
2027年に没後200年を迎える作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1826)。レコード芸術ONLINEではそのカウントダウン企画第1弾として、2025年夏に「2つのベートーヴェン・イヤー」を実施、1970年代の名盤をふりかえりました。
【特別企画・巻頭言】2つのベートーヴェン・イヤーとその時代(無料コンテンツです)
カウントダウン企画の第2弾「モノラル録音期のベートーヴェン」では、1950年代以前の名盤に注目します。
今回の記事は、モノラル期に録音されたベートーヴェンの交響曲全集について取り上げます。一口に「全集録音」といっても、その成り立ちは千差万別。複数のオーケストラに跨り完成まで何年もかけた労作、短期間で一気呵成に録音したパターン。また全集を目指しながらも途中で頓挫してしまったプロジェクトも散見されます。山崎浩太郎さんに全集録音の黎明期にあたるこの時代のレコード会社の思惑や、社会情勢を絡めて論じていただきます。
Text=山崎浩太郎(演奏史譚)
それはワインガルトナーからはじまった
ベートーヴェンの交響曲全集の録音を史上初めて完成した指揮者は、①フェリックス・ワインガルトナー(1863~1942)である。ワインガルトナーは1908年から27年まで、ウィーン・フィルの定期演奏会のほぼすべてを指揮しており、ヨーロッパにおけるレコード産業の中心地であるロンドンにおいても、ベートーヴェン演奏の大権威として評価されていたから、史上初のベートーヴェンの交響曲全集の完成者の栄誉に浴するのに、最もふさわしい存在だった。
とはいえ、全曲録音の計画が初めから存在したのではなく、アコースティック時代から英コロンビア(後のEMI)に、イギリスの2つのオーケストラとウィーン・フィルと少しずつ録音していったら、結果的に9曲そろった、というほうが正確だろう。電気録音だけでも1927年から38年まで、12年を要している。
発売当初から日本でも人気が高かったのは、なんといってもウィーン・フィルを指揮して1936年と翌年に録音した、第1、3、7~9番の5曲だった(このコンビによる全集録音が計画されていたのかもしれない)。しかし正直にいうと、録音を聴くかぎりでは、その名声の高さをあまり実感できない。よくいえば端正で中庸を得た演奏だが、ライヴではないためか、個性と面白みには欠けている。

①ベートーヴェン/交響曲全集
〔①第1番~⑨第9番《合唱》,他〕
フェリックス・ワインガルトナー指揮①③⑦⑧⑨ウィーンpo②ロンドンso④⑤ロンドンpo⑥ロイヤルpo,ウィーン国立歌劇場cho,ルイーゼ・ヘレツグルーバー(S)ロゼッテ・アンダイ(A)ゲオルク・マイクル(T)リヒャルト・マイール(Br)
〈録音:1927年1月~38年3月〉
[ATS(M)ATS9062(5枚組)]
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