

▲①クナッパーツブッシュ指揮バイロイト祝祭の1962年《パルジファル》と②ベーム指揮バイロイト祝祭の1967年《神々の黄昏》LP裏ジャケットより。いずれも錚々たる歌手陣がクレジットされている
よく「モーツァルトのオペラに脇役なし」と言われるが、ワーグナーでも似たようなことが言え、《ニーベルングの指環》や《ニュルンベルクのマイスタージンガー》など脇役・端役に至るまで実に魅力的に描かれていて、実演でもレコードでも名歌手が特別出演して意外な聴きものになったりする。また一方で、例えば《トリスタンとイゾルデ》のトリスタン役は文句なしだがイゾルデがイマイチ(あるいはその逆)なんてことはしばしば。オペラは主役・脇役を問わず出来の凹凸があるのは常であり、「オペラのレコードに完璧はない」とも言われる所以。ここではこうしたワーグナー作品のレコードの機微を登場人物別に再検証、名盤からレア盤まで「聴き直し、出会い直し」を提案。もちろん古今の名歌手の紹介も兼ねつつ。
■=必聴の絶対的名盤・名唱 ●=忘れがたい名盤・名唱 ▲=編集部員のオシ盤・オシ歌手
※「レコード古地図」のタイトル通り対象は20世紀の録音に絞り、また現在入手困難のディスクも多く含みます
選・文=編集部(Y.F.)
舞台神聖祭典劇《パルジファル》(1882)
グルネマンツ(Bs)
■クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Decca)ハンス・ホッター
●ショルティ=ウィーンpo(1972,Decca)ゴットロープ・フリック
●ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1970,DG)フランツ・クラス
▲レヴァイン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)ハンス・ゾーティン
昔から《パルジファル》の主人公は誰?論争があるが、とにかく歌唱部分が断トツに長い(第2幕には登場しないとはいえ)のはグルネマンツ。天下の名盤、クナッパーツブッシュ(1962)盤の歌手陣の中で、異次元の歌唱(と語り)を聴かせたのがホッターで、まぎれもなく同盤の不滅の価値の一端を担っている。レコード上には名だたるドイツの歴代バス歌手がずらり居並ぶこの役で、フリックとクラスも聴き逃せないが、20世紀後半では痺れる低音のゾーティンも絶対に忘るべからず。
アンフォルタス(Br)
■クーベリック=バイエルン放送so(1980,Arts)ベルント・ヴァイクル
●ショルティ=ウィーンpo(1970,Decca)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
●カラヤン=ウィーン国立歌劇場o(1961,RCA)エーバーハルト・ヴェヒター
▲A.ジョルダン=モンテ・カルロpo(1985,Erato)ヴォルフガング・シェーネ
いわば煩悩に満ちた若い王様の役だから、どうもドスの効いたバス(寄りの)バリトンが歌うとちょっと違う気がする(とはいえ「クナッパーツブッシュのアンフォルタス」だったジョージ・ロンドンも悪くはないけれど)。その点、色気もある美声のヴァイクルはまさに嵌まり役。同様にリリックな声のフィッシャー=ディースカウが考えに考え抜いて歌ったこの役もピカイチ。ヴェヒターも同じく美声が光る。意外なところでは、ドイツの正統派シェーネの格調高い歌も、王の品格があった。
パルジファル(T)
■クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1951,Decca)ヴォルフガング・ヴィントガッセン
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)ジェス・トーマス
●レヴァイン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)ペーター・ホフマン
▲グッドール=ウェールズ・ナショナル・オペラo(1985,Decca)ウォーレン・エルスワース
特別記事本編で、ヴィントガッセンとルネ・コロの名は何度も出てきているので(だからと言って全く取り上げないわけにもいかないが……)ここではそれ以外を重点的に。結局2つ(1951年、1962年)のクナッパーツブッシュ盤の話になるが、トーマスはさすがにヴィントガッセンと比べられては気の毒とはいえ大健闘。一方、太く短く完全燃焼したホフマンは、なんとかレヴァイン盤でバイロイトに間に合ったのは幸いだった。やはり早逝のエルスワース、ちょっと武骨だがその隠れた名唱が日本公演のジークムントの熱演を偲ばせる。
クンドリー(Ms)
■クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1951,Decca)マルタ・メードル
●レヴァイン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)ヴァルトラウト・マイアー
▲ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1970,DG)ギネス・ジョーンズ
▲レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1993,DG)ジェシー・ノーマン
1980年代~90年代のクンドリーとして一世を風靡したマイアーは、役への集中度も含めて百点満点だが、大先輩のメードルには敵わない。この二人の間の世代のジョーンズは、イゾルデやブリュンヒルデでは癖の強い唱法が気になったが、この魔訶不思議な役となるとなかなか嵌まっていた。ノーマンに関しても、他のワーグナー歌唱(エルザ、ジークリンデなど)では、その破格すぎる歌唱スケールが違和感を生むこともなくはなかったが、クンドリーでは、この謎めいたキャラクターに新たな一つの「解」を与えてくれたようにも。
クリングゾール(Bs/Br)
■クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1951,Decca)ヘルマン・ウーデ
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)グスタフ・ナイトリンガー
▲ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1970,DG)ドナルド・マッキンタイア
▲カラヤン=ベルリンpo(1979-80,DG)ジークムント・ニムスゲルン
登場場面は第2幕の前半のみ(+幕切れにもう一声)であっという間に消えてしまう印象だが、ウーデやナイトリンガーのような強烈な声で歌われるとあやうくクンドリーも飲み込まれそう。一方で、マッキンタイアやニムスゲルンのような別の意味で一癖も二癖もある歌手が歌うと、悪魔的というより(設定としては魔法使い)ちょっとコミカルな面も見えてきて面白い。
ティトゥレル(Bs)
■A.ジョルダン=モンテ・カルロpo(1985,Erato)ハンス・チャンマー
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1951,Decca)アルノルト・ファン・ミル
●バレンボイム=ベルリンpo(1990,Teldec)ジョン・トムリンソン
