
「戦後日本を代表する交響曲」をつくった録音芸術たち
特別企画シリーズ「伊福部昭と芥川也寸志」! 2026年に没後20年を迎える伊福部と、2025年に生誕100年が話題となった芥川。アニヴァーサリー・イヤーが交錯するいま、日本を代表する2人の音楽家を深めます。
今回の記事では、山野雄大さんのガイドで伊福部昭の代表作、《シンフォニア・タプカーラ》の主要な録音12点を、それぞれの特徴・聴きどころを追いながら比較&紹介! この「戦後日本を代表する交響曲」の輝きを訴え、高めてきた、さまざまなディスクが登場します。その嚆矢となったのは伊福部の愛弟子の1人、芥川也寸志と、彼が結成した新交響楽団による改訂版初演録音でした。
Text=山野雄大(ライター/音楽・舞踊)
遅れて来た栄誉
伊福部昭(1914~2006)が、北海道での幼年期を身近に過ごしたアイヌ民族への共感をもとに書き上げたという《シンフォニア・タプカーラ》(1955/1979改訂)は、長い歳月をかけて「戦後日本を代表する交響曲」という栄誉を磨かれてきた作品、ではないかと思う。
もちろんその位置には、たとえば同時代に書かれた、フランス留学から帰国したばかりの矢代秋雄による《交響曲》(1958)や、実演も繰り返されて人気高い吉松隆の交響曲群を置くこともできるだろうし、逆に、そこに何を置いても反論は飛んでくることだろう。
実際、先に挙げた(伊福部とは師弟関係にもあたる)矢代秋雄の〈交響曲〉が早くから傑作の誉れも高かったのに比して、《シンフォニア・タプカーラ》の位置づけは(実演を聴いた聴衆の反応は別として)長らく不当な低さに置かれていた。——前者がアカデミックな評価にもはまりやすかった(のはさておき、傑作に違いない)のに対して、なにしろ伊福部昭の音楽は、戦後の前衛華やかなりしクラシック系作曲界には冷遇されてきた。
それをはねのけるように……あるいは、重い扉をこじ開けるように、数々の録音が重ねられ、《シンフォニア・タプカーラ》の、そして伊福部昭の音楽の凄味を広く伝えてきた。そのなかから、主要な盤をご紹介してみよう。
改訂版初演ライヴ盤——迸る愛と昂揚の名演
世界初演は1955年1月、ファビエン・セヴィツキー指揮のインディアナポリス交響楽団。翌1956年3月に上田仁指揮の東京交響楽団によって日本初演がおこなわれているが、現在おこなわれている演奏は、第1楽章に悠然たる序奏を付加するなど若干の修正をくわえた1979年改訂版によるもの(日本作曲家協議会から刊行されているスコアも改訂版に拠る)。
この改訂版の初演録音が、再発売も重ねてこの曲の受容のベースともなってきた。伊福部昭の愛弟子でもあった芥川也寸志が、自ら手塩にかけて育てた名門アマチュア・オーケストラ、新交響楽団を指揮した演奏だ。同団が力を入れて多数CD化もされた演奏会シリーズのひとつ、「日本の交響作品展4 伊福部昭」でのライヴ録音となる【ディスク1】。
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