
「ワーグナーがいた時代」への、ストイックな応答
特別企画シリーズ「カール・リヒターとアーノンクール」♪ 2026年に生誕100年を迎えるリヒターと、没後10年のアーノンクール、クラシック音楽演奏の新たな地平を拓いた2人の音楽家を深めます。
古楽復興運動(HIP)の中心人物で、数々の名曲の深層に、ラディカルに光を当て続けた指揮者ニコラウス・アーノンクール(1929~2016)。彼による生涯唯一のワーグナー演奏を収めた『ライヴ・イン・グラーツ 1999』[ソニー・クラシカル]が新たに現れたいま、彼の音楽に、ふたたび大きな注目が集まっています。
今回の記事ではこの新譜だけでなく、ワーグナーと同じ後期ロマン派に分類されるヴェルディ、ブルックナー、ドヴォルザーク作品の、同時期(1998~2004年)の録音盤も登場。これらを通して、当時のアーノンクールが抱いていた「後期ロマン派」観を探っていきます。広瀬大介さんの執筆です。
Text=広瀬大介(音楽学)
アーノンクール×後期ロマン派の忘れられない録音たち
ニコラウス・アーノンクール没後10年にして、まさかその指揮によるワーグナーを聴ける日が来るとは思わなかった。古楽の世界に身を投じたアーノンクールではあるが、かつてはウィーン交響楽団のチェロ奏者であり、最晩年には多くのオーケストラと後期ロマン派の作曲家・作品を手がけていた。晩年に至るまでシュトラウス・ファミリーやガーシュウィンを愛してはばからなかったこともよく知られている。むしろワーグナーを意識して遠ざけるべき理由もなかったろう。
ソニーから初めて発売されたこのワーグナー、そしてメンデルスゾーン、シューマンについては最後に触れることにして、まずは、筆者の記憶につよく残っている、アーノンクールの後期ロマン派レパートリーについて振り返ってみたい。
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