▲ショルティ=ウィーンpo(1971-72,Decca)ハンス・ホッター
モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》における騎士長のように、歌う部分はほんの数分で(舞台に姿も見せないことも)一声二声だけの勝負になるが、ここはネアカのバスだと台無しで、重々しいバスが響いてきてこそ舞台が締まる。チャンマー、ファン・ミルいずれも知る人ぞ知る名前かもしれないが、たった一声で納得。一線から退いたホッターの「特別出演」も嬉しい。
舞台祭典劇《ニーベルングの指環》(1876)
アルベリヒ(Br/Bs)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1967,Philips)グスタフ・ナイトリンガー
●バレンボイム=バイロイト祝祭o(1992,Teldec)ギュンター・フォン・カンネン
▲フルトヴェングラー=ミラノ・スカラ座o(1950,Cetra)アロイス・ペルナーストルファー
▲ケンペ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)オタカー・クラウス
ある意味《ニーベルングの指環》全体のタイトルロールであり、また《ラインの黄金》の(ラインの娘3人のアンサンブルに続く)ソロ第一声を発するのがアルベリヒ。1950年代から約20年間この重要な役をほぼ一手に引き受けていたのがナイトリンガーで、他の追随を許さない強烈な存在感だが、あえてほぼ同世代のペルナーストルファーとクラウスを好敵手として挙げてみた。ナイトリンガーと聴き比べてみると、この役の別の面が見えてくるかも。当然彼らにも引退の時があったわけで、その後に登場したアルベリヒたちの中で一人選ぶならフォン・カンネンはいかがだろう? 十分ナイトリンガーの後継者たりえていたのでは。
ローゲ(T)
■C.クラウス=バイロイト祝祭o(1953,Orfeo)エーリヒ・ヴィッテ
●ヤノフスキ=ドレスデン国立o(1980,Eurodisc)ペーター・シュライアー
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1956,Orfeo)ルートヴィヒ・ズートハウス
▲モラルト=ウィーンso(1949)ユリウス・ペルツァー
《ラインの黄金》の狂言回し。ゆえに全篇「歌」でなく「語り」で貫かれており、そうなると、バッハ《マタイ受難曲》の名エヴァンゲリストだったシュライアーが得意としたのも頷けるが、そこはワーグナー、重量級のヘルデンテノールによって語られるとさらなる面白味が出る。「フルトヴェングラーのトリスタン」だったズートハウス、その前の世代の知る人ぞ知るヘルデン、ペルツァーなど、それぞれに超個性的な語りを聴かせる。さらに1950年代のローゲ役のスペシャリストだったヴィッテも、歯切れのいいドイツ語に魅了される。
ヴォータン(Br/Bs)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ハンス・ホッター
●ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)テオ・アダム
▲ケンペ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)ジェローム・ハインズ
▲カラヤン=バイロイト祝祭o(1951)シーグルド・ビョルリング
《神々の黄昏》にこそ出てこないが(《ジークフリート》では「さすらい人」として登場)《ニーベルングの指環》全体のイメージの象徴ともいえるのがヴォータンであり、そのヴォータン役の象徴がホッター。アルベリヒのナイトリンガーと並んで鉄板中の鉄板の当たり役で、空前絶後としか言いようがない。その格調高い役作りをかろうじて引き継ぎえたのは、アダムくらいしか思い浮かばなかった。それでもあえて、ホッター登場前後のヴォータン歌いを見渡してみると、ビョルリングとハインズが、ホッターとは全く異なる荒々しい神を演じていて興味深い。
フリッカ(Ms)
■ケンペ=バイロイト祝祭o(1960,PAN)ヘルタ・テッパー
●ラインスドルフ=ロンドンso(1961,Decca)リタ・ゴール
▲フルトヴェングラー=ミラノ・スカラ座o(1950,Cetra)エリーザベト・ヘンゲン
▲ケンペ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)レジーナ・レズニク
フライア(S)
■ショルティ=ウィーンpo(1958,Decca)クレア・ワトソン
●ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)アニヤ・シリヤ
●レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1988,DG)マリ=アンネ・ヘガンデル
▲カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ヘルタ・ヴィルフェルト
《ラインの黄金》はいわゆるプリマドンナが出てこないので、それに当たるのが、ヴォータンの妻フリッカとその妹フライアということになろうか。フリッカは《ラインの黄金》と《ワルキューレ》では別人(別神?)のようで、その辺りの変貌ぶりも聴きものだが、テッパーやヘンゲンいずれも強烈な役作りで、ちょっと怖いくらい。また外国人のレズニク、ゴールも含めドイツ語が全くおろそかにならないのはさすが。フライアは、こちらの方こそプチプリマドンナ的存在で、ワトソンからヘガンデルまで、清楚な声が、この特異なアングラ(風)劇の中で新鮮。あのエキセントリックなゼンタで評判を取ったシリヤがこの役で別の顔して出てくるのもちょっと笑える。
ドンナー(Br)
■ショルティ=ウィーンpo(1958,Decca)エーバーハルト・ヴェヒター
●フルトヴェングラー=ローマRAIso(1953,Warner)アルフレート・ペル
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1958)エリック・サエデン
▲カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)トーニ・ブランケンハイム
フロー(T)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ヨーゼフ・トラクセル
●カラヤン=ベルリンpo(1967,DG)ドナルド・グローブ
●ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1980,Philips)ジークフリート・イェルザレム
▲ヤノフスキ=ドレスデン国立o(1980,Eurodisc)エーバーハルト・ビューヒナー
続く神々はドンナーとフロー。「神様」というにはちょっと間の抜けたところがあり、フマジメな言い方をすると「歌う漫才コンビ」とでも言うべきか。それが、ヴェヒターやペル、トラクセルやグローブのような飛び切りの美声で歌われると、逆に可笑しさが滲み出る。後にジークフリートに成長するイェルザレムが一生懸命歌っているのも微笑ましい。サエデンやブランケンハイム、ビューヒナーなどは漫才を地でいっているし。
ファーゾルト(Bs)
■カラヤン=ベルリンpo(1967,DG)マルティ・タルヴェラ
