圧倒的な色彩感と躍動感、そして色気。
シュタイネッカーのマーラー交響曲第5番(ピリオド楽器による)

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文=鷲野彰子(音楽学)

こんなマーラーは聴いたことがない!

圧倒的な色彩感と躍動感、そして色気。それらが絶妙なバランスで交錯し、切迫感を伴って妖艶に立ち現れては次のシーンへと導かれる、まさに目の離せない演奏だ。まずはなんと言っても、管楽器、弦楽器、打楽器、それぞれの音色の美しさや華やかさが秀逸である。個性豊かな各パートが、室内楽的に対話しながら、丁寧に、しかも緊張感をもって、一フレーズずつ紡いでいく。これこそ、ピリオド楽器によるオーケストラだからなし得る技だろう。こんなマーラーの第5番は他に聴いたことがない。

実はシュタイネッカーとマーラー・アカデミー管によるこの曲の演奏を聴くのは初めてではない。2年前にウィーンでのライヴに接した際にすっかり心を奪われ、もう一度聴く機会をずっと待ち望んでいたのだ(プログラム前半はアンスネス独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番だった)。最初のチューニングからして、他の演奏会とは様相が違った。明るい華やかな音で銘々が思い思いに楽器を鳴らし、演奏が始まる前から何か起こりそうな予感があった。ウィーンのコンチェルト・ハウスに高らかに鳴り響くトランペットのファンファーレの音色の美しさに魅了されたのも束の間、次から次へと登場する楽器ひとつひとつが魅惑的で、最後まで一瞬たりとも目が離せない。間違いなくここ数年間の中で最もワクワクした演奏会だった。

葬送行進曲の妖しい色気。一瞬一瞬が抜群のセンスの塊

それを再びこの録音で聴けるとは! 強烈なインパクトを放つ冒頭のファンファーレは実演そのままに、輝かしいばかりの明るいトランペットの音色が、長調と短調の両方の側面をもちあわせたこの葬送行進曲の妖しさを演出する。グッと抑えて低音で開始するヴァイオリンの第1主題では、ヴィブラートを控えた演奏だからこその緊張感や繊細さがあり、ポルタメント(高音から低音へ、または低音から高音へとグリッサンドのように繋げて弾く当時の演奏方法)の使用のような、現代のオーケストラでは使用されなくなった「新しい」試みも目を惹く。その後、クラリネットとヴァイオリンが順に旋律を紡ぎ、徐々に立ち昇る高揚感が何ともいえない。

マーラー・アカデミー管の魅力は、すべてのパートが冴えていることだろう。打楽器も痺れるように効果抜群で、主題の旋律に合いの手を入れるその一瞬一瞬だって抜群にセンスが良い。次々と現れる聴かせどころを余すところなく包み込み、引きずりも走りもせずに悠然と進んでいくテンポ感が、おそらくこの演奏の肝となっている。

最初から最後までずっと面白いが、敢えていくつか挙げるとすれば、やはり第1楽章の葬送行進曲の妖しい色気、《トリスタンとイゾルデ》を彷彿とさせる第4楽章での楽器間の対話であろうか。

そして繰り返しになるが、もう一度言及しておきたい。全ての楽章を通して注目に値するのは、それぞれの楽器の音色の美しさと、これほど大きな編成でありながら、室内楽のような楽器と楽器の対話が成立していることであろう。彼らにとっても新しいチャレンジだったに違いないこの録音は、私たち聴衆に幾重もの発見をもたらしてくれる。

ディスク情報

マーラー:交響曲第5番(ピリオド楽器による)

フィリップ・フォン・シュタイネッカー指揮マーラー・アカデミーo
〈録音:2024年9月〉
[Alpha(D)NYCX10608]

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協力:ナクソス・ジャパン

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