対照的なドビュッシーとラフマニノフの前奏曲を
仲道郁代が繊細に、壮麗に紡ぐ

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ディスク情報

前奏曲~永遠への兆し
〔ドビュッシー:前奏曲集第2巻(全12曲),ラフマニノフ:前奏曲集Op.23,Op.32より〕

仲道郁代(p)
〈録音:2022年10月29日(L)〉
[RCA(D)SICC19100]

9月30日 発売予定

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文=道下 京子(音楽評論)

聴く者に、多くのイマジネーションを喚起してくれる

仲道郁代は、2018年からリサイタル・シリーズ「The Toad to 2027」に取り組んでいる。今回リリースされるCDは、2022年10月に開催された同シリーズのリサイタル「前奏曲~永遠の兆し」のライヴ録音。収められているのは、ドビュッシー《前奏曲集》第2集とラフマニノフの《前奏曲》10曲である。ドビュッシーについては、《前奏曲集》第1集も2020年の同シリーズでライヴ録音されており、今回のアルバムと合わせ、2集の前奏曲集の収録が完了した。

ドビュッシーとラフマニノフは、前奏曲集の創作に際してショパンの前奏曲集を一つの模範としたが、それぞれ独自の手法を用いて個性豊かな作品に仕上げている。ドビュッシーのこの曲集には、ほかの作曲家には見られない独自のサウンドやリズムが感じられる。仲道が奏でるドビュッシーは、聴く者に多くのイマジネーションを喚起してくれる。この《前奏曲集》第2集を聴いていると、様々な情景が鮮やかに浮かび上がってくる。

仲道の演奏には曖昧な表現はなく、音の意思をはっきりと表している。音の質感や色、強弱、強度、そしてモティーフの対比にいたるまで、作品を明晰に組み立てている。まさに、曲に託した作曲家の理想を、忠実に音で描き出したような演奏だ。響きにこまやかな遠近を施し、音の滲みや混濁、大気の揺らぎなどを多彩に醸し出し、とりわけ第12曲〈花火〉では音の残影を生み出すなど、仲道ならではの繊細な感性が遺憾なく発揮されている。

一方、ラフマニノフの《前奏曲》は、作品に込められた情感は深く、ダイナミクスも豊かだ。このCD において、仲道は楽器を巧みに鳴り響かせている。大地を思わせるような重厚なサウンドとともに、きめ細やかな音楽の呼吸を活かした壮麗な表現、なによりもロシアのメランコリーを丁寧に引き出している。

プログラムの最後に、仲道は「鐘」と呼ばれる《前奏曲》Op.3-2を置いた。彼女が吹き込むデリケートな息遣いによって紡ぎ出されるサウンドは、ロシア正教会の鐘の音を連想させる響きである。その一音一音に深い生命が宿っている。


協力:ソニー・ミュージック

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