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ルートヴィヒ・ヴェーバー
▲ハイティンク=バイエルン放送so(1985,EMI)ハンス・チャンマー
▲バレンボイム=バイロイト祝祭o(1991,Teldec)マティアス・ヘレ
ファーフナー(Bs)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)クルト・ベーメ
●ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1980,Philips)フリッツ・ヒューブナー
▲ハイティンク=バイエルン放送so(1985,EMI)クルト・リドル
▲モラルト=ウィーンso(1949)ヘルベルト・アルゼン
ファーゾルトとファーフナーは「巨人族」の二人ということで一緒くたにされることも多いが、実際はキャラは真逆で《ラインの黄金》後半では殺される方と殺す方なわけだから、舞台でも録音でもその違いを聴きたい。その点ヴェーバー、タルヴェラ、一方でベーメ、リドルなど、個性的な声とともに役作りも楽しい。ヴェーバーなどめっぽう楽しんで演じているのが伝わってくる。
エールダ(A)
■ケンペ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)マルガ・ヘフゲン
●クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1956,Orfeo)ジーン・マデイラ
●ヤノフスキ=ドレスデン国立o(1980/82,Eurodisc)オルトルン・ヴェンケル
▲ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)ヴェラ・ソウクポヴァー
ワーグナーの多くの役の中で、音域的に飛びぬけて低いという面もあってか、エールダはレコードでも何人かのスペシャリストによって歌われてきた。ショルティ盤《ジークフリート》でも起用されたヘフゲンはその筆頭で、バイロイトでも約15年にわたってこの役を歌った。ヴェンケルはブーレーズ盤にも同役で参加、またチェコ出身のコントラルト、ソウクポヴァーもそうだが、彼女たちは宗教曲での貢献ということでも共通している。
ジークムント(T)
■ショルティ=ウィーンpo(1965,Decca)ジェイムズ・キング
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ラモン・ヴィナイ
●ラインスドルフ=ロンドンso(1961,Decca)ジョン・ヴィッカーズ
▲ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1980,Philips)ペーター・ホフマン
《ワルキューレ》開幕早々の第一声がジークムントであり、この幕は出ずっぱりになるが、むしろ大変なのは第2幕。というのは「死の告知」の場面はほとんどバリトンの音域の「語り」であり、そこでの表現が甘いと台無しになる。その点のちにバリトンに転向するヴィナイはもちろん、キング、ヴィッカーズも万全だ。ジークフリート歌いが必ずしもジークムントを上手く歌えていないのはその低音問題があるのかも。最後にホフマンのジークムントについて。何かと不評が多かったブーレーズ盤リングの歌唱陣の中で、間違いなく最高のパフォーマンスを見せたのが彼であったことを再確認しておきたい。
ジークリンデ(S)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)レオニー・リザネク
●ショルティ=ウィーンpo(1965,Decca)レジーヌ・クレスパン
●サヴァリッシュ=バイエルン国立o(1985,EMI)ユリア・ヴァラディ
▲カイルベルト=バイロイト祝祭o(1952)インゲ・ボルク
プリマ役がジークリンデとブリュンヒルデの二枚仕立てになっている《ワルキューレ》の場合、本来ブリュンヒルデを歌うメードル、ヴァルナイ、ニルソンがジークリンデ役に回ると(実際いずれも録音がある)もう他のソプラノを挙げる余地がなくなってしまうので、ここではそれは除外してセレクトした。とはいえ、リザネクとクレスパンは定番のベーム盤、ショルティ盤からで、やはり他のソプラノが入り込む余地は少ないのだが……。番外のボルクは、エレクトラの激唱で知られたドラマティック・ソプラノで、役への没入度が凄い。幕が進むにつれ徐々に白熱してくる歌唱が聴きものだ。
フンディング(Bs)
■ショルティ=ウィーンpo(1965,Decca)ゴットロープ・フリック
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ヨーゼフ・グラインドル
●レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1987,DG)クルト・モル
▲バレンボイム=バイロイト祝祭o(1991,Teldec)マティアス・ヘレ
フンディングは、一見ジークムント&ジークリンデ側からすれば「敵役」ということになるが、実は一概に悪役とも言えなくて、第2幕ではあえなく殺されてしまう、ちょっと可哀そうな役。そのあたりフリックのドスの効いた声とは対照的なモルのような柔らかな声のバスにも出番があり、またヘレの美声のフンディングもアリと、いろいろ楽しめる。
ブリュンヒルデ(S)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)アスリッド・ヴァルナイ
●ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)ビルギット・ニルソン
●フルトヴェングラー=ミラノ・スカラ座o(1950,Cetra)キルステン・フラグスタート
▲カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)マルタ・メードル
兜をかぶり槍を手にしたブリュンヒルデは「烈女」のイメージが強いかもしれないが、それとは真逆の繊細な語りにも耳を傾けたい。例えば《ワルキューレ》なら第2幕「死の告知」の場、第3幕のヴォータンとの二重唱など。そうしたブリュンヒルデの両面を考えると結局やはり戦後の3大ソプラノ——メードル、ヴァルナイ、ニルソン——とその先輩フラグスタートの4人に落ち着いてしまう。叙情のメードル、絶対的強さのヴァルナイ、盤石の高音のニルソン、そして神々しい音色のフラグスタート。彼女らが引退あるいは鬼籍に入ってから何十年もの歳月が流れ、次々素晴らしいブリュンヒルデは現れているんだろうけれど、レコードの呪縛とでも言おうか、この4人に戻ってしまう。
ジークフリート(T)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)ヴォルフガング・ヴィントガッセン
●フルトヴェングラー=ミラノ・スカラ座o(1950,Cetra)セット・スヴァンホルム
●サヴァリッシュ=バイエルン国立歌劇場o(1989,EMI)ルネ・コロ
▲クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1951,Testament)ベルント・アルデンホフ
