツィンマーマンなど、なぜかフルネームが長い名手にやたら遭遇した。

……という流れで、今回は「ダブルネーム=長い呼び名の名歌手」祭り。まずは女声陣からいくと、ブルガリアのソプラノATS:アンナ・トモワ=シントウ(1941~ )とイタリアのメゾソプラノLVT:ルチア・ヴァレンティーニ=テラーニ(1946~99)。ATSはカラヤンとの《ばらの騎士》が金看板で(冒頭のジャケット写真は同じR.シュトラウスの「四つの最後の歌」他)《ローエングリン》《ナクソス島のアリアドネ》などドイツ・オペラがメインだが、ヴェルディ《アイーダ》やプッチーニ《蝶々夫人》などイタリアものも素晴らしかった。LVTの方は、1980年代に一世を風靡したロッシーニ・メゾで、いよいよこれから円熟、という時の早世(享年51)が惜しまれる。

もう少し遡ると、カラヤンの旧録音《ばらの騎士》ゾフィー役で有名なTSR:テレサ・シュティヒ=ランダル(1927~2007)は、1950年トスカニーニの《ファルスタッフ》の録音にも参加したリリック・ソプラノ。メゾ(コントラルト)ではHRM:ヒルデ・レッセル=マイダン(1921~2010)、1960年代カラヤンの《第九交響曲》やモーツァルト《レクイエム》などの常連で、エーリヒ・クライバー指揮ウィーン・フィルの《フィガロの結婚》マルチェッリーナは脇役ながら存在感充分だった。

テノールでは、まずはイタリアの歴史的大歌手GLV:ジャコモ・ラウリ=ヴォルピ(1892~1979)。仮にエンリコ・カルーソー、ティート・スキーパ、ベニアミーノ・ジーリを歴史的三大テノールと呼ぶなら、もう一人「四天王」として加わるのがこの人。あのフランコ・コレッリの師匠でもある。ヴェルディ《ルイザ・ミラー》(ロッシ指揮/Warner Fonit)ロドルフォ役が1951年の録音ながら音質も良く必聴。

時代を一気に下って1980年代、モーツァルト・テノールとして、ARJ:アントニー・ロルフ・ジョンソン(1940~2010)とHPB:ハンス・ペーター・ブロッホヴィツ(1952~ )の二人が双璧を成していた。ARJはイドメネオやティート帝といったセリア役をメインとしつつ、ストラヴィンスキー《放蕩児の遍歴》やブリテン《ピータ・グライムズ》など、レパートリーもユニーク。HPBは、デルモータ、ヴンダーリヒ、シュライアーとリレーされてきた《魔笛》タミーノ役の正統な後継者だった。シューベルト、シューマンのリート・アルバムも必聴。ハンス・ツェンダー編曲のビックリ(?!)《冬の旅》なんて録音もあった。

最後はバス、バリトン。古い方からいくと、ドイツの名メゾ、ブリギッテ・ファスベンダーのお父さん、と紹介されることも多いWDF:ヴィリ・ドムグラーフ=ファスベンダー(1897~1978)、いやいやそれは逆で、「大歌手WDFの娘も名オペラ歌手」というのが正しい。1930年代グラインドボーン音楽祭のF.ブッシュ指揮モーツァルト《フィガロの結婚》のタイトルロールはモダンで粋な歌唱が聴きもの。 お次はフランス人、1940年代~50年代のドビュッシー《ペレアスとメリザンド》のゴロー役の極めつけ、HBE:アンリ=ベルトラン・エチュヴェリ(1900~60)。ジャック・ジャンセンの名ペレアス(1941年デゾルミエール盤/EMI)とセットで絶対に聴き逃せない。イタリア・オペラのバスでは、NRL:ニコラ・ロッシ=レメーニ(1920~91)が外せない。マリア・カラス主演の全曲盤《ノルマ》《清教徒》《運命の力》から《セビリャの理髪師》《イタリアのトルコ人》といった喜劇まで、必ずといっていいほどこの名バッソ・プロフォンドが脇を固めていた。

文=編集部(Y.F.)

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