クラシック
リイシュー&BOX注目盤(10月)

最新盤レビュー
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ここでは、最近発売されたクラシックのリイシュー&BOX盤のなかから注目盤を厳選して紹介します。

Text=編集部

クリュイタンス&ウィーン・フィルによる、贅沢な「交響曲ポピュラー名曲集」初SACD化

 アンドレ・クリュイタンスと言えば、ラヴェルの管弦楽曲集やフォーレのレクイエムを真っ先に思い浮かべる方が多いと思うが、それらとは全く方向性の異なるベートーヴェンの交響曲(ベルリン・フィルとの全集が名高い)やワーグナー(《タンホイザー》や《ローエングリン》をバイロイトで指揮、当BOXにもパリでスタジオ録音されたその序曲や前奏曲が入っている)にも「超」の付く名演を遺したのもご存じの通り。そんな「マルチ」なクリュイタンスが、ステレオ初期に「交響曲へのお誘い」なるオリジナル・アルバムを成しており、オケが天下のウィーン・フィルであるのも相まって、凡百の「寄せ集め名曲集」とは次元の異なる贅沢な逸品になっている。今回のセットでは、前述のワーグナーの他、珍しいスメタナやR.シュトラスも併録、こちらも久方ぶりのリイシューとなった。そういえばクリュイタンスにはウィーン・フィルとの《ヘンゼルとグレーテル》なんていう極上の名盤もあったなぁ、などと思い出しながら、懐かしい一枚を存分に楽しんだ。 (Y.F.)

「交響曲へのお誘い」~クリュイタンス名演集(+ワーグナー序曲・前奏曲集,スメタナ:交響詩《わが祖国》より,R.シュトラウス:交響詩《ドン・フアン》他)
〔ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》第1楽章,モーツァルト:交響曲第40番第1楽章,チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》第3楽章,ドヴォルザーク:交響曲第9番《新世界より》第2楽章,メンデルスゾーン:交響曲第4番《イタリア》第4楽章 他〕

アンドレ・クリュイタンス指揮ウィーンpo,パリ・オペラ座o(ワーグナー)
〈録音:1958年1月・12月,1959年6月~7月(ワーグナー)〉
[ワーナー―タワーレコード(S)TDSA339~40]※2枚組SACDハイブリッド

“鬼才” マゼール面目躍如の「ワーナー録音全集」18枚組BOX

 ロリン・マゼール(1930~2014)は、旧フィリップス、グラモフォン、デッカ、旧CBSソニー、RCA、テラーク、そして今回の旧EMI、エラート、ノンサッチ……と実に多様なレーベルに名録音を遺し、ここ数年、様々な形でコンプリート(あるいはオーケストラ別の)BOXが発売されてきた。どれも一癖も二癖もある音楽造りとレパートリーのユニークさから、単なる「まとめBOX」ではない面白さがあって、毎回毎回「マゼールにこんな録音もあったんだぁ」と新発見、再発見しきりである。今回の18枚組ワーナー録音コンプリートBOXは、ひと口で言うなら、多彩な共演オーケストラと豪華ソリスト陣、といったところ。ベルリン・フィルとのブルックナーに始まって、フィルハーモニア管とのR.シュトラウス(他レーベルのクリーヴランド管やバイエルン放送響との同曲異演聴き比べも愉しい)、またパリ管やフランス国立管などフランスのオケから独特の音を引き出しているのも興味深い。そして、ロシアの二大横綱リヒテル、ギレリスとの協奏曲(ブラームス、バルトーク、プロコフィエフ/チャイコフスキー)はいずれ劣らぬ飛び切りの大熱演。
 最後に一言(というか本来は最初に特筆大書すべきことだが)マゼールは1982~84年オペラの最高峰ウィーン国立歌劇場の総監督を務めた「オペラの人」でもあり、これまた様々なレーベルをまたいでオペラ全曲盤の名録音を多数のこしている。当BOXの聴きものはビヴァリー・シルズをタイトルロールに迎えたマスネ《タイス》全曲。マゼールのヴァイオリン・ソロというオマケ付きだが、豪華共演者という点では、ニコライ・ゲッダの美声もお聴き逃しなきよう! (Y.F.)