「ヘルデンテノール」という呼称の範囲はけっこう曖昧で、タンホイザーからパルジファルまで一つでもレパートリーにしていればヘルデン(英雄)になるのだが、一説ではジークフリート役を(《神々の黄昏》まで)歌い通してこそ真のヘルデンテノールという向きもある。いずれにせよ、この役を完全にモノにしたテノールはそう多くはない。ヴィントガッセンとコロに関してはもうお馴染みなので、ここではスヴァンホルムとアルデンホフの名前をぜひ再評価いただきたい。前者は歌(と語り)が常に前へ前へと進んでいく心地よさがあり、後者は鋼のような太く硬い音色のまま高音も楽々と出してしまうのに唖然とする。とにかく歌い通すだけで大変なこの役で、ここまで独自の個性を出し得るとはまさに「超人」たちだ。
ミーメ(T)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)エルヴィン・ヴォールファールト
●ショルティ=ウィーンpo(1962,Decca)ゲルハルト・シュトルツェ
▲フルトヴェングラー=ミラノ・スカラ座o(1950,Cetra)ペーター・マルクヴォルト
▲スワロフスキー=チェコpo(1968,Profil)ヘロルト・クラウス
《ジークフリート》第1幕の冒頭、板付きのミーメがいったいどんな声で歌い始めるか、いつも固唾を飲んでその瞬間を待つのだが、同幕は一人出ずっぱりで事実上の主人公。英雄役のヒロイックなテノールとの対比も重要になるので、ミーメ歌いという特殊な専門職が確立され、代々歌い継がれてきた。その職人芸をある意味「完成」させたのがシュトルツェとヴォールファールトで、前者はカラヤン盤の同役でも起用され、もちろんバイロイトでも歌った。二人以前にもパウル・クーエンというスペシャリストがいたが、ここでは隠れ名演のマルクヴォルトを、またクラウスも二人とはちょっと趣が違った知的な歌唱が面白い。
森の小鳥(S)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,Philips)エリカ・ケート
●C.クラウス=バイロイト祝祭o(1953,Orfeo)リタ・シュトライヒ
▲クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1956,Orfeo)イルゼ・ホルヴェーク
▲クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1958)ドロテア・ジーベルト
《ジークフリート》は異形のオペラで、第2幕の後半まで女性(女声)はいっさい出てこない。しかも、その第2幕の女声第一声「森の小鳥」はたいてい舞台上には登場もしない。なので、端役ながらその声がより新鮮に響き、レコードでは時々「特別キャスト」が充てられそれが話題になることも。ショルティ盤がジョーン・サザーランド、ハイティンク盤キリ・テ・カナワ、レヴァイン盤キャスリーン・バトル、といった具合だ」。ここではバイロイト・ライヴに限ってみたが、ケート、シュトライヒはおなじみの人気ソプラノ。ホルヴェークやジーベルトも、その爽やかな声が味わい深い。そんな一服の清涼剤的な数分間だが、実は物語上けっこう重要な話をしているので要注意。
ハーゲン(Bs)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ヨーゼフ・グラインドル
●ショルティ=ウィーンpo(1964,Decca)ゴットロープ・フリック
●ヤノフスキ=ドレスデン国立o(1983,Eurodisc)マッティ・サルミネン
▲ハイティンク=バイエルン放送so(1985,EMI)ジョン・トムリンソン
ワーグナーの書いた敵役・悪役の中で(変な言い方だが)「完全な悪役」となると、ハーゲンに尽きる。つまり《神々の黄昏》の悪のヒーロー(これも変な言い方だが)であり、この役で満足できる演唱にはそうそう当たらない。レコードでは、あくまで歌い崩すことなくその中で他の誰も追随できないド迫力を生み出したグラインドルと、「黒い声」と形容された持ち声を様々に駆使したフリックの二人がダントツの存在感。最大の問題は両者が舞台を去った後、しばらくハーゲンが不在になってしまったことで(もちろん何人かの録音はそれなりの魅力はあったが)、ようやく1980年代にサルミネンとトムリンソンが出てその渇きを癒してくれた形。特に後者は過剰な雄叫びを上げることなく淡々と悪を歌ったところが現代的だった。
グンター(Br)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Testament)ヘルマン・ウーデ
●ショルティ=ウィーンpo(1964,Decca)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
●ベーム=バイロイト祝祭o(1967,Philips)トーマス・ステュアート
▲ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1980,Philips)フランツ・マツーラ
グートルーネ(S)
■フィエルスタート=オスロpo(1956,Decca)イングリート・ビョーナー
●フルトヴェングラー=ローマRAIso(1953,EMI)セーナ・ユリナッチ
●ブーレーズ=バイロイト祝祭o(1980,Philips)ジャニーヌ・アルトマイヤー
▲カラヤン=ベルリンpo(1969-70,DG)グンドゥラ・ヤノヴィッツ
グンターとグートルーネは、ハーゲン側だから「悪役」ということになるのだが、実際はハーゲンに利用されるいわば被害者でもあり、特にグンターはそのあたりの複雑な屈折したキャラクターが演じ出されないと面白くも何ともない。それを十全に表現したのがウーデで、1950年代のバイロイトでは彼の専売特許だった。レコードではショルティ盤で起用されたフィッシャー=ディースカウが意外にも大当たりで、さすがの心理表現にうならされる。マツーラはブーレーズ=シェロー組の《指環》最大の成果の一つで、堕ちていくマクベスを連想させる秀逸なグンターだった。グートルーネの方では、ビョーナーやユリナッチなどビッグネームが居並ぶ中で、カラヤンが起用したヤノヴィッツが清新で、他のワーグナーの役ではやや線が細くて不満があったが、グートルーネは最も成功した役ではないか。
ヴァルトラウテ(Ms)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1967,Philips)マルタ・メードル
●レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1989,DG)ハンナ・シュヴァルツ
●C.クラウス=バイロイト祝祭o(1953,Orfeo)イーラ・マラニウク
▲クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1956,Orfeo)ジーン・マデイラ
《神々の黄昏》第1幕にブリュンヒルデとの対話で十数分登場するだけの脇役だが、これはもうベーム=バイロイト盤で、元ブリュンヒルデのメードルが、現ブリュンヒルデのニルソンと成した録音に止めを刺す。こうした高レヴェルの芸術的瞬間を発見するのがレコードを聴く愉しみであり、同時に作品の新たな魅力も再発見できる。他に、当時フリッカ役でも定評があったマラニウクによるヴァルトラウテも聴き応え。


