ニューイヤー・コンサート2025
〔ヨハン・シュトラウスⅡ世:ワルツ《美しく青きドナウ》,ワルツ《酒・女・歌》,ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世:オペレッタ《すみれ娘》~〈愉快な仲間の行進曲〉,コンスタンツェ・ガイガー:フェルディナンドゥス・ワルツ(デルナー編曲版),他〕※加えて、本BDには特典映像がつきます
リッカルド・ムーティ(指揮)ウィーンpo.
〈録音:2025年1月(L)〉
[ソニーミュージック(D)SIXC113(BD)]
※2025年2月19日より発売開始予定
ニューイヤー・コンサート2025
〔上記と同内容〕
リッカルド・ムーティ(指揮)ウィーンpo.
〈録音:2025年1月(L)〉
[ソニーミュージック(D)SICC2361~2(2枚組)]
ムーティが踊らせた春の風を、「レコード芸術」に
ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに関し、ムーティの集大成といえる内容。プログラムからして、今回を入れて7度目の登場となった彼が、これまで同演奏会で指揮をしてきた作品が、そこかしこに散りばめられている。
演奏面でも、独特のムーティ節が相変わらず基調となっているのが特徴だ。具体的には、春風駘蕩たるローカルな訛がある程度以上必要なウィーン伝来のダンス音楽において、イタリア語にも通じるはきはきとした旋律の浮き立たせ方、打楽器や低音楽器を中心とした突き上げるようなリズムの取り方が如実に現れている。加えて、近年のムーティを象徴する腰の据わったテンポや濃密なハーモニー(《酒・女・歌》の特に序奏部分等)を通じ、ムーティ節の色濃いダンス音楽が展開される。
もちろん80歳台に入ったムーティが、過去を懐かしむかのような、しみじみとした味わいを、特にフレーズの終わりで聴かせる瞬間(《入り江のワルツ》等)も、今回の演奏の特徴だ。ただしこちらは映像ディスクのほうが、年齢を重ねたムーティの標高や指揮ぶり、世代交代が進んだウィーン・フィルのメンバーの姿といった視覚的な情報も加わって、よりその感を強めてくれる。
なお映像ディスクと音声ディスクでは、マイクセッティングやミキシングの違いもあるのだろう、後者のほうが奥行きや楽器の位置が、聴覚情報のみでよく分かる仕上がりとなっている。いずれにせよ両フォーマットともに生中継の際に起きたアンサンブルの乱れや、無関係な奏者を映し出した瞬間を綺麗に差し替え、繰り返し視聴するに堪える「レコード芸術」となっている。
小宮正安 (ヨーロッパ文化史)
協力:ソニーミュージック