
比較で「バッハの伝道師」を深める!
特別企画シリーズ「カール・リヒターとアーノンクール」♪ 2026年に生誕100年を迎えるリヒターと、没後10年のアーノンクール、クラシック音楽演奏の新たな地平を拓いた2人の音楽家を深めます。
「バッハの伝道師」ともよばれたカール・リヒター(1926~81)は、名盤『マタイ受難曲』(1958年録音)[アルヒーフ]をはじめとする指揮活動でとりわけ有名ですが、卓越した鍵盤楽器奏者でもありました。
今回の記事では、リヒターがチェンバロを弾いた『ゴルトベルク変奏曲』(1970年録音)[グラモフォン]を軸に、レオンハルト、シュタイアー、ジャン・ロンドーの同曲異演盤との比較を通して、その演奏、さらに音楽観について、使用楽器にも着目しながら考究していきます。飯田有抄さんの執筆です。
Text=飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)
カール・リヒター:その複雑な音楽家像
本題のチェンバロ音楽の話に入る前に、まずはカール・リヒター(1926〜81)という人物像について簡単に触れておきたい。というのも、彼の音楽は今日、必ずしも単純な評価の枠に収まるものではないからだ。
1970年代以降、HIPが本格的に台頭した時代には、モダン楽器による彼のバッハ演奏は「重く、平板で、後期ロマン派の残滓」と批判されることもあった。しかし1950年代にはリヒターの演奏は、それまで肥大化していたバッハ演奏を引き締め、ポリフォニーの明晰さと均整の取れたリズムの緊張感を取り戻すものとして、むしろ革新的に受け止められていたのである。
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