▲バイロイト祝祭の2種(③クナッパーツブッシュ指揮1960年,④ベーム指揮1968年)の《マイスタージンガー》のCD裏ジャケットより。ずらりとキャストが並んでおりそれを読み込んでいくのも愉しい
楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(1868)
ハンス・ザックス(Br/Bs)
■カラヤン=バイロイト祝祭o(1951,EMI)オットー・エーデルマン
●カラヤン=ドレスデン国立o(1970,EMI)テオ・アダム
●クナッパーツブッシュ=ウィーンpo(1950-51,Decca)パウル・シェフラー
▲バレンボイム=バイロイト祝祭o(1999,Teldec)ロベルト・ホル
ハンス・ザックスは、全てのドイツ系バリトン、バス歌唱が目指す究極の役で、レコードを追うだけでも相当数の名歌手たちがズラリと並び目移りしてしまうが、不思議なことに、もう一つのワーグナーの大役ヴォータンと両方で成功した歌手は意外に少なく、あのホッターでさえ、ザックスは自分には合わなかったと本人も語っている。ザックス、ヴォータン両役で高い評価を得たのはアダムくらいだろうか。そういうわけで、ここでは、エーデルマン、シェフラーなど、ここまで登場しなかった名前が並んだが、20世紀も最後になってもう一人、ホルというそれまでほとんどワーグナーに縁がなかったバス歌手がバイロイトに忽然と現れた。ナリも実在のザックス(の肖像)そのもので、久々の充実の歌唱に沸いたものだが、あれからもう四半世紀が経ってしまった。
ヴァルター・フォン・シュトルツィング(T)
■カラヤン=ドレスデン国立o(1970,EMI)ルネ・コロ
●カイルベルト=バイエルン国立歌劇場o(1963,Eurodisc)ジェス・トーマス
▲ベーム=バイロイト祝祭o(1968,Orfeo)ヴァルデマル・クメント
▲ハイティンク=コヴェント・ガーデン王立歌劇場o(1997,OpusArte)イェスタ・ヴィンベルイ
ヴァルターは、他のヘルデンテノールの役と違って、心理表現よりもひたすら若々しさと歌謡性が求められる。その点オペレッタ畑出身でもあるコロは申し分なく、セリフの扱いも抜群に巧い。クメントもやはりオペレッタの人気歌手で、持ち前の輝かしい高音はこの大役においても健在だった。ヴィンベルイは本籍はモーツァルトだが、この役でヘルデンテノールとして花開いた感があり、意外にスタミナもあって大詰めの優勝の歌など余裕があった。早逝があまりに惜しい。
エーファ(S)
■ケンペ=ベルリンpo(1956,EMI)エリーザベト・グリュンマー
●フルトヴェングラー=バイロイト祝祭o(1943,EMI)マリア・ミュラー
▲ライナー=ウィーン国立歌劇場o(1955,Orfeo)イルムガルト・ゼーフリート
▲ケンペ=ドレスデン国立o(1951,Profil)ティアーナ・レムニッツ
《マイスタージンガー》の登場人物たちは全員16世紀のニュルンベルクの市井の人々だが、とりわけ娘役のエーファにはそうした古き良き時代の雰囲気を求めたくなり、1950〜60年代のソプラノばかりのセレクトになってしまった。レムニッツやミュラー、ゼーフリートと、こんなにニュアンス豊かなソプラノにはそうそうお目(耳)にかかれない。そして最良のエーファだったグリュンマーこそは、今どきのソプラノにぜひお手本にしてほしい端正な歌唱の極致ではないか。
ベックメッサー(Br)
■サヴァリッシュ=バイエルン国立o(1993,EMI)ジークフリート・ローレンツ
●シュタイン=バイロイト祝祭o(1984映像,Philips)ヘルマン・プライ
●ヨッフム=ベルリン・ドイツ・オペラo(1976,DG)ローラント・ヘルマン
▲ハイティンク=コヴェント・ガーデン王立歌劇場o(1997,OpusArte)トーマス・アレン
人気歌手プライが、持ち前の陽キャラで三枚目ベックメッサーをコミカルに演じて大評判になったが、個人的には少々悪ふざけし過ぎなような気もする。そこで品格も節度もある本流ベックメッサーとしてローレンツを、またインテリのバリトン、アレンの名も挙げておきたい。ヘルマンもいたって真面目な音楽的ベックメッサーで、ヨッフム指揮の全曲盤の中で主役のフィッシャー=ディースカウに伍して光っていた。
ポーグナー(Bs)
■ショルティ=ウィーンpo(1975,Decca)クルト・モル
●カラヤン=ドレスデン国立o(1970,EMI)カール・リッダーブッシュ
●フルトヴェングラー=バイロイト祝祭o(1943,EMI)ヨーゼフ・グラインドル
▲ヨッフム=ベルリン・ドイツ・オペラo(1976,DG)ペーター・ラッガー
コートナー(Br/Bs)
■クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1960,Orfeo)ルートヴィヒ・ヴェーバー
●ショルティ=ウィーンpo(1975,Decca)ゲルト・ニーンシュテット
●カラヤン=ドレスデン国立o(1970,EMI)ゾルターン・ケレメン
▲カラヤン=バイロイト祝祭o(1951,EMI)ハインリヒ・プフランツル
引き続きニュルンベルクのマイスターたちを紹介していくと、まずはエーファの父ポーグナー。優しいお父さんキャラではあるが、第1幕に長めの聴かせどころも用意されていて、モル、ラッガーといった名歌手たちの美声を愉しみたい。ここでちょっと注目なのが、ザックスとこのポーグナー両方をレパートリーにした歌手も多いことで、グラインドルやエーデルマン、あるいはリッダーブッシュやアダムは名ザックスであり名ポーグナーだった。コートナーは、時にちょっと規則にうるさかったりする町内会の組長みたいな存在で、バスの長老ヴェーバーが歌うとまさに嵌まっていた。ニーンシュテットは、リアルでバイロイトの組合の長だったとも聞く。プフランツルは本来はベックメッサー(やアルベリヒ)も歌った大歌手だが、コートナーに回っての歌唱もなかなかに味わい深い。
ダーヴィット(T)
■クーベリック=バイエルン放送so(1967,Calig)ゲルハルト・ウンガー
●カラヤン=ドレスデン国立o(1970,EMI)ペーター・シュライアー
▲アーベントロート=バイロイト祝祭o(1943)エーリヒ・ヴィッテ
▲クナッパーツブッシュ=バイロイト祝祭o(1960,Orfeo)ゲルハルト・シュトルツェ
マクダレーネ(A)
■ショルティ=ウィーンpo(1975,Decca)ユリア・ハマリ
●ヨッフム=ベルリン・ドイツ・オペラo(1976,DG)クリスタ・ルートヴィヒ
▲ケンペ=ベルリンpo(1956,EMI)マルガ・ヘフゲン
▲L.ルートヴィヒ=ハンブルク国立歌劇場o(1971映像)ウルズラ・ベーゼ
ダーヴィットとマクダレーネは《マイスタージンガー》物語の中のセカンド・カップルという見方もあり、ここでも二人を組み合せてみた。若い徒弟という設定のダーヴィットは、シュライアーなんかが歌うとちょっと立派過ぎてしまい、「嵌まり役」となると万年青年のようなウンガーが似つかわしい。あとキャラクターテナーの雄シュトルツェが歌うと悪戯小僧のよう。一方マクダレーネは、ドイツのおばちゃん(失礼)的なイメージがあり、大プリマのルートヴィヒが肩の力を抜いて歌うのも楽しい。第1幕冒頭は教会のシーンで、そこにヘフゲンやハマリなど宗教曲のスペシャリストが現れると妙にしっくりくる。で、ベストカップルは?となるとハンブルク歌劇場のオペラ映画でのウンガーとベーゼにしよう。