マゼール~ワーナー(旧EMI・エラート・ノンサッチ)録音全集
〔ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲,ムソルグスキー=ラヴェル:展覧会の絵,R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき,ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら(1962年)からジョン・アダムズ:魂の転生(2002年録音)まで全26作品収録〕

ロリン・マゼール指揮ベルリンpo,フィルハーモニアo,ニューヨークpo,パリo,フランス国立o,ミラノ・スカラ座o他,スヴャトスラフ・リヒテル,エミール・ギレリス,ジャン=フィリップ・コラール(p)フランク・ペーター・ツィンマーマン(vn)プラシド・ドミンゴ(T)ビヴァリー・シルズ(S)他
〈録音:1962年~2002年〉
[Warner Classics(S/D)2685492780]※海外盤18枚組

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バイロイトの黄金時代「三大K」の “第三の男” 唯一の《指環》全曲

 第二次大戦後バイロイト祝祭が再開した1951年からの10年間を、勝手に「バイロイトの黄金時代」と呼んでいるのだが(今年はその再開の年から75周年ということになる)、その間に登場した指揮者の中で、いわばトップ3をこれまた勝手に「三大K」と命名している。クナッパーツブッシュとカイルベルト、そしてクレメンス・クラウスである(カラヤンとケンペも加えて「五大K」でもいいのだが……)。クラウスは周知のように1953年に急遽ピンチヒッター的に《ニーベルングの指環》と《パルジファル》を指揮、ところが翌年5月に急逝してしまったため、この年が唯一のバイロイト出演となってしまった。その53年の《指環》が、ドイツのレーベルnote oneから最新マスタリングで復刻され(現在入手困難となっているOrfeo盤から約15年ぶり)今年の「バイロイト&指環150周年」を祝ってくれる形に。53年はカイルベルトも《指環》を振っており(音源[Pan Classics]もある)そちらの精緻な演奏とは異なり、クラウスは音楽の流れを優先した独特の音楽造りとなっており、聴き比べも興味が尽きない。もちろん歌手陣も「黄金時代のクインテット」(と勝手に命名)ヴァルナイ、ヴィントガッセン、ホッター、ナトリンガー、グラインドルがすでにして完成の域で、聴き応え120パーセント。ここではもう一人エーリヒ・ヴィッテの名も挙げておこう。《ラインの黄金》だけにしか出てこないのだが、彼のローゲの至芸は当セットの白眉とも言える。
 さて「バイロイト150周年」の今年は、通年で “ワーグナー祭り” が続いているが、この《指環》セットに先立って、カラヤン指揮の《トリスタンとイゾルデ》1952年ライヴ盤も同じnote oneから新マスタリングで発売となった(やはりOrfeo盤以来の久々のリリース)。のちのカラヤン&ベルリン・フィルのスタジオ録音とは全くヴェクトルの異なる、一気呵成とも言える演奏で、ヴィナイ&メードルのタイトルロールともども必聴の一組だ。 (Y.F.)

ワーグナー:楽劇《ニーベルングの指環》全曲
〔ラインの黄金,ワルキューレ,ジークフリート,神々の黄昏〕

クレメンス・クラウス指揮バイロイト祝祭o・cho,ヴォルフガング・ヴィントガッセン,ラモン・ヴィナイ,エーリヒ・ヴィッテ,パウル・クーエン(T)アストリッド・ヴァルナイ(S)ハンス・ホッター,グスタフ・ナイトリンガー,ヘルマン・ウーデ(Br)ヨーゼフ・グラインドル(Bs)他
〈録音:1953年8月(L)〉
[note one(M)NOH0002]※海外盤12枚組

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ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮バイロイト祝祭o・cho,ラモン・ヴィナイ(T)マルタ・メードル(S)ルートヴィヒ・ウェーバー(Bs)ハンス・ホッター(Br)イーラ・マラニウク(Ms)他
〈録音:1952年7月(L)〉
[note one(M)NOH0001]※海外盤3枚組

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夭折の天才指揮者、グイード・カンテッリの芸術が瑞々しく甦る!

