クラシック
リイシュー&BOX注目盤(9月)

最新盤レビュー
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ここでは、最近発売されたクラシックのリイシュー&BOX盤のなかから注目盤を厳選して紹介します。

バイロイトの《トリスタントイゾルデ》の金字塔、世界初SACD化

 バイロイトはある意味《指環》と《パルジファル》のための劇場だが、《トリスタンとイゾルデ》は違った意味で何か特別な響きがする。カラヤン(1952年)にしろ、カルロス・クライバー(1974年)にしろ、エース登板!といった趣がある。そしてこのベームの名盤は、そんなバイロイト《トリスタン》史において、ちょっと次元が異なる高みにあるようにも思える。よく「筋肉質」とも形容される壮年期のベームの指揮は、歌手たちを置いてけぼりにするような(と言ったらやや語弊があるが)推進力があって、この作品の新たな魅力も引き出したユニークな、しかしそれでいて王道を行く凄演であった。また今さら言うまでもなくタイトルロールのヴィントガッセンとニルソンが、そのベームの棒に喰らいついていってこそ実現した世紀の名演奏、という面もある。……などと、この記念碑的《トリスタンとイゾルデ》を語り始めると紙数が何枚あっても足りないが、とにかく今回が最新マスタリングによる世界初SACD化とのこと、今年の「バイロイト祝祭150年祭」がいよいよハイライトを迎えた感がある。(Y.F.)

ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲

カール・ベーム指揮バイロイト祝祭劇場o・cho,ヴォルフガング・ヴィントガッセン(T)ビルギット・ニルソン(S)マルティ・タルヴェラ(Bs)エーバーハルト・ヴェヒター(Br)クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)他
〈録音:1966年7月(L)〉
[グラモフォン―タワーレコード(S)PROC2501~3]※3枚組SACDハイブリッド

バイロイト祝祭150周年 & 戦後再開75周年を祝う「ワーグナー合唱曲集」世界初SACD化

なーんだ、ワーグナーの歌劇/楽劇から有名合唱曲だけを抜粋した寄せ集めCDか、などとスルーすること絶対になきよう! このアルバムは、ワーグナー没後75年の1958年に、わざわざ「合唱の神様」ヴィルヘルム・ピッツを指揮台に迎えてバイロイト祝祭劇場でセッション録音されたれっきとしたオリジナル・アルバムであり、個人的にもLP時代から長らく愛聴してきたワーグナー合唱曲集の「決定盤」。ピッツが振るバイロイト祝祭合唱団は、とにかく地の底から響いてくるような迫力と、それでいて精度の高さも共存していて、こうした奇蹟のような音空間は、今ではなかなか聴けなくなってしまった。そして、ゲスト・ソリストとして文字通り最盛期にあったグラインドルの腹に響くバスが聴けるのも贅沢なボーナス。さらなる付録として、ヨッフム指揮の《パルジファル》前奏曲と聖金曜日の音楽(ミュンヘンでの別録音より)が併録されているのも実に気が利いている。(Y.F.)

ワーグナー/合唱曲集(付《パルジファル》第1幕への前奏曲,聖金曜日の音楽*)
〔さまよえるオランダ人,タンホイザー,ローエングリン,ニュルンベルクのマイスタージンガー,神々の黄昏,パルジファルより〕

ヴィルヘルム・ピッツ指揮バイロイト祝祭劇場o・cho,オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送so*,エリーザベト・シェルテル(Ms)ヨーゼフ・グラインドル(Bs)
〈録音:1957年12月*,1958年8月〉
[グラモフォン―タワーレコード(S)PROC2504]※SACDハイブリッド