夜警(Br/Bs)
■カラヤン=バイロイト祝祭o(1951,EMI)ヴェルナー・ファウルハーバー
●サヴァリッシュ=バイエルン国立o(1993,EMI)ルネ・パーペ
●クナッパーツブッシュ=ウィーンpo(1950-51,Decca)ハラルト・プレーグルヘフ
▲ショルティ=ウィーンpo(1975,Decca)ヴェルナー・クルムリクボルト
ここまで縷々ニュルンベルクの面々を紹介してきたが、締めは夜警。深夜の町に2度見廻りに来てくれる。それこそ2回分を合計してもほんの数分の端役だが、なんとまぁワーグナーはステキな場面を用意してくれたもんだ。この役には実演でもレコードでもしばしばバリトン/バスの名歌手が起用され、ここに挙げたファウルハーバーやパーペのように、若き日の声の記録を聴くこともできる(ただし前者は大器として期待されながら急逝してしまった)。番外のクルムリクボルトはレコード上だけのオアソビ企画で、二人の歌手(ヴァイクルとモル)が分担して歌っていて、アナグラムの架空の歌手名がクレジットされている。
楽劇《トリスタンとイゾルデ》(1865)
トリスタン(T)
■ベーム=バイロイト祝祭o(1966,DG)ヴォルフガング・ヴィントガッセン
●デ・サバタ=ミラノ・スカラ座o(1951,Cetra)マックス・ローレンツ
▲ショルティ=ウィーンpo(1960,Decca)フリッツ・ウール
▲グッドール=ウェールズ・ナショナル・オペラo(1981,Decca)ジョン・ミッチンソン
トリスタン役が「テノール殺し」と言われる所以は、第3幕の長大なモノローグにある。それも第2幕の長大な愛の二重唱を歌った直後に控えているのだから負担はなおさらだ。バイロイトでも何度か第3幕の途中で声を嗄らしてしまったテノールに当たっているし、バーンスタインはこの作品を、歌手の体力を考慮して1幕ずつ間を空けて録音した。そして、なお難しいのがそのモノローグでの心理表現で(=喉にさらに負担がかかる)ヴィントガッセンも、その前の時代のローレンツも(いずれもライヴ録音)そのあたり常に先を見通しつつ綿密なスタミナ配分も計算して臨んでいただろう。ここで番外的にウールとミッチンソンという、この役ではちょっと聞かない名前を出してみた。いずれも変に気負うことのない自然な表現で淡々と歌い通しており(もちろん棒歌い、という意味ではない)それが却って新鮮な発見に満ちていたからだ。
イゾルデ(S)
■カラヤン=バイロイト祝祭o(1952,Orfeo)マルタ・メードル
●ショルティ=ウィーンpo(1960,Decca)ビルギット・ニルソン
●バーンスタイン=バイエルン放送so(1981,Philips)ヒルデガルト・ベーレンス
▲バレンボイム=バイロイト祝祭o(1983映像,DG)ヨハンナ・マイアー
ワーグナーのヒロイン役の頂点として、ブリュンヒルデとイゾルデ、と並び称されるが、実際にはかなりの差異があって、イゾルデの方はかなりリリック(必ずしも「軽い」とう意味ではない)で、メードル、ニルソンは規格外として、ベーレンスや、他にヘルガ・デルネシュなどは、ブリュンヒルデに関してはかなり無理があったのでは、という気がしなくもない。あともう一つ、なぜかイゾルデ役ではあるべき録音が遺されていない、といううらみがある。本稿で何度も登場する三大ソプラノの一角ヴァルナイには未だに正規レコードはないし、C.クライバーがバイロイト・デビューで共演したリゲンツァも結局レコーディングされなかった。そうした、実現されなかった渇望感が、イゾルデの愛の死を聴くときにより神秘的に響いたりする。
マルケ王(Bs)
■ブーレーズ=NHKso(1967映像)ハンス・ホッター
●クナッパーツブッシュ=バイエルン国立o(1950,Orfeo)フェルディナント・フランツ
●バーンスタイン=バイエルン放送so(1981,Philips)ハンス・ゾーティン
▲バレンボイム=ベルリンpo(1994,Teldec)マッティ・サルミネン
マルケ王は物語上は、甥に裏切られた老王ということで、演出によっては過剰に歳を取った設定になっていてちょっと驚くことがあるが、第2幕の聴かせどころ「マルケ王の嘆き」は、けっして老人のつぶやきではなく、決然と歌われてほしい。そうなると、柔らかな声のバスよりも、バリトン役も歌えるフランツやゾーティンのような歌手がふさわしい。近年発掘されたブーレーズ指揮の大阪フェスティバルホールでのバイロイト公演の歌手たちの来日公演ライヴで、ホッターがマルケを歌っており、これがこの役の(個人的)決定版になった。
クルヴェナル(Br)
■カラヤン=ベルリンpo(1971-72,EMI)ヴァルター・ベリー
●マゼール=ベルリン・ドイツ・オペラo(1963)グスタフ・ナイトリンガー
●バレンボイム=バイロイト祝祭o(1983映像,DG)ヘルマン・ベヒト
▲ブーレーズ=NHKso(1967映像)フランス・アンダーソン
ブランゲーネ(Ms)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1958,Orfeo)グレイス・ホフマン
●C.クライバー=ドレスデン国立o(1980-82,DG)ブリギッテ・ファスベンダー
●クナッパーツブッシュ=バイエルン国立o(1950,Orfeo)マルガレーテ・クローゼ
▲ベーム=ウィーン国立歌劇場o(1967,Sony)ルート・ヘッセ
クルヴェナルとブランゲーネは、それぞれトリスタンとイゾルデの忠実な従者(お付き)で、前者は第3幕前半で、後者は第1幕で、主人との対話の形で聴かせどころがある。クルヴェナルはベリー、ナイトリンガーと、朴訥でやや豪放な従僕といった役作りで、ベヒトはブーレーズ盤の、アンダーソンはクナッパーツブッシュ(1958年)盤のアルベリヒたちである。一方ブランゲーネは、ホフマン、ファスベンダーと、冷徹というか淡々と歌われていくところに魅力がある。
羊飼い(T)
■C.クライバー=ドレスデン国立o(1980-82,DG)アントン・デルモータ
●カラヤン=ベルリンpo(1971-72,EMI)ペーター・シュライアー
●クナッパーツブッシュ=バイエルン国立o(1950,Orfeo)パウル・クーエン
▲ベーム=バイロイト祝祭o(1966,DG)エルヴィン・ヴォールファールト
第3幕でほんのチョイ役で出てくるだけの羊飼いをなぜ立項したかというと、答は一つ、過去の名歌手たちが贅沢にここに投入されているから。C.クライバーが《トリスタンとイゾルデ》のセッション録音で往年の名タミーノ(録音時70歳!)デルモータを引っ張り出してきたのは一部で大きな話題になったが、カラヤンはシュライアーを、ベームは《指環》のミーメで大成功したヴォールファールトを起用し、それぞれ充実したクルヴェナルとの対話場面を形作った。もう一人クーエンもミーメ役で名を成したテノールだ。
歌劇《ローエングリン》(1850)
ローエングリン(T)
■ヨッフム=バイロイト祝祭o(1954,Sony)ヴォルフガング・ヴィントガッセン
●ネルソン=バイロイト祝祭o(1982,Sony)ペーター・ホフマン
●R.ヘーガー=ベルリン国立o(1942,Preiser)フランツ・フェルカー
▲ラインスドルフ=ボストンso(1965,RCA)シャーンドル・コーンヤ
