
ブラームス: 交響曲第1番、同第2番*
ケント・ナガノ指揮ハンブルクpo
〈録音:2017年11月*,2019年11月(L)〉
[BIS(D)NYCX10612]※2枚組SACDハイブリッド
9月11日 発売予定
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文=広瀬 大介(音楽学)
ブラームスの故郷ハンブルクから届いた、充実の響き。
ヨハネス・ブラームスがハンブルクに生まれたことは有名だろう。だが、音楽家としてのキャリアを積み重ねる中で、ブラームスは故郷と次第に疎遠になってゆく。そのきっかけは、1862年、フィルハーモニー協会の指揮者の座が他者に委ねられたことだった。
その協会の流れを汲むハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団を、ケント・ナガノは2015年から2025年まで率いていた。2025年に発売された2枚のCDは、そんなブラームスの人生をウィーンではなく、ドイツの北から見つめ直そうとしているようにも見える。《ドイツ・レクイエム》(2022年8月27・28日ライヴ録音[NYCX10528])は1868年ブレーメン初演の再現だった(第5楽章を欠く6楽章稿によっており、合間に別の曲が挟まれた)。続く交響曲第3番・第4番(3番:2023年4月、4番:2019年1月録音[NYCX10535])の歩みはゆったりとしており、ともに慈しむような音楽のありようがうかがえる。
今回発売される交響曲第1番・第2番は、ともにエルプフィルハーモニー大ホールでのライヴ録音で、第1番は2019年11月、第2番は2017年11月の収録であり、これでナガノによるブラームスとハンブルクの歩みが、その全貌を現すことになるだろう。
演奏時間は第1番が48分、第2番が45分。平均的な演奏時間よりもかなり長いのは、どちらも第1楽章の提示部を繰り返しているためでもある。丁寧な音作りなのは第3番、第4番と共通しているが、音楽の推進力においては第1番、第2番のほうに分がある。2024年3月、シュレスヴィヒ=ホルシュタインのブラームス協会からブラームス賞を受けたナガノは、この作曲家と楽団の相性をこう語っている。「ブラームスの表現と天才性は、オーケストラの響きにぴたりと調和しています。温かく、ときに情熱的で、光と柔軟性に満ちているその音色は(中略)北ドイツの空そのものです」と。この言葉は、そのままこの第1番、(とくに)第2番の演奏を形容するのにあてはまる。
1889年、晩年のブラームスがハンブルクから受け取ったのは、フィルハーモニー協会の指揮棒ではなく、名誉市民の称号だった。ナガノもまた、2023年、オーケストラ在任中に名誉指揮者の称号を贈られている。ハンブルクは、時空を超えたふたりの音楽家を「名誉」とともに迎え入れた。
協力:ナクソス・ジャパン