 1956年秋、グイード・カンテッリ(1920~56)は36歳の若さでミラノ・スカラ座の次期音楽監督に任命される。もとは北イタリアの音楽一家に生まれだ。ムッソリーニ政権下でパルチザンに参加したあと、47年に指揮者としてのキャリアを再開し、翌48年にはイタリアへ一時帰国していたアルトゥーロ・トスカニーニにその才能を見出される。NBC響やフィルハーモニア管、さらにニューヨーク・フィルでも振って世界的名声を得る。彼は録音活動でもスターだった。このリマスター企画盤に収められたのはそのディスコグラフィの一端にすぎないが、厳格ながらパッションほとばしるカンテッリの美質を知るに申し分ない。「小トスカニーニ」ともいわれるが、大トスカニーニ(?)ゆかりのNBC響と録ったフランクの《交響曲》ひとつとっても、私としては彼自身の個性を強調したいところだ。いずれも、これまでテスタメントなどで出ていた録音だが、音場感からして瑞々しさが半端ではない。スカラ座のポストを目前に控えたこの天才指揮者は56年11月24日、パリで飛行機事故により落命、36年余の生涯を終えた。しかし70年の時をかけるこれらの遺産は、今なお光り輝いている。(H.H.)

カンテッリの遺産 ステレオ録音集 1954-56(2026年マスタリング)
〔フランク:交響曲 ニ短調,ブラームス:交響曲第3番,シューベルト:交響曲第8番《未完成》D759,モーツァルト:交響曲第29番K.201,音楽の冗談 K.522,ベートーヴェン:交響曲 第7番,同第5番《運命》~第2楽章から第4楽章〕

グイード・カンテッリ指揮NBC交響楽団,フィルハーモニア管弦楽団
〈録音:1954年4月~56年6月〉
[ワーナー・クラシックス(タワーレコード)(S)TDSA342]※3枚組SACDハイブリッド

温かくきれいで、鬼気迫る。ネーメ×RSNO×シャンドスのショスタコ

 2025年の夏に「ショスタコーヴィチ交響曲全集の系譜とおすすめ名盤」という記事を企画したとき、同一レーベルで全集を完成させていないことを理由に、ネーメ・ヤルヴィ(1937~)を取り上げなかったのをすこし後悔している。疾走感あふれるショスタコだ。ホールの空気感を伝えるシャンドスの録音も相まって、その音楽世界は温かく(これは師ムラヴィンスキーとの大きな違いだ)きれいで、同時に鬼気迫る絶望に満ちている。ネーメがもともと打楽器奏者だったこともあろうが、代表的録音と思われる第7番を筆頭として、これらシャンドス盤での管打楽器の咆哮は一聴して忘れがたい。今回リリースされたこれは、2026年のドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906~75)生誕120年と、27年のネーメ・ヤルヴィ生誕90年を記念するBOX企画。廃盤の多いシリーズの再発という意義を超えて、注目したいのは交響曲以外の録音だ。リディア・モルドコヴィチがソリストを務めたヴァイオリン協奏曲の2曲は初出時、たいへんな絶賛を浴びたもの。《バレエ組曲》や《タヒチ・トロット》も必聴だ。(H.H.)

ネーメ・ヤルヴィ・コンダクツ・ショスタコーヴィチ
〔ショスタコーヴィチ:交響曲第1番,同第4番~第10番,バレエ組曲第1番~第4番,祝典序曲,タヒチ・トロット,ヴァイオリン協奏曲第1番,同第2番〕

ネーメ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(RSNO),リディア・モルドコヴィチ(vn)
〈録音:1984年8月~89年2月〉
[Chandos(D)CHAN20439]※8枚組海外盤

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カメレオン型? ブラジルが生んだ名ピアニスト、オルティスの初期録音集!

 ショパン・コンクールと双璧をなすピアノコンクール、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール。1969年に行なわれた第3回で女性史上初となる優勝を果たしたのが、ブラジル出身のクリスティーナ・オルティス(1950~)だった。早熟な才能を示した彼女は、初め母国ブラジルで学び、パリでマグダ・タリアフェロ、フィラデルフィアでルドルフ・ゼルキンに師事する。現在まで録音活動も行なっているが、とりわけコンクール優勝後10年ほどのテイクを集めたこのCD-BOXは注目に値するだろう。豪華な共演陣もさることながら(当時25歳の小泉和裕が指揮した《パガニーニの主題による狂詩曲》もある!)、カメレオン的にも聴こえるオルティスのピアニズムは、BOXにあるソロを聴いてみると、一歩引いて構築美の全貌を描こうとするものだと理解できる。超絶技巧型でもなく、憑依型でもなく、そこに確固たるオルティスの意志が感じられる点で、きわめて強いヒューマニズムを思わせるのだ。それはヴィラ=ロボス、オスカル・ロレンソ・フェルナンデスといったブラジルの作曲家作品で、よりいっそう顕著だ。(H.H.)