「N響100年」記念、サヴァリッシュとの名コンビによる2点が待望のSACDリリース

現在「レコード芸術ONLINE」でも関連特別記事を好評展開中の「N響100年」企画として2組4枚分の音源がSACDハイブリッドで登場。この2点に関しては、すでに広瀬大介氏が寄稿されているので(第3回)そちらもぜひお読みいただくとして、ここでは、サヴァリッシュの録音歴について少々振り返ってみたいと思う。主にワーナー(旧EMI)とデッカ(旧フィリップス)に相当な分量の録音を遺したサヴァリッシュだが、意外にも彼の主要レパートリーのうちかなりの曲が未録音のまま残されてしまった、という面もある。例えば得意にしていたR.シュトラウスの管弦楽曲にしてもオペラにしても《アルプス交響曲》や《ドン・キホーテ》あるいは《サロメ》《ばらの騎士》はセッション録音されなかった。またブラームスの交響曲全集は2度のスタジオ録音(ウィーン響とロンドン・フィル)があるのにベートーヴェン全集は1度(コンセルトヘボウ管)のみ。それは、サヴァリッシュが長くバイエルン国立歌劇場に軸足を置いていて、シンフォニー・オーケストラの主要な「手兵」となると、晩年のフィラデルフィア管くらい(あと録音があるのはスイス・ロマンド管?)という事情もあったかも知れない。
 そこで俄然重要になってくるのが、事実上の彼の「手兵」とも言えるN響との数々の協同作業で、これまでもいくつかの貴重なライヴ盤が発売されていた。今回久しぶりのリイシューとなった《死と変容》は彼の唯一の録音となったし、メンデルスゾーンの《エリア》も、スタジオ録音の方はライプツィヒ・ゲヴァントハウス管との唯一の共演盤であることから、もしかするとオーケストラとの阿吽の呼吸という点ではN響の方がしっくり来ていたかも。その《エリア》は、旧録音の歌唱陣がテオ・アダム、シュライアー、アメリング、当録音がヴァイクル、ザイフェルト、ポップと、それぞれの時代(1968年と1986年)の最高の布陣が妥協なく配されているのは、けだし「オペラの人」だった、と今さらながら再確認した。(Y.F.)

ベートーヴェン:交響曲第5番,同第8番,ブラームス:交響曲第1番,R.シュトラウス:死と変容

ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮NHKso
〈録音:1982年5月(ベートーヴェン),1987年4月~5月(L)〉
[ソニー・レコーズ(D)SICC19096]※2枚組SACDハイブリッド

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メンデルスゾーン:オラトリオ《エリア》全曲

ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮NHKso,国立音楽大学(合唱),ベルント・ヴァイクル(Br)ルチア・ポップ(S)アリシア・ナフェ(A)ペーター・ザイフェルト(T)他
〈録音:1986年10月(L)〉
[ソニー・レコーズ(D)SICC19094]2枚組SACDハイブリッド

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ピアニスト、ワイセンベルクの雄弁なポーカーフェイス

「鋼鉄のタッチ」と称されるアレクシス・ワイセンベルク(1929~2012)の生涯は波乱に満ちている。ブルガリアのアシュケナジム(東欧系ユダヤ人)家系に生まれ、ナチス占領下で辛くも出国、パレスチナを経てアメリカ合衆国に渡り、ジュリアード音楽院に学ぶ。1947年には合衆国デビューを果たして、ヨーロッパ、アフリカまで活躍の場を拡げるが、56年に自身の音楽を“再構築”するため演奏活動を休止する。そして66年に指揮者カラヤンのフックアップによって本格的なカムバックを果たし、このBOXにも収められている数々のレコーディングにも取り組んでいった。しかし80年代頃から現れ始めたパーキンソン病の症状によって、彼の華々しいキャリアは、あまりにも短く閉ざされることになる。そんな彼のピアニズムは卓越した技巧を持ちながらも、機械的で無感情なものと評されることがある。しかし彼が見つめたものは音楽そのものの表情だったはずだ。たとえば2種の録音が収められた《ゴルトベルク》にもそれを聴くことができる。実際に10年近くかけて“再構築”された、ピアノ演奏史上、他に類を見ない至芸である。(H.H.)

