音楽評論家・舩木篤也氏の連載「プレルーディウム」。
プレルーディウム(Präludium)は、ドイツ語で「前奏曲」の意味。毎回あるディスク(音源)を巡って、ときに音楽の枠を超えて自由に思索する注目連載です。
第20回は、ブラームスの交響曲第2番の実演を聴いて得た、指揮者ミシェル・タバシュニクの強い感銘を端緒に、論が展開していきます。キーワードは「再現部」です。

ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》
〔+スラヴ舞曲集第1集(全曲)〕
ミシェル・タバシュニク指揮ブリュッセル・フィルハーモニック
〈録音:2011年7月〉
[Brussels Phil. Recordings(D)BPR002(海外盤)]CD ※現在取扱なし
[Brussels Phil. Recordings]配信
再現部の人
この連載が隔月になってから、これが初めての回である。前回から数えて実に2ヶ月ぶり。この間、それだけ豊富な音楽体験があったかというと、残念ながら、そうは言えない。あとで述べるのっぴきならぬ事情あってのことなのだが、ではまったく貧しかったかというと、それもまた違う。ひときわ強烈な経験があったからだ。ミシェル・タバシュニクを知ったのである。
優れた音楽家であることは噂に聞いていた。スイスはジュネーヴの出身。イーゴリ・マルケヴィッチやピエール・ブーレーズに信頼され、そのアシスタントを務めた。ヤニス・クセナキスからは「私の作品の解釈者として一番好きだ」と言われ、指揮した彼の作品は20曲ほどにもなるという。自身作曲家でもあり、近いところでは2016年に、ヴァルター・ベンヤミンの最期を題材にしたオペラ(Benjamin, dernière nuit、台本:レジス・ドゥブレ)がリヨン歌劇場で初演されている。
そんな彼が、こてこてのクラシック音楽を好んで指揮するというではないか。今ごろ知ったかと仰る向きも多いだろうか。私はさる5月8日に初めて聴いた。東京・赤坂のサントリーホールであった新日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で、演目は、ラヴェルの《ラ・ヴァルス》、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番(独奏:アンドレイ・イオニーツァ)、そしてブラームスの交響曲第2番というもの。どの演奏にも言うべきことはたくさんあるけれど、とりわけブラームスには、心底驚かされた。

新日フィル第670定期演奏会のポスター
■新日本フィルハーモニー交響楽団第670回定期演奏会
2026/5/8(金)19:00開演 サントリーホール
2026/5/9(土)14:00開演 すみだトリフォニーホール
[プログラム]
・ラヴェル:ラ・ヴァルス
・ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番(独奏:アンドレイ・イオニーツァ)
・ブラームス:交響曲第2番
■大阪フィルハーモニー交響楽団第598回定期演奏会
2026/5/22(金)19:00開演 フェスティバルホール
2026/5/23(土)15:00開演 フェスティバルホール
[プログラム]
・ブラームス:交響曲第3番
・ストラヴィンスキー:組曲《プルチネルラ》
・ドビュッシー:交響詩《海》
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