クリスティーナ・オルティス~ワーナー録音全集
〔ショパン:バラード第1番~第4番,ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ 第3番,カーニヴァルの道化ファンタジー,ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲,ガーシュウィン:セカンド・ラプソディ,ランバート:カンタータ《リオ・グランデ》,他多数〕

クリスティーナ・オルティス(p)メディチ弦楽四重奏団,ウラディーミル・アシュケナージ,小泉和裕指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団,アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団,他多数
〈録音:1973年9月~80年7月〉
[Warner Classics(S)2685494951]※11枚組海外盤

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伝説の高音質レーベル「エヴェレスト」の名盤がSACDで蘇る

 タワーレコード/オリジナル企画盤の新企画は、日本コロムビアとのコラボレーションによる「エヴェレスト原盤SACDシリーズ」。第1弾となる3タイトルが限定盤として9月にリリースされた。エヴェレストといえば、筆者のような還暦を過ぎた年代にとっては、1970年代に日本コロムビアから出ていた廉価盤シリーズで大変お世話になったレーベルであり、今回発売された3タイトルのなかでは、ボレットのショパンを1000円盤で購入して何度も聴きこんだ記憶がある(ボレットが後に英デッカと契約して日本でブレイクする以前である)。
 エヴェレストは1958年に発明家のハリー・ベロックによって創設され、35mmのフィルムを用いた録音方法によってオーディオ・ファンの注目を集めた伝説的なレーベルとして知られる。実働は4年にも満たなかったが、他レーベルではお目にかかれないような演奏家とレパートリーによる貴重な名盤が少なからず残されているので、このたびオリジナル・アナログ・マスターテープからの新規リマスタリングが施され、ハイブリッド盤による高音質企画で発売されるのはうれしい限りである。
 録音が鮮明なゆえに、グーセンスのストラヴィンスキー(10年ほど前にキングがSACD化していた)など、演奏の瑕まで聴き取れてしまうのはご愛敬だが、当時のロンドン響がこの難曲を懸命に演奏している様子が眼前に浮かぶようで、演奏史を語る上でも貴重なものといえるだろう。スピヴァコフスキーのチャイコフスキーは、1961年に当時のビクターからLPで発売されて以来の国内盤となる。11月にはボールトやサージェントという英国の指揮者による第2弾が予定されているとのこと。楽しみに待ちたい。(T.N)

ストラヴィンスキー:①バレエ《春の祭典》,②同《ペトルーシュカ》

ユージン・グーセンス指揮ロンドンso
〈録音:1959年①10月,②5月〉
[エヴェレスト(タワーレコード)(S)TWSA1202]※SACDハイブリッド

①チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲,②同:なつかしい土地の思い出~メロディ,③シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

トシー・スピヴァコフスキー(vn)①②ヴァルター・ゲール指揮 ③タウノ・ハンニカイネン指揮 ロンドンso
〈録音:1959年11月〉
[エヴェレスト(タワーレコード)(S)TWSA1203]※SACDハイブリッド

「ホルヘ・ボレット名演集」
〔①リスト:ピアノ協奏曲第1番,②同:リスト:ハンガリー幻想曲,③同/ピアノ作品集(ピアノ・ソナタ,詩的で宗教的な調べ~葬送,メフィスト・ワルツ第1番),④ショパン/ピアノ作品集(英雄ポロネーズ,小犬のワルツ,幻想即興曲,革命のエチュード,軍隊ポロネーズ,別れの曲,他)〕

ホルヘ・ボレット(p)①②ロバート・アーヴィング指揮 シンフォニー・オブ・ジ・エア
〈録音:①~③不明 ④1960年〉
[エヴェレスト(タワーレコード)(S)TWSA1204~5]※SACDハイブリッド

