ここでは、最近発売されたBOXセットのなかから注目盤を厳選して紹介します。
アンドラーシュ・シフ『コンプリート・デッカ・レコーディングス』
78枚組(!)という威容を誇る、アンドラーシュ・シフの『コンプリート・デッカ・レコーディングス』が発売。80~96年の録音で、ソロ、協奏曲、弦楽器や管楽器および歌手とのデュオ、ピアノ五重奏をはじめとする室内楽までが網羅され、うち4枚ではモーツァルトが使用したというフォルテピアノを弾くなど、シフがデッカに残した録音のまさに集大成となっている。
デッカ録音全集
アンドラーシュ・シフ(p,fp,指揮)他
〈録音:1979年~1994年〉
[Decca(S,D)4854493(78枚組:海外盤)]
スメタナ/オペラ全集
スメタナの生誕200年を記念して『オペラ全集』が全17枚組で発売された。社会主義時代の1960~1980年代に、スプラフォンがその威信を懸けてプラハ国立歌劇場のメンバーを中心に録音された全9作品。スメタナの創作活動において重要な位置を占めながら、なかなか触れるチャンスの少ないオペラ作品の全貌を一挙に知ることができる、アニバーサリー・イヤーならではの好企画。豪華ライナーノーツに加え、音源がすべて2024年最新リマスタリングというのもポイントが高い。
スメタナ/オペラ全集
〔《ボヘミアのブランデンブルク人》《売られた花嫁》《ダリボル》《リブシェ》《2人のやもめ》《口づけ》《秘密》《ヴィオラ》(未完)《悪魔の壁》〕
ズデニェク・コシュラー,フランティシェク・イーレク,ズデニェク・ハラバラ指揮プラハ国立歌劇場o,チェコpo,ブルノ・ヤナーチェク・オペラo,他
〈録音:1960年~1983年(一部L)〉
[Supraphon(S)SU4335(17枚組:海外盤)]
プレートルの『SWRレコーディングス』&『プレイズ・フランシス・プーランク』
指揮者ジョルジュ・プレートルの生誕100年に合わせて、2つのBOXセットが発売。『SWRレコーディングス』は1996~98年に首席指揮者を務め、現在は名誉指揮者の席にあるシュトゥットガルト放送交響楽団との1991~2004年の14年間の録音が8枚に収められている。曲目はベルリオーズ、ラヴェルなどのフランス音楽から、ベートーヴェン、フラームス、ブルックナーなどのドイツ音楽、さらにドヴォルザーク、レスピーギと多彩だ(8枚中3枚は初出音源)。一方の『プレイズ・フランシス・プーランク』は、60年代前後と80年代の録音されたプーランクの30作品が7枚にまとめられたもの。作曲家からの信頼も篤かったプレートルの指揮は、作品解釈の一つの指標と言っても過言ではない。
プレートル シュトゥットガルト放送交響楽団名演集(The SWR Recordings)
〔ベートーヴェン,ブラームス,ブルックナー,ベルリオーズ,ラヴェル,ドヴォルザーク,ビゼー,マーラー,レスピーギ,ストラヴィンスキー,R.シュトラウスの作品〕
ジョルジュ・プレートル指揮シュトゥットガルト放送so
〈録音:1991年~2008年〉
[SWR Classic(D)SWR19155CD(8枚組:海外盤)]
プレートル プレイズ・フランシス・プーランク
〔全27曲〕
ジョルジュ・プレートル指揮パリ音楽院o,パリo,モンテカルロpo,フランス国立o,フィルハーモニアo,他
〈録音:1959年~1985年〉
[Erato(S,D)5419799378(7枚組:海外盤)]
ロベルト・アラーニャ/ワーナークラシックス・オペラ全曲盤録音集
高い人気を誇るロベルト・アラーニャ(T)が歌うすべてのオペラ全曲版録音が33枚セットになった。ビゼー《カルメン》、ドニゼッティ《ランメルモールのルチア》(フランス語版)、グノー《ロメオとジュリエット》、マスネ《ウェルテル》《マノン》《ナヴァラの娘》、オッフェンバック《ホフマン物語》、ヴェルディ《ドン・カルロ》(フランス語版)など彼の評価が特に高いフランス語オペラも多数収録されている。
