
N響大河ドラマコンサート2024/2025
〔黄金の日日(1978/池辺晋一郎),どうする家康(2023/稲本響),春の坂道(1971/三善晃),国盗り物語(1973/林光),花神(1977/林光),山河燃ゆ(1984/林光),おんな太閤記(1981/坂田晃一),いのち(1986/坂田晃一),光る君へ(2024/冬野ユミ),青天を衝け(2021/佐藤直紀),軍師官兵衛(2014/菅野祐悟),麒麟がくる(2020/ジョン・グラム),翔ぶが如く(1990/一柳慧),篤姫(2008/吉俣良),元禄太平記(1975/湯浅譲二),草燃える(1979/湯浅譲二),徳川慶喜(1998/湯浅譲二),べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~(2025/ジョン・グラム)全18曲〕
キンボー・イシイ、広上淳一指揮NHK交響楽団
〈録音:2024年3月,2025年3月(L)〉
[ソニー(D)SICL30071]
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テレビで視聴した記憶までもが鮮やかに甦りそう
1963年から続くNHKの看板ドラマ番組シリーズで、ほとんどのテーマ音楽を演奏してきた“本家本元”のN響が、2024年と2025年に行なった「大河ドラマ コンサート」のライヴ盤。それぞれの公演プログラム第1部(※第2部は“河”に因んだクラシック名曲選)を、三浦文彰のソロ・ヴァイオリンを起用した第55作「真田丸」(服部隆之、2016年)以外すべてそのまま収録したもので、当日の迫力ある演奏を臨場感たっぷりに追体験できるはず。
まずは、その後も第20作「峠の群像」(1982年)、第25作「独眼竜政宗」(1987年)、第34作「八代将軍 吉宗」(1995年)、第38作「元禄繚乱」(1999年)と、冨田勲と並んで大河史上最多の5作品を手掛けることになる、若き日の池辺晋一郎が書いた[01]第16作「黄金の日日」からスタート。ピアニストでもある稲本響の[02]第62作「どうする家康」に続く、無調のチェロ独奏で始まる三善晃の[03]第9作「春の坂道」の前衛さに改めて驚かされる。[04]第11作「国盗り物語」~[05]第15作「花神」~[06]第22作「山河燃ゆ」と林光による多彩なリズムを堪能した後は、橋田壽賀子・脚本との名コンビで知られ、この日トーク・ゲストとして登壇した坂田晃一の[07]第19作「おんな太閤記」と[08]第24作「いのち」。そしてまだ記憶に新しい冬野ユミの[09]第63作「光る君へ」で拍手。ここまでの指揮はタングルウッド音楽祭で小澤征爾に師事し、近年は日本国内でも活躍中の俊英キンボー・イシイが担当している。
2025年編は吉沢亮が演じた渋沢栄一の晴れやかなイメージにも繋がる、佐藤直紀の[10]第60作「青天を衝け」から。「大河」の大ファンを自認するマエストロ・広上淳一が実際の放送でも指揮を務めた[11]第53作「軍師官兵衛」(菅野祐悟)と[12]第59作「麒麟がくる」(ジョン・グラム)が聴けるのも本盤の醍醐味。続く[13]第28作「翔ぶが如く」(一柳慧)と[14]第47作「篤姫」(吉俣良)はどちらも動乱の幕末が舞台だが、当日の特別ゲストだった高橋英樹の出演作という共通点も。特に篤姫と同じ鹿児島の出身である吉俣良の作品は、切なさを感じさせつつも情熱的で凜とした“天璋院”のイメージに溢れていて、ファンの間でも未だに根強い人気を誇っているとか。また、長らく日本の作曲界をリードし2024年に亡くなった湯浅譲二の[15]第13作「元禄太平記」、[16]第17作「草燃える」、[17]第37作「徳川慶喜」の3作品も、複雑なリズムと斬新な響きを用いつつどこか爽快で聴き逃せない。ラストを飾るのはグローバルな雰囲気を湛えた、現在放送中の[18]最新第64作「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(ジョン・グラム)。どれも2分半~3分強の短い時間に登場人物たちの激動の生涯や時代のエネルギーが凝縮されていて、テレビで視聴していたあの年の懐かしい記憶までもが鮮やかに甦りそうだ。
東端 哲也 (ライター)
協力:ソニーミュージック
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