いま聴くべき演奏家2026

女性指揮者・イギリス・古楽——3つのキーワードで読み解く「いま聴くべき旬の指揮者」

いま聴くべき演奏家2026特別企画
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新譜月評執筆者が選ぶ「いま聴くべき “旬” の演奏家」シリーズのフィナーレは「指揮者篇」。20世紀後半に道が開かれ、その個性が輝く時代となった女性指揮者たち。若手・中堅指揮者たちが躍動する”ハブ”としてのイギリス、そして伝統を現代にアップデートする古楽シーンの挑戦。世界各地で活躍する今絶対聴き逃がせない指揮者たちの多彩な音楽世界を、最新の活動と録音から紹介します

文・ディスク選=相場ひろ(フランス文学)

女性指揮者の台頭と多様化

20世紀後半、いく人かのパイオニアによって女性が職業指揮者となる道が開かれ、今世紀に入ると数多の女性指揮者が音楽シーンを盛り上げるようになってきた。いや、現代ではもはや「女性」指揮者と断りを入れることすら問題視されつつあると言っても過言ではない。音楽家のひとつの形態に性別を併記しなければならないなど本来あってはならないことなのだ。しかしながら、いまだに女性が指揮者を務めることについて偏見と先入観を持つ向きは多い。現在世界各地で活躍する彼女たちが、性別を超えて自らの個性に頼ることで、いかに多様な音楽を生み出しているか、それが広く知られれば、「女性指揮者」という呼称も消えていくことだろう。

現代につながる女性指揮者のパイオニアとして広く知られているのは、米国出身で、現在欧州で広く活躍するマリン・オールソップ(1956年生)だろう。しかし、初めて米国のメジャー・オーケストラで音楽監督を務めたのは、オールソップではなくジョアン・ファレッタ(1954年生)だった。米国各地の地方楽団の指揮者を歴任した後、1999年に名門バッファロー・フィルの音楽監督に就任し、現在まで四半世紀以上その地位にあるという事実は、それだけで彼女の実力を物語っている。オールソップがどちらかというとヨーロッパ指向の、渋みのある暖かい音色を好むのに対して、ファレッタはむしろアメリカ的と言うべきか、カラフルで軽妙ですらあるサウンドをオーケストラから引き出して、リスナーを楽しませてくれる。レパートリーも独墺系の重厚なものよりは、近代的な色彩美あふれる作品を好んで録音している。グリエールの交響曲第3番《イリヤ・ムロメッツ》やフロラン・シュミットの管弦楽曲集、レスピーギの《ローマ3部作》あたりが現在までの代表盤と言えるだろう。

1 グリエール:交響曲第3番《イリヤ・ムーロメツ》

ジョアン・ファレッタ指揮バッファローpo
〈録音:2013年5月〉
[Naxos(D) 8573161(海外盤)]

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