クラシック
リイシュー&BOX注目盤(6月)

最新盤レビュー
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ここでは、最近発売されたクラシックのリイシュー&BOX盤のなかから注目盤を厳選して紹介します。

ミスマッチ?—否、最良のパートナーシップを築いたアーノンクール&コンセルトヘボウの20年、CD42枚分のドキュメント!

 今から約40年前、アーノンクール指揮コンセルトヘボウ管による一連のモーツァルト後期交響曲が発売された際、あまりの斬新な “作法” にしばらくショックから立ち直れなかった記憶がある。ヨッフムやハイティンクの指揮で親しんできたあのふくよかな音色のコンセルトヘボウ管の、これまた優美の極致であるはずのモーツァルトのイメージが根底から覆った。その後オペラでも「ダ・ポンテ三部作」など名歌手たちのバックで咆哮するオーケストラに従前の作品イメージは叩き壊され、器楽でもハイドン、シューベルトを経てブルックナー、ドヴォルザークへと瞬く間にその “毒” は広がっていった。当初は受け容れるのにかなり抵抗のあったアーノンクール&コンセルトヘボウのコンビは、いつの間にやらスタンダードに……どころか今振り返ると1980年代の録音群の中でも最高の部類に属するのではないかとさえ思える。というわけで当セットすべての音源のセンセーショナル度は今もって色あせないのだが、あえて一点だけ選ぶならJ.シュトラウスのオペレッタ《こうもり》を挙げよう。指揮者もオーケストラもミスマッチ感ありありのはずが、第2幕中盤あたりで完全に説き伏せられる。単独で長らく入手できなかっただけになお嬉しい。 (Y.F.)

アーノンクール・コンダクツ・コンセルトヘボウ~テルデック録音全集
〔モーツァルト:交響曲第35番《ハフナー》(1980年録音)からドヴォルザーク:ピアノ協奏曲(2001)まで〕

ニコラウス・アーノンクール指揮アムステルダム・コンセルトヘボウo,ピエール=ロラン・エマール,ルドルフ・ブッフビンダー(p)エディタ・グルベローヴァ(S)トーマス・ハンプソン(Br)他
〈録音:1980~2001年〉
[Warner Classics(D)2685417620(海外盤42枚組)]

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クレンペラーが遺した至宝の声楽作品3タイトルが最新リマスタリングで新たな息吹を得て再登場

 これまで何度もリマスタリングされてきた、クレンペラーのワーナー(旧EMI)録音のうち声楽作品の「鉄板中の鉄板」3点が、今回 “究極形” ともいえるオリジナル・アナログ・マスターからの最新リマスターで登場した。クレンペラー唯一のワーグナー全曲セッション録音の《さまよえるオランダ人》、キャリア初期から数多く演奏してきた《ミサ・ソレムニス》、そして今もって同曲の「重厚峻厳系」では他の追随を全く許さない《ドイツ・レクイエム》それぞれの演奏の孤高ぶりに関しては今さら多言は野暮ってもの。なので蛇足としてソリスト陣の多彩さに一言だけ——《レクイエム》のシュヴァルツコップ(ES)とフィッシャー=ディースカウ(DFD)はいわば「定番」だが、《オランダ人》のアダム(DFDとは対極の歌唱!)とシリヤ、《ソレムニス》のセーデルストレム(プロデューサーが異なるためESではない!)やヘフゲン、そして美声テノールのクメントと、実にヴァラエティに富んでいる。彼らの声(の伸び)が、リマスターによってどう変わっているかももう一つの聴きものである。 (Y.F.)

ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》全曲

オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニアo,BBCcho,テオ・アダム(Br)アニヤ・シリヤ(S)マルティ・タルヴェラ(Bs)エルンスト・コツープ,ゲルハルト・ウンガー(T)アンネリース・ブルマイスター(Ms)他
〈録音:1968年2月~3月〉
[ワーナー・クラシックス—タワーレコード(S)TDSA333~4(2枚組)]

ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス

オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニアo,同cho,セーデルストレム(S)マルガ・ヘフゲン(A)ヴァルデマル・クメント(T)マルティ・タルヴェラ(Bs)
〈録音:1965年9月~10月〉
[ワーナー・クラシックス—タワーレコード(S)TDSA336]

ブラームス:ドイツ・レクイエム

オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニアo,同cho,エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
〈録音:1961年1月~5月〉
[ワーナー・クラシックス—タワーレコード(S)TDSA335]

あなたは、リヒテルのこのベートーヴェンを直視できるだろうか?

 ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテル(1915~97)の生誕111年を記念したリマスター・シリーズの第1弾。「20世紀最大のピアニスト」といわれる彼をめぐっては多くの逸話があるし、録音数だって膨大だ。一方で完璧主義ゆえに彼自身が認めた録音は少ない。このベートーヴェンとブラームスはそんな公認音源の1つで、一世を風靡した(ライナーには伊熊よし子氏の書き下ろし序文に加え、吉田秀和、昆田亨、瀬川宏といった往時の素顔を知る人物の文章も収録されている)彼の狂気をはらんだピアニズムの魅力が詰まっている。特に今回のリマスター盤の音はナイフのようで、自分の心の弱い部分を見透かされているような気さえする。リヒテルについては「精神性」という曖昧な賛辞がよくいわれてきたけれど、それは巨躯の彼の内にある、痛いほどのイノセントさを直視できないひとが多いことも、理由の1つじゃなかろうか。当シリーズの未発売を含めた続編は以下の通り。どれもピアノ・ファン必聴の名テイクである。(H.H.)

ベートーヴェン&ブラームス
〔ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第3番,同第4番,第27番,6つの変奏曲 op.34,「トルコ行進曲」の主題による6つの変奏曲,「エロイカ」の主題による 15の変奏曲とフーガ,ブラームス:6つの小品 op.118~間奏曲 イ短調,バラード ト短調,間奏曲 変ホ短調〕

スヴャトスラフ・リヒテル(p)
〈録音:1970年7月,71年9月,75年4月〉
[ビクター(タワーレコード)(S)NCS88045(2枚組)]SACDハイブリッド

ウェーバー没後200年記念BOXで、「ドイツ・ロマン派」を疑う

 作曲家カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786~1826)が書いたオペラ史の傑作、《魔弾の射手》。ドイツの民話を題材とするこの作品の初演以来、人々はウェーバーを正統的なドイツ・ロマン派音楽の源流として位置づけてきた。彼の没後200年を記念して、交響曲からピアノ・ソナタまで様々の作品が集められたこのCD-BOXの副題だって「ドイツ・ロマン派の精神」だし、外装やスリーヴには同時代のロマン派画家、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画があしらわれている。一方で、このBOXにChristoph Vratz氏が寄せたライナーノート(独英仏)では、ウェーバーは実はコスモポリタンで、フランス語や英語を習得して、世界各地にインスピレーションの源を求めていたことが強調される。作曲家にまつわる神話の再定義を促すのである。そしてそれは、彼を端緒とするドイツ・ロマン派音楽の再定義をも意味する。いちど《魔弾》を忘れてDisc1から聴いていくと、これまでに知らなかった音楽の一側面を発見できそうだ(何しろ、《魔弾》全曲はDisc12まで出てこないのだ)。ライナーノートはこう締めくくられる。「私たちは[ウェーバーについて]何を本当に理解しているのか?」。(H.H.)

ウェーバー~ドイツ・ロマン派の精神
〔カール・マリア・フォン・ウェーバー:交響曲第1番,同交響曲第2番,クラリネット協奏曲第1番,同第2番,クラリネット五重奏曲,歌劇《魔弾の射手》,同《オベロン》(マーラー版)他〕

ザビーネ・マイヤー,ジェルヴァース・ドゥ・ペイエ(cl)ロジャー・ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレーヤーズ,ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン,ニコラウス・アーノンクール指揮ベルリンpo,他
〈録音:1914年6月~2009年6月〉
[Warner Classics(M/S/D)2685411239(18枚組,海外盤)]CD

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新リマスターで鮮やかに復活。カラヤンのモーツァルト

 カラヤンによるモーツァルト後期交響曲集は、本盤の録音の後も、1975~77年にDGで再録音されているが、そちらは本拠地フィルハーモニーでの収録。イエス・キリスト教会で録音された本盤は、重厚な響きを特徴とするDG盤に対し、どこか軽やかで伸びやかな印象がある。今回の復刻も、定評のあるStudio Circéがオリジナル・テープから192kHz/24bitで新規リマスターを実施。旧盤のシングルレイヤーSACD(アビー・ロード・スタジオによるリマスタリング)と聴き比べると、音像がひと回り大きくなり、各楽器の存在感がいっそう明瞭に感じられる。音色が明るく鮮やかな傾向は、他のStudio Circéによるリマスターにも共通する特徴だが、本盤ではその効果がとりわけ印象的だ。旧盤では、天下のベルリン・フィルにしては意外なほど弦の存在感が控えめだったのに対し、新盤では弦楽器がしっかりとした存在感をもって立ち現れ、オーケストラ全体の響きにも説得力が増しているのが嬉しい。(M.K.)

モーツァルト:交響曲第35番《ハフナー》,同第36番《リンツ》,同第38番《プラハ》~第41番《ジュピター》

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンpo
〈録音:1970年9月〉
[ワーナー・クラシックス(S)2685465517(2枚組,海外盤)]SACDハイブリッド

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