
ピエール・ブーレーズ(1925~2016)生誕100年を迎える今年2025年。レコード芸術ONLINEでは、あらためてその音楽にふれるためのガイドを作るべく、この稀代の指揮者&作曲家の関連企画を展開しています。
今回は、鈴木淳史さんによる「ほんとうは教えたくない、指揮者ブーレーズ10選」。知られざる魅力のつまったディスクが10点登場。ブーレーズ入門&再入門にうってつけのディスクガイドです♪
Select & Text=鈴木淳史(音楽エッセイスト)
ブーレーズ「裏」名盤ガイド!
指揮者ブーレーズといえば、やはりフランスの近代音楽、加えて、泣く子も黙らせる新ウィーン楽派以降の20世紀音楽のスペシャリストというイメージが強い。もちろん、マーラー指揮者として定評も高く、バイロイトに招かれてワーグナーの楽劇を振ったりと、レパートリーは意外と広範にわたる。そのなかには、彼にとってのメインストリームから離れたものもちらほら。なんでこの曲を演奏したのかと思案に導いたり、やはりこういうのがホントは好きなのねと思わせるものも。バロックのみならず、ロックにだって手を出したくらいだ。
そもそも、ブーレーズが指揮を始めたのは、自ら創設したドメーヌ・ミュジカルの演奏会で同時代の作品を紹介するためだった。その際、彼は中世やルネサンス、バロックの音楽もプログラムに乗せた。音楽史のなかで、現代音楽をどう位置づけるかをコンサートを通して表明しようとしたのだ。レパートリーが広いのは当然。ただ、好き嫌いは激しかった。
1990年以降は、レパートリーはさらに拡大した。ブルックナーやリヒャルト・シュトラウスといった、前衛の闘士だったブーレーズがハナからバカにしてそうな作曲家の作品まで。「これまでよく知らなかったんだけど、やってみろと言われて振ってみたら、案外いいもんだよ」といった軽すぎるノリで。当時まだ若かったわたしなどは、テメー変節しやがってなどと毒づいたりしたものの、そんな柔軟なスタンスが反映された演奏が今ではことごとく尊い。
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