
マーラー:交響曲第2番《復活》
サイモン・ラトル指揮バイエルン放送so,同cho,ルイーズ・オルダー(S)ベス・テイラー(Ms)
〈録音:2026年3月〉
[BR Klassik(D)NYCX10618]
10月2日 発売予定
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文=増田 良介(音楽評論)
同曲初録音から40年。ユニークなテンポ設計と、響きの深化
12歳のとき、ジョージ・ハーストの指揮する《復活》を聴いたのがきっかけで指揮者を目指したというラトルの、3度目となる《復活》の録音が発売された。2026年3月のライヴ録音で、首席指揮者を務めるバイエルン放送響との演奏だ。
ラトルの解釈は個性的だ。マーラーでテンポが頻繁に変わるのは当たり前だが、ラトルは、特に第1楽章において、かなり急角度でテンポを変える。この楽章はもともと《葬列》と題されていたが、ラトルの演奏で聴くと、棺桶を担いで重々しく歩く葬送行進曲のイメージは薄れ、感情の変化に応じて走ったり止まったりする、ひとりの人間の内面を反映した音楽に聴こえる。この曲の数ある録音の中でも、これほど起伏の大きな演奏はあまりない。だが、ラトルの演奏はけっして奇抜には聴こえないし、強い説得力がある。そもそもマーラーの音楽は巨大な管弦楽を駆使して私的な内容を表現する音楽だし、マーラー自身の指揮も相当鋭角的にテンポを伸縮するものだったらしいから、これはむしろ筋が通った解釈と言えるだろう。
ところで、ラトルは1986年にバーミンガム市響と、そして2010年にはベルリン・フィルと、《復活》を録音している。聴き比べてみると、実はこの個性的なテンポの設計は昔からほぼ変わっていないことがわかる。彼の中でこの曲の解釈は、40年前には固まっていたわけだ。とはいえ、3つの録音の印象はそれぞれに違う。若々しい響きのバーミンガム市響、シャープで力強いベルリン・フィルに対し、バイエルン放送響は、深みのある響きと精緻なヴィルトゥオジティの両立が特徴だ。そして、ラトルの解釈の実現という点においては、バイエルン盤がもっとも確信に満ちていて、表現が徹底している。
この録音では、ラトルが長年にわたって磨き上げてきた《復活》演奏のひとつの到達点が聴ける。なお、このコンビは2026年11月に来日し、東京で一度だけこの曲を演奏する。聴ける人は幸運だ。
協力:ナクソス・ジャパン
