
文=寺西 肇 (音楽ジャーナリスト)
異彩を放つレーベルを貫く、3つの軸
古楽ファンにとって、要注目のレーベルが始動した。オランダの「Glaux Records(グラウクス・レコーズ)」。ピリオド楽器アンサンブル「スティーレ・ガランテ」を率いる、指揮者で音楽学者のステーファノ・アレージと、同アンサンブルのメンバーで、オランダ・バッハ協会やコンチェルト・ケルンなどでも活躍する鍵盤奏者のアンドレア・フリッジが創設した。これまでに5タイトルを発表。いずれも演奏の質の高さはもちろん、視点の斬新さや、時にヘヴィメタルともクロスオーバーする自在さで異彩を放つ。そして、新たに発表されたのが、佐藤俊介をフィーチャーしてのブラームスの《ヴァイオリン協奏曲》と、《交響曲第4番》。19世紀のピリオド楽器を用い、当時の演奏習慣を徹底的に掘り下げた、ぜひご体感いただきたい一枚だ。
特に18世紀イタリアの埋もれた声楽作品の蘇演に力を注ぐアレージは、アーティスティック・ディレクターとして、学術的な面を監修。一方のフリッジは、テクニカル・ディレクターとして、理想の音質を追究している。レーベル名は、古代ギリシャの女神アテーナーの使いとされるフクロウ=glauxに由来。この言葉はまた、明晰さや学識、洞察力の象徴である女神の輝く瞳の色彩をも意味する。「我々にとって、この名は、思慮深く、注意深く、常に知識と対話を重ねるという音楽へのアプローチの在り方を反映している」。録音のラインナップは、
・未知の楽曲に光を当てると同時に、有名曲を洗練された解釈で提示する
・数世紀にわたる、鍵盤作品の豊かさを探求する
・芸術音楽が民俗の伝統と交わり、予期せぬ美しさを生み出した瞬間に目を向ける
という3つの軸に沿って展開されている。
Glaux Records
2026年9月までのラインナップ
※『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲,交響曲第4番』[GL006S]を除く5点はいずれも海外盤CD
※また今後は、ラモローサ・カッチャによる「カベソン作品集」とジャンルカ・カシオーリによる「ベートーヴェン作品集」が2026年11月に日本でも発売予定である
♪「Glaux Records」公式ページ(英語)
♪東京エムプラスの「Glaux Records」紹介ページ(日本語)






最新盤は、“必然”に満ちたブラームス!

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲*,交響曲第4番
佐藤俊介*(vn)ヨハネス・レールタウヴェル指揮ニュー・フィルハーモニー・ユトレヒト
〈録音:2022年9月〉
[グラウクス・レコーズ(D)GL006S]
※2026年9月15日頃より発売中
【公式商品ページはこちら】
そして、このほどリリースされたのが、オランダの指揮者で、研究者でもあるヨハネス・レールタウヴェルと、ニュー・フィルハーモニー・ユトレヒトによる「ピリオド楽器によるブラームス管弦楽作品全集」の第1弾。特にブラームスに関して、作曲者が生きた19世紀の演奏慣習に関する研究に力を注いできたレールタウヴェルにとって、その結果を「実践」の形で世に問う機会でもある。ピュア・ガットとレア・ヴィブラートから生まれる、弦楽器群の清澄な響き。輝かし過ぎない19世紀の金管楽器群。そして、まろやかな木管楽器の音色……。さらに、盛期ロマン派に特有の上品なポルタメント(《交響曲第4番》冒頭の浮遊感たるや、衝撃的ですらある)と自然なテンポ・ルバート、細やかなアーティキュレーション……その全てが融和して、えもいわれぬ滋味を創出し、「ピリオド楽器・奏法で演る」ことの“必然”を強く印象づける。協奏曲のソリストに、キャリアの最初期から「19世紀のピリオド奏法によるブラームス演奏」を目標のひとつに掲げていた佐藤を迎えたのも、また然り。しなやかな快演は「有名曲を洗練された解釈で提示する」とのレーベルの主要コンセプトのひとつを、見事に体現している。
協力:東京エムプラス
■関連コンサート情報
神戸市室内管弦楽団 Selection Vol.9
「ヴィヴァルディ《四季》」
2026年9月26日(土)15:00開演 神戸朝日ホール(兵庫)【詳細はこちら】※完売
曲目:
ルベル:バレエ音楽《四大元素》
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》
※休憩なし
出演:
佐藤俊介(vn・指揮)神戸市室内管弦楽団
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第504回定期公演マイスター・シリーズ
モーツァルトから影響を受けた二人の音楽家が見た世界
2026年10月3日(土)14:00開演 石川県立音楽堂 コンサートホール(石川)【詳細はこちら】
曲目:
モーツァルト:セレナード第11番 変ホ長調 K.375~第1楽章
シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D485
サリエリ:4人のためのフーガ風スケルツォ第2番 ハ長調
モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550
出演:
佐藤俊介(vn・指揮)オーケストラ・アンサンブル金沢