アレクシス・ワイセンベルク/ワーナー録音全集
〔J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988,チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番,ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番,他多数〕

アレクシス・ワイセンベルク(p)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮パリo,レナード・バーンスタイン指揮フランス国立o,他多数
〈録音:1966年2月~83年6月,他〉
[Warner Classics(S/D)2685429126]※海外盤37枚組

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ヘンツェの多義性を強調する、交響曲全集の決定盤

20世紀の作曲家については、前衛/保守の二項対立でつい語られがちだ。しかしハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926~2012)はそのどちらへの帰属も拒んだがゆえに、その両面を併せ持つ人物であった。彼の生涯も別項のワイセンベルクと同じくらい激動だ。幼少期にヒトラー・ユーゲントに入隊させられ、ドイツ軍捕虜として終戦を迎える。また同性愛者であった彼は戦後ドイツに漂うホモフォビアに嫌気がさしてイタリアへ移住し(ヘンツェといえばインゲボルク・バッハマンとの交流が有名だが、20世紀イタリア文化界の代表人物たるピエル・パオロ・パゾリーニにも深く共鳴している)、マルクス主義に傾倒しながら、多くの重要な作品を生み出していく。そんな背景を持つヘンツェといえば、バッハマンが台本を執筆した《ホンブルクの公子》や、三島由紀夫の『午後の曳航』を原作とする《裏切られた海》のようなオペラ、あるいはチェ・ゲバラに捧げられた《メデューサの筏》などの声楽作品が有名かもしれないが、交響曲作家としての顔も重要だ。ヤノフスキ指揮ベルリン放送響によるこの全集は、新古典主義的な《第1番》(1947/63、91)にはじまり、ブルジョワジーへの対抗を試みた《第6番》(1969/84)を岐路として、反ファシズムの意を込めた《第9番》(1996/97)を経て、彼の作風の総決算的な《第10番》(1997~2000)に至る旅路であり、彼がいかに「前衛」なる存在で、しかし同時に、至って王道的に音楽を見つめた「保守」な作曲家であったかを思い知らせてくれる決定的録音である。(H.H.)

ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ・エディション Vol.1 交響曲全集(日本語解説付)
〔交響曲第1番~同第10番〕

マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送so,同cho(合唱指揮:ミヒャエル・グレーザー)
〈録音:2006年11月~13年6月〉
[ヴェルゴ(D)WER6961F]※5枚組

カラヤンのシベリウスとチャイコフスキーSACD。異なるリマスタリングで聴く

 ワーナー・クラシックスのカラヤンのSACDシリーズに、新たなラインナップが加わった。同じワーナー、同じカラヤンの録音ながら、一方は海外盤、一方は国内盤で、リマスタリングのアプローチも異なる。海外盤のシベリウスは、フランスのStudio Circéがリマスタリングを担当。ベルリン・フィルハーモニーでの録音ということもあって、音場の広がりが自然で、S/Nもきわめて良好だ。1970年代のアナログ録音であることを忘れ、デジタル録音と言われても気づかないほど。
 一方、チャイコフスキーは国内盤の「ルミエール・シリーズ」で登場。後期三大交響曲が分売されている。こちらのリマスタリングは藤田厚生氏が担当した。この3曲は1971年9月、カラヤンとベルリン・フィルがわずか6日間で一気に録音したものだ。会場はベルリンのイエス・キリスト教会。演奏そのものは以前から魅力を感じていた一方で、正直に言えば、音質にはかなり不満があった。響きの広がりが十分とは言い難く、それをエコーで無理に引き伸ばしたように感じられるところがあり、そこがどうにも聴きづらかったのである。ところが今回のリマスタリングでは、その印象がかなり変わった。響きが整理され、従来感じていた不自然さが後退し、3曲ともぐっと聴きやすくなっている。もちろん録音そのものの性格まで一変したわけではないが、もしかすると、この録音がもともと持っていたポテンシャルを限界近くまで引き出したリマスタリングなのかもしれない。(M.K.)

シベリウス:  交響詩《フィンランディア》,同《エン・サガ》,同《タピオラ》,レンミンカイネン組曲〈トゥオネラの白鳥〉,交響曲第4番,同第5番

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1976年9,10,12月〉
[ワーナー・クラシックス(S)2685494113]
※2枚組
※SACDハイブリッド

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チャイコフスキー:交響曲第4番

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1971年9月〉
[ワーナー・クラシックス(S)WPCS28524]SACDハイブリッド

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チャイコフスキー:交響曲第5番

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1971年9月〉
[ワーナー・クラシックス(S)WPCS28523]SACDハイブリッド

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チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1971年9月〉
[ワーナー・クラシックス(S)WPCS28522]SACDハイブリッド

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