ロレンツォ・ヴィオッティ初登場!
ウィーン・フィル「サマーナイト・コンサート2026」
待望のライヴ盤に聴くヨーロッパの夏

最新盤レビュー
この記事は約4分で読めます。
SICC2396

文=東端哲也 (ライター)

夏空に響くオーケストラ

ウィーン・フィルにとって1年の音楽シーズンを締めくくる重要な名物行事である「サマーナイト・コンサート」。2004年に、EU(欧州連合)の中東欧諸国などの加盟による拡大を記念する祝賀イベントとして企画されたこの“無料”野外コンサートは、敷居が高いと思われがちなクラシック音楽を「あらゆる人々に開かれたものにする」というビジョンに基づき、初代指揮者に1988年の全米No.1ヒット《Don’t Worry Be Happy》で知られる異能のジャズ・ヴォーカリスト、ボビー・マクファーリンを迎えてスタート。以降は名だたる人気指揮者を起用して毎年更新を続け、その後「SOMMERNACHTSKONZERT(夏の夜のコンサート)」という名称に落ち着き、すっかり初夏のウィーンの風物詩となった。

「サマーナイト・コンサート2026」の様子
(ウィーン・フィルの公式Instagram)

通算23回目の今年は6月19日に開催され、4月から東京交響楽団の音楽監督にも就任して大きな話題を捲いているスイスはローザンヌ出身のロレンツォ・ヴィオッティが初登場。既に定期演奏会や欧州6都市をめぐるツアーなどで共演済みなだけあって、オープナーの華やかな《軽騎兵》序曲からお約束の“締め曲”《ウィーン気質》まで、名門オーケストラから豊潤な響きを引き出すことに成功している。いつもの年にも増して多彩な今回のプログラムは、《マノン・レスコー》の間奏曲や〈タイスの瞑想曲〉のような甘美な楽曲から有名な《くるみ割り人形》の〈トレパーク〉といった万人受けする名曲、通好みのコルンゴルト《シュトラウシアーナ》や《ダフニスとクロエ》第2組曲まで盛り沢山。20世紀アメリカの女性作曲家フローレンス・プライスの瞑想的なオルガン曲《アドレーション》(オーケストラ版)と1917年にゼキーニャ・デ・アプルーが書いたブラジル伝統のショーロ曲《ティコ・ティコ・ノ・フバー》(アンコール曲)など“レアもの”も聴きどころだ。

歌手ブリン・ターフェルにも注目!

もちろんスペシャルなソリストもこのコンサートの醍醐味のひとつ。特に歌手陣は2017年のルネ・フレミング(ソプラノ)を筆頭に2018年のアンナ・ネトレプコ(ソプラノ)、2020年のヨナス・カウフマン(テノール)、2023年のエリーナ・ガランチャ(メゾ・ソプラノ)、2024年のリーゼ・ダヴィドセン(ソプラノ)、2025年のピョートル・ベチャワ(テノール)と、近年はゴージャスなスターを次々と招き入れてきたが、ついに今年は現代バス・バリトン界の頂点ブリン・ターフェルが降臨。すべてを否定する悪魔メフィストーフェレからアンチヒーローのファルスタッフ、悩める北欧の最高神ヴォータンまでそれぞれキャラクター性の強い難役を演じ分け、オペラの舞台さながらに披露。極めつけはミュージカル《屋根の上のヴァイオリン弾き》からの主人公テヴィエの歌で、このワンシーンに彼のユーモラスな性格と逆境を乗り越える勇気や深い信仰心、家族や周囲の人々への愛が盛り込まれ、それがターフェル&ウィーン・フィルの圧倒的な説得力によって描き出されるのが圧巻である。

本盤の他にBlu-rayなどの映像盤もあり(※順次発売)、そちらではユネスコの世界遺産に登録されているシェーンブルン宮殿の美しい景観が楽しめるが、CDでは観客の歓声や拍手など(それも魅力のひとつではある)がカットされている分、音楽に集中できて何度でも繰り返し再生してストレスなく楽しめるメリットは捨てがたい。

ディスク情報

ウィーン・フィル・シェーンブルン・サマーナイト・コンサート2026
〔スッペ:オペレッタ《軽騎兵》序曲,プライス:オルガンのための《アドレーション》(弦楽オーケストラ版),コルンゴルト:シュトラウシアーナ,ボック:ミュージカル《屋根の上のヴァイオリン弾き》~もし私が金持ちだったなら,アブルー:ティコ・ティコ・ノ・フバー,ヨハン・シュトラウス2世:ウィーン気質,他〕

ロレンツォ・ヴィオッティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,ブリン・ターフェル(Br)
〈録音/収録:2026年6月19日(L:シェーンブルン宮殿)
[ソニー・クラシカル(D)SICC2396]CD
[ソニー・クラシカル(D)SIXC118]BD ※ 2026年8月19日発売予定

[CD版]

・レーベル商品ページはこちら(CD版)

[BD版]

・レーベル商品ページはこちら(BD版)

[配信版]

・各種配信リンクはこちら

協力:ソニーミュージック・レーベルズ

タイトルとURLをコピーしました