新世代の本格派ギタリスト山下愛陽
「夜の静寂」の世界に誘なうコンセプト・アルバム

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ディスク情報

夜想の旅
〔ダウランド:涙のパヴァーヌ,ソル:奇想曲《静けさ》,レゴンディ:夢の夜想曲,ルドネフ:古い菩提樹,バリオス:すべての祈り,マルタン:4つの小品,ブリテン:ダウランド《来たれ、深き眠りよ》によるリフレクション,ハウグ:暁〕

山下愛陽かなひ(g)
〈録音:2025年12月〉
[note one(D)NO26006]

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文=東端 哲也(ライター)

400年の時をまたぐ「音旅」。その裏テーマを読み解いていく愉しみも

1997年長崎生まれ。ドイツで研鑽を積み、ベルリンを拠点に欧州各国をはじめメキシコ、中国、オーストラリアなどの著名な音楽祭にソリストとして招かれ、すでに国際的にも高い評価を得ているクラシック・ギタリストのnote oneデビュー盤(輸入盤・日本語解説付き)。定番曲の名演は元より《展覧会の絵》《火の鳥》などのオーケストラ曲やバッハの無伴奏曲の鮮烈なソロ用編曲で知られる不世出のギタリスト山下和仁(1961~2026)を父に、作曲家の藤家溪子を母に持つ彼女は、幼少より「山下和仁ファミリークインテット」の一員として、また父とのデュオでも諸国で公演を重ね、13歳でイタリアはトリノにてソロ・デビューを果たしている逸材。

本盤はイタリア人作曲家カルロ・ドメニコーニ(1947~ )のギター作品集(2021年録音)に続くソロ作で、16世紀から20世紀まで大きく時代をまたぎ “夜の静寂” を題材とした作品ばかりを集めたコンセプト・アルバムである。

旅路の始まりはエリザベス1世の時代を代表するリュート作曲家ジョン・ダウランド(1563~1626)の小品から。とりわけ、後に最も有名な作品のひとつ《流れよ、我が涙》へと発展する旋律が印象的な《涙のパヴァーヌ》[トラック02]に心を掴まれる。なお、先にタネ明かしをすると、ダウランドはアルバム後半に収録された、同じ英国のベンジャミン・ブリテン(1913~1976)による独奏曲に引用される形で再登場し、聴き手を夜の深い闇のさらに奥深くへと誘なうので、ここではその “先触れ” の役割も務めている。

さて旅はスペイン古典派のフェルナンド・ソル(1778~1839)の軽やかな《奇想曲 静けさ》[03]、ロマンティシズム溢れるジュリオ・レゴンディ(1823~1872)の《夢の夜想曲》[04]を経て一気に現代へ。古いロシア民謡を基にしたセルゲイ・ルドネフ(1955~ )の変奏曲《古い菩提樹》[05]は詩情あふれる作風とともに、奏者のテクニックに委ねられた表現手法でも聴かせる。続いてお馴染み、南米を代表する初期のギター巨匠アグスティン・バリオス(1885~1944)の短い佳曲《すべての祈り》[06]を挟んで届けられる、20世紀スイスの作曲家フランク・マルタン(1890~1974)初のソロ・ギター曲《ギターのための4つの小品》[07~10]では夜の静けさの裏側にある、怪しさや不穏な空気までもが映し出されるよう。

そしてお待ちかね、ブリテンの大曲《ダウランドによるノクターナル「来たれ、深き眠りよ」によるリフレクション》[11~18]では、表題にあるダウランドの美しい歌曲が主題としてなかなか現れず、視点を変えるようにして断片的に紡がれていくという、魅惑の “仕掛け” を堪能してほしい。ラストを飾るのはオペラや劇音楽の作曲家としても知られるスイス人ハンス・ハウグ(1900~1967)が1953年頃に書いた、夜明けの光を思わせる《暁》[19]。実に見事な構成で全編が貫かれており、ギター愛好家だけでなく幅広く音楽ファンにお薦めしたい一枚だ。


協力:東京エムプラス

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