ロベルト・アラーニャ/ワーナークラシックス・オペラ全曲盤録音集
〔全16作品〕
ロベルト・アラーニャ(T)アントニオ・パッパーノ,ケント・ナガノ,ミシェル・プラッソン,マルチェッロ・ヴィオッティ,アルベルト・ヴェロネージ指揮コヴェント・ガーデン王立歌劇場,リヨン国立歌劇場o,ロンドンso,パリo,他
〈録音:1992年~2017年〉
[Warner Classics(D)2173226061(33枚組:海外盤)]
マリス・ヤンソンスのショスタコーヴィチ/交響曲全集
マリス・ヤンソンスによるショスタコーヴィチの交響曲全集は、交響曲に加えてピアノ協奏曲、チェロ協奏曲と、ジャズ組曲や《タヒチ・トロット》なども収められている。キャリア初期のオスロ・フィルからバイエルン放送響まで、ヤンソンスに縁の深い8つのオーケストラを振り分けており、世界中のオーケストラから愛された名指揮者の軌跡を振り返る絶好のBOXとなっている。
ショスタコーヴィチ/交響曲全集
〔交響曲第1番~第15番,ピアノ協奏曲第1番,同第2番,チェロ協奏曲第1番,同第2番,他〕
マリス・ヤンソンス指揮ベルリンpo,ウィーンpo,バイエルン放送so,フィラデルフィアo,サンクト・ペテルブルクpo,ピッツバーグso,ロンドンpo,オスロpo
〈録音:1991年~2005年〉
[Warner Classics(D)5419795717(13枚組:海外盤)]
クレンペラー/ブラームス作品録音集
オットー・クレンペラーのブラームス作品録音集。4つの交響曲に加えてヴァイオリン協奏曲、ドイツ・レクイエム、ハイドンの主題による変奏曲、悲劇的序曲、大学祝典序曲、アルト・ラプソディを収録。どの録音も繰り返し再発されてきた定番中の定番だが、本BOXは2023年のオットー・クレンペラー全集用にオリジナル・テープからリマスタリングされた最新音源を使用しているので、クレンペラー愛好家は要チェックだ。
クレンペラー/ブラームス作品録音集
〔交響曲第1番~第4番,ハイドンの主題による変奏曲,悲劇的序曲,大学祝典序曲,アルト・ラプソディ,ヴァイオリン協奏曲,ドイツ・レクイエム〕
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニアo,同cho,フランス国立放送so,ダヴィド・オイストラフ(vn)エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)
〈録音:1954年~1961年〉
[Warner Classics(M,S)5054197963674(6枚組:海外盤)]
カトリーヌ・コラール/エラート、旧EMIクラシックス、ヴァージン・クラシックス録音全集
1993年に46歳の若さで亡くなったカトリーヌ・コラール(p)による旧EMIクラシックス、ヴァージン・クラシックスでの全録音集。シューマンのピアノ・ソナタやクルトワ(vn)とのシューマン、プロコフィエフ、フランクなどのヴァイオリン・ソナタ、ヤノフスキとの共演によるダンディ《フランスの山人の歌による交響曲》などを収める。
カトリーヌ・コラール/エラート、旧EMIクラシックス、ヴァージン・クラシックス録音全集
〔シューマン:幻想曲,ピアノ・ソナタ第1番,同第2番,フランク:ヴァイオリン・ソナタ,ダンディ:フランスの山人の歌による交響曲,他〕
カトリーヌ・コラール(P)カトリーヌ・クルトワ(vn)マレク・ヤノフスキ指揮フランス放送po,他
〈録音:1973年~1991年〉
[Erato(S,D)5419796263(7枚組:海外盤)]
Text:今泉晃一&編集部