生誕100周年に甦る、知られざる若きリヒターの録音遺産

2026年はカール・リヒターの生誕100周年。本集成は、テルデックとデュクレテ・トムソンに残された1953年から63年の録音を収める18枚組だ。1951年にミュンヘンへ移り、バッハ合唱団と管弦楽団を結成、国際的な名声を確立していく時期の記録である。リヒターといえば、まずアルヒーフに残した《マタイ受難曲》など、バッハの宗教曲における峻厳な解釈が思い浮かぶ。しかし、本集成からはそれだけにとどまらない、多彩な音楽家としての姿が浮かび上がる。チェンバロ、オルガン奏者としての活躍に加え、ヘンデルのオルガン協奏曲全集、C.P.E.バッハやJ.C.バッハ、さらにはモーツァルトの交響曲や協奏曲まで、レパートリーは意外なほど広範囲に及ぶ。CD3枚に渡るフルートの名手オーレル・ニコレとの共演も興味深い。モーツァルトの《レクイエム》などは以前から名盤として知られてきたが、一方でバッハの《パルティータ》全曲や初期のカンタータ録音など、今回正規初CD化となる貴重な音源も数多く日の目を見た。後年の名盤に先立つ1955年の《クリスマス・オラトリオ》も含め、リヒターの芸術の原点とその広がりを再発見できる、生誕100周年ならではの意義深い復刻である。(M.K.)

カール・リヒター~テルデック&デュクレテ・トムソン録音全集
〔①J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲ニ短調,2台~4台のチェンバロのための協奏曲,ブランデンブルク協奏曲(全6曲),②同:ゴルトベルク変奏曲,パルティータ(全6曲),③同:オルガン作品集(トッカータとフーガ,トリオ・ソナタ,他),フルートとチェンバロのためのソナタ第1番,第2番,④同:カンタータ第4番,第12番,第67番,第79番,第108番,第127番,第137番,第140番,第160番,クリスマス・オラトリオ,⑤同:フーガの技法,⑥ヘンデル:オルガン協奏曲集op.4,op.7(全12曲),⑦C.P.E.バッハ:シンフォニア,フルート・ソナタ,グルック:精霊の踊り,ハイドン:フルート協奏曲,J.C.バッハ:シンフォニア,⑧モーツァルト:フルート協奏曲第1番,第2番,フルートとハープのための協奏曲,アンダンテK.315,交響曲第29番,レクイエム〕

カール・リヒター(指揮,cemb,org)①エドゥアルト・ミュラー,ゲルハルト・エッシュバッハー,ハインリヒ・グルトナー(以上cemb),アンスバッハ・バッハ週間o③⑦⑧オーレル・ニコレ(fl)④⑧マリア・シュターダー,クロエ・オーウェン(以上S),ヘルタ・テッパー(A),ピーター・ピアーズ(T),キース・エンゲン(Bs),他 ⑤クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロアルテ室内o ⑦⑧ミュンヘン・バッハo,④⑧同cho,他
〈録音:1953~1963年〉
[Warner Classics(M,S)0021425876]※18枚組海外盤

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オイストラフとリヒテル、希少な共演録音が初SACD化

タワーレコード企画により、ビクターに残されたリヒテルの音源が次々とSACDで復刻されているが、今回のオイストラフとの共演盤2点は待望の復刻だ。ビクターが保管してきたアナログ・マスターテープを用いた新規リマスタリング&初SACD化という点も素晴らしい。両社ともソ連を代表する巨匠だが、意外にも共演録音は決して多くない。さらに今回収録された作品についても、二人がそれぞれ別の奏者と残した録音は思いのほか少ない。とりわけリヒテルに至っては、オイストラフ以外ではオレグ・カガンとショスタコーヴィチのソナタを録音している程度だ。なかでもオイストラフに献呈されたショスタコーヴィチのソナタは、両者による世界初演のライヴという点でも特別な価値を持つ。単なる名演の再発売にとどまらず、演奏史・録音史の資料としても価値の高い、あらゆる意味で貴重な復刻だ。(M.K.)

「オイストラフ=リヒテル/ライヴ・レコーディングズ 1968–69」
〔①フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調,②ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番,③ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ〕

ダヴィド・オイストラフ(vn)スヴャトスラフ・リヒテル(p)
〈録音:①②1968年12月③1969年5月(L)〉
[ビクター(タワーレコード)(S)NCS88057]※SACDハイブリッド

「オイストラフ=リヒテル/ラスト・レコーディングズ 1972」
〔ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番,プロコフィエフ:同第1番,バルトーク:同第1番〕

ダヴィド・オイストラフ(vn)スヴャトスラフ・リヒテル(p)
〈録音:1972年3月(L)〉
[ビクター(タワーレコード)(S)NCS88058]※SACDハイブリッド

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