

▲①ヨナス・カウフマン(T)の《パルジファル》全曲CD4枚組;フィリップ・ジョルダン指揮ウィーン国立歌劇場〈2021.4(L)〉[ソニー・クラシカル(D)SICC2244],②クラウス・フローリアン・フォークト(T)の《トリスタンとイゾルデ》全曲BD;マレッリ演出,ティーレマン指揮ドレスデン国立歌劇場〈2024.1(L)〉[C Major(D)770804]
《ニーベルングの指環》初演150年&バイロイト祝祭150年記念特別企画 “ワーグナー集中講座” の第2弾は、前回の「ワーグナー・ヒロイン」に続いて「ヘルデン(英雄)テノール」をクローズアップ。長年バイロイト祝祭で生の舞台に接してきた広瀬大介氏に、常にワーグナー上演の核となってきたワーグナー・テノールの、おもに21世紀に入ってからの状況を追っていただいた。
文・ディスク選=広瀬 大介(音楽学)
新世代の歌手は、常に批判の的となる(?)
いま、声楽家の世界にも次々と新しい才能がデビューし、その全員を(とくに実際の声を聴くために)追いかけることが物理的に不可能なレヴェルに達している。筆者が重点的に聴いているドイツ・オペラでさえ、うかうかすると現在の流行に置いてけぼりをくらいかねない。これほどまでにそのサイクルが早まったことがあっただろうか。
新しい世代の注目株が生まれ、多くの人の耳目を惹くと、その歌唱が過去の大歌手と比較されてしまうのは致し方ないところだろう。古くは20世紀後半、ヘルデンテノールの世界に限ってみても、かつて一世を風靡したヴォルフガング・ヴィントガッセン(③)やルネ・コロ(④)でさえ、それ以前のヘルデンテノールの伝統からは外れた歌唱として非難の対象になっていたのだから。
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