本稿では、音質面の問題もあって1950年代以降の録音しか言及してこなかったが、ローエングリンでは例外的に1930〜40年代に活躍したテノールとして、フェルカーをどうしても挙げておきたい。歴史的ローエングリン歌いであり、その叙情的側面を受け継いだのがヴィントガッセンであり、さらにトーマス、コロ、ホフマンへと続いた。もう一人この役で評判を得た歌手にコーンヤがいる。本人曰く「私はドイツ語、イタリア語、ハンガリー語でローエングリンを歌った」そうだが、ドイツ語にも特に違和感なく、発声の点でも模範的な正統派ローエングリンだったように思う。
エルザ(S)
■ケンペ=ウィーンpo(1962-63,EMI)エリーザベト・グリュンマー
●クナッパーツブッシュ=バイエルン国立o(1963,Orfeo)イングリート・ビョーナー
●ヨッフム=バイエルン放送so(1952,DG)アンネリース・クッパー
▲R.クラウス=ケルン放送so(1951)トルーデ・アイパーレ
エルザは、ワーグナーが書いたヒロイン役では、先立つゼンタやエリーザベト、そしてイゾルデやブリュンヒルデなどの「強さ」と比べると、異色の「健気さ」とでも言おうか、《魔笛》のパミーナの流れを引く伝統的なドイツ・オペラのプリマ役。そうなると《マイスタージンガー》のエーファでも述べたグリュンマーの中庸の美がふさわしい。それでついついクッパーやアイパーレなど、古いタイプのソプラノを並べてしまったが、いずれも現代のソプラノには失われた優美さに溢れている。
オルトルート(Ms)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)アストリッド・ヴァルナイ
●シュナイダー=バイロイト祝祭o(1990,Philips)ガブリエーレ・シュナウト
●バレンボイム=ベルリン国立o(1998,Teldec)デボラ・ポラスキ
▲アバド=ウィーンpo(1991,DG)ヴァルトラウト・マイアー
テルラムント(Br)
■ヨッフム=バイロイト祝祭o(1954,Sony)ヘルマン・ウーデ
●サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)ラモン・ヴィナイ
●ネルソン=バイロイト祝祭o(1982,Sony)レイフ・ロアル
▲アバド=ウィーンpo(1991,DG)ハルトムート・ヴェルカー
テルラムント&オルトルート夫妻は、妻にそそのかされて悪に手を染める、というシェイクスピアの『マクベス』の世界そのもの。そんなマクベス的な屈折した役をやらせたらピカイチなのがウーデで、一方その時代「トスカニーニのオテッロ」だったヴィナイがバリトンに転向しイアーゴを歌い、ワーグナーではこのテルラムント役で成功。この後の時代ロアル、ヴェルカーが二人に肉迫した感。さて、マクベス夫人ことオルトルートの方はこれまたヴァルナイの独擅場で、ウーデ、ヴィナイ、あとナイトリンガーの相手役は皆ヴァルナイだった。その後は、シュナウト、ポラスキといった、大柄なブリュンヒルデたちがこの役を引き継いだ。また名クンドリーのマイアーもその癖の強い声を役に生かしている。
ハインリヒ王(Bs)
■ネルソン=バイロイト祝祭o(1982,Sony)ジークフリート・フォーゲル
●シュナイダー=バイロイト祝祭o(1990,Philips)マンフレート・シェンク
●ヨッフム=バイロイト祝祭o(1954,Sony)テオ・アダム
▲アバド=ウィーン国立歌劇場o(1990映像,Arthaus)ロバート・ロイド
軍令使(T)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)トム・クラウセ
●ヨッフム=バイエルン放送so(1952,DG)ハンス・ブラウン
▲ネルソン=バイロイト祝祭o(1982,Sony)ベルント・ヴァイクル
▲C.デイヴィス=バイエルン放送so(1994,RCA)ブリン・ターフェル
《ローエングリン》は第1幕開始早々バリトン/バスの低音祭りとなり、まず軍令使が呼びかけ、それにハインリヒ王の挨拶が続き、さらにテルラムントが登場と、男性低声の饗宴(競演)に。王のフォーゲルやシェンク(二人とも録音が稀少なので貴重!)、英国インテリ・バスのロイド、そして軍令使のクラウセやヴァイクルと、ここではひたすら美声に酔いたい。若き日のターフェルもこれでもかと巨声を披露している。
歌劇《タンホイザー》(1845)
タンホイザー(T)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)ヴォルフガング・ヴィントガッセン
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1954)ラモン・ヴィナイ
●コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,Warner)ハンス・ホップフ
▲C.デイヴィス=バイロイト祝祭o(1978映像,Philips)スパス・ヴェンコフ
ワーグナーのヘルデンテノール役のうち、どうもタンホイザーは特殊というかかなりの難役のようで、タンホイザーだけは敬遠している歌手が意外といる。ヴィッカーズは宗教上の理由で、と語っていたようだが、キングやトーマス、ホフマンも(多分)歌っていない。本当の理由は分からないが、第3幕「ローマ語り」前後の心理表現の難しさが一因かもしれない。オールマイティのヴィントガッセンはそのあたり全く問題にせず悠然と歌っているが、他に挙げたヴィナイ、ホップフ、ヴェンコフはみな中低音が充実していて、そこが聴きものになっている。ここでは特に、他にワーグナー全曲の録音が皆無のヴェンコフの再評価を強調したい。
エリーザベト(S)
■コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,Warner)エリーザベト・グリュンマー
●ショルティ=ウィーンpo(1970,Decca)ヘルガ・デルネシュ
●レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1982映像,DG)エヴァ・マルトン
▲サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス
ヴェーヌス(S/Ms)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1962,Philips)グレイス・バンブリー
●クリュイタンス=バイロイト祝祭o(1955,Orfeo)ヘルタ・ヴィルフェルト
●レヴァイン=メトロポリタン歌劇場o(1982映像,DG)タティアナ・トロヤノス
▲コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,Warner)マリアンネ・シェヒ
エリーザベトとヴェーヌスは、一人の女性の二つの面を表した役として、一人のソプラノが両役を歌うこともあり、例えばニルソンが二つの役をどう歌い分けるか興味深い面もあるが、やはりレコードでは、様々な歌手による聴き比べを愉しみたい。エリーザベトは、グリュンマーを筆頭に、ロス・アンヘレスの叙情の極致からマルトンのようなかなりドラマティックな歌唱まで、共通するのは「ひたむきさ」。ヴェーヌスの方は、ヴィルフェルトやシェヒのような正統派の流れの中にあって「ブラック・ヴィーナス」と評判を呼んだバンブリーの役作りと歌唱は未だに鮮烈。
