最新盤レビュー

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート2026
ネゼ=セガンが初登場

ディスク情報

ニューイヤー・コンサート2026〔ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇《インディゴと40人の盗賊》序曲からアンコール曲ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲まで18曲+特典映像〕

ヤニク・ネゼ=セガン指揮ウィーンpo
〈収録:20226年1月1日(L)〉
[ソニー・クラシカル(D)SIXC117(BD)19802996689(海外盤DVD)]
※2026年2月18日発売予定

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文=広瀬 大介 (音楽学)

2026年元旦、来るべき新しい時代への強い意志がはっきりと示された

日本時間では1月1日の夜7時。多くの日本人にとって、おせち料理をつまみながらほろ酔い気分でテレビを眺め、正月気分を味わうための恒例行事が、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートだろう。そう、筆者はなにげなく「眺める」と書いてしまったけど、それくらいの緊張感で接するのがちょうどいいイヴェントではある。

とはいえ、今年は「眺める」から「見つめる」、そして耳を「そばだてる」まで進んでしまい、おせち料理をつまむ手も止まりがちとなった。これはひとえに、指揮者ヤニク・ネゼ=セガンの存在感によるところが大きい。小柄な体軀から繰り出されるパワー溢れる指揮姿は健在で、それに加えて表情は登場した瞬間からとびっきりの笑顔。新年の特別な雰囲気をめいっぱい愉しんでいる様子は、画面越しでも充分に伝わってくる。

近年のニューイヤー・コンサートは初演奏曲の発掘にも余念がないが、今年もその例に漏れず、世界の平和を希求するメッセージも欠かさない。史上初の女性オーケストラを率いたポルトガルのジョゼフィーネ・ヴァインリヒによるポルカ・マズルカ《セイレーンの歌》、そしてアメリカ最初期の黒人女性作曲家フローレンス・プライスによる《レインボー・ワルツ》は、これらの曲を演奏すること自体が多様性を積極的に推進しようとする新しい時代への強い呼びかけとなるだろう。ネゼ=セガン自身も、アンコール前の恒例のスピーチで「音楽が世界をひとつに結ぶ」と強く訴えた。

恒例の《ラデツキー行進曲》では、指揮者はついに客席へと駆け下りて、歓びを爆発させた。ともに音楽を創り、次の世代へとその音楽を受け渡してゆこうとするネゼ=セガンのあたたかな真心が、総立ちの客席はもとより、全世界の視聴者へと伝わった瞬間であり、筆者もこれほど映像を「見つめ」、耳を「そばだて」てこの曲を聴いたことはない。演奏家と聴き手の垣根を取り払った貴重なドキュメントとして、この映像は長く手もとにとどめておく価値がある。



協力:ソニーミュージック

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