ヴォルフラム(Br)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1961,Orfeo)ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
●スウィトナー=ベルリン国立歌劇場o(1982映像,Platz)ジークフリート・ローレンツ
▲ハイティンク=バイエルン放送so(1985,EMI)ベルント・ヴァイクル
▲シノーポリ=フィルハーモニアo(1988,DG)アンドレアス・シュミット
ヴォルフラムはワーグナーにしては珍しいリリック・バリトンの役で、他のオランダ人やヴォータン役などでは声質や音域が合わなかったフィッシャー=ディースカウ(DFD)が水を得た魚のように最高の歌唱を展開。ちょっと神経質なまでの潔癖症的なキャラクターもしっかり表現し、まるでDFDのために書き下ろされた役かのよう。他は旧東独の名手ローレンツや、DFDの高弟シュミットと、いずれもドイツ・リートの使徒たちだ。なおここで次項のヘルマンについて一言。フリック、ゾーティン、モルといったおなじみのバスに混じって、アダムを挙げたが、ここで、バス歌手としてのアダムを再評価いただきたい。《ローエングリン》のハインリヒ王や《マイスタージンガー》のポーグナー(ザックスではなく)といった純粋なバスの役でも十分な低音を響かせ、音域と芸域の幅広さに脱帽する。
領主ヘルマン(Bs)
■シノーポリ=バイロイト祝祭o(1989,Philips)ハンス・ゾーティン
●ゲルデス=ベルリン・ドイツ・オペラo(1968-69,DG)テオ・アダム
●コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,Warner)ゴットロープ・フリック
▲ハイティンク=バイエルン放送so(1985,EMI)クルト・モル
歌劇《さまよえるオランダ人》(1842)
オランダ人(Br)
■カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Decca)ヘルマン・ウーデ
●ドラティ=ヴェント・ガーデン王立歌劇場o(1960,Decca)ジョージ・ロンドン
●ドホナーニ=ウィーンpo(1991,Decca)ロバート・ヘイル
▲カラヤン=ベルリンpo(1981-83,EMI)ジョゼ・ファン・ダム
オランダ人には「ヘルデン(英雄)バリトン」という呼び名があるが、物語的には二枚目の「ヒーロー(英雄)」ではないし、呪われて世界をさまよう運命にあるのだから悪役、というわけでもない。そのあたりのコンプレキシティがワーグナーらしいといえばらしい。そうなると《神々の黄昏》グンターや《ローエングリン》テルラムントなどの屈折した役を十八番としたウーデがオランダ人役でも独擅場だ。あえてもう一人選ぶとしたら、ロンドンで、この二人の強烈なオランダ人を一度聴いてしまったら最後、他は生ぬるくて聴けなくなってしまう。20世紀の後半に至って、かろうじてファン・ダムとヘイルの二人が、時代と共にかなりスマートになったとはいえ、全然別ヴェクトルの役作りで独自のオランダ人を創造した。
ゼンタ(S)
■サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1961,Philips)アニヤ・シリヤ
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Decca)アストリッド・ヴァルナイ
●サヴァリッシュ=バイエルン国立歌劇場o(1975映像,DG)カタリーナ・リゲンツァ
▲ショルティ=シカゴso(1976,Decca)ジャニス・マーティン
ドラマティックである上に原譜では(一部)超高音が要求されるので、ある意味ワーグナーが書いた最初にして最難関の役かも。そのアリア(バラード)を余裕で原調通り歌ってセンセーションを呼んだのがシリヤ。一方ブリュンヒルデ役で鳴らしたヴァルナイは必ずしも高音を売りにしているわけではないが、さすがの貫禄で聴かせる。リゲンツァとマーティンは当役の代表というわけではないが、両者とも録音が稀少なのでゼンタを録れてくれたことに感謝。なお本稿の最後に挙げる「マリー」はゼンタの乳母役で、ゼンタに合の手を入れる程度の地味な役だが、フリッカ役でも有名なブルマイスターや、マリー役でいくつもの録音に参加しているヴァーグナーなど、ドイツ系メゾの名歌手が並ぶ。
ダーラント(Bs)
■クレンペラー=フィルハーモニアo(1968,Warner)マルティ・タルヴェラ
●サヴァリッシュ=バイロイト祝祭o(1961,Philips)ヨーゼフ・グラインドル
●ベーム=バイロイト祝祭o(1971,DG)カール・リッダーブッシュ
▲ライナー=メトロポリタン歌劇場o(1950,Naxos)スヴェン・ニルソンル
グルネマンツ、ハーゲン、フンディング、ポーグナー、マルケ、ハインリヒ、ヘルマンと、ここまでに登場した多くのバスの諸役は、当然ことながら一つとして類型的なものはなく、ダーラントも独特の味がある。荒波を乗り越えてきた船乗りのちょっと粗野な面と、バリトンのオランダ人との二重唱で明らかになる少々ユーモラスな面が、タルヴェラ、グラインドルといった名手たちによって歌いだされていく。ここでは番外に本稿初登場のニルソンを挙げたが、本当にドイツ・オペラのバスは層が厚い。
エーリック(T)
■サヴァリッシュ=バイエルン国立歌劇場o(1991映像,EMI)ペーター・ザイフェルト
●ネルソン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)ロベルト・シュンク
●クレンペラー=フィルハーモニアo(1968,Warner)エルンスト・コツープ
▲コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,EMI)ルドルフ・ショック
《さまよえるオランダ人》ではテノールはまだ前面には出てくることなく、エーリックはヒーローではなくいわば「振られ役」で、歴戦のヘルデンテノールが歌うとちょっとカッコ良すぎる。その割りにアリアが超難曲で、二戦級のテノールでは破綻してしまう。その点ショックやコツープ、そして時代くだってザイフェルト、シュンクはいずれも抜群の歌の巧さ。なお、もう一つのテノール役「舵取り」(次項)は開幕早々ソロの聴きどころが用意されており、レコードではヴンダーリヒやヘフリガー、ハイルマンまで歴代モーツァルト・テノールが登場し美声を披露している。
舵取り(T)
■コンヴィチュニー=ベルリン国立歌劇場o(1960,EMI)フリッツ・ヴンダーリヒ
●ドホナーニ=ウィーンpo(1991,Decca)ウーヴェ・ハイルマン
●フリッチャイ=RIASso(1952,DG)エルンスト・ヘフリガー
▲ネルソン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)グレアム・クラーク
マリー(Ms)
■フリッチャイ=ベルリンRIASso(1952,DG)ジークリンデ・ヴァーグナー
●クレンペラー=フィルハーモニアo(1968,Warner)アンネリース・ブルマイスター
●カイルベルト=バイロイト祝祭o(1955,Decca)エリーザベト・シェルテル
▲ネルソン=バイロイト祝祭o(1985,Philips)アニー・シュレム
