【新連載】クラシック・レコードレーベルと演奏家・録音の100年

第1回 LPによるレーベル拡大期(1950~60 年代)
その1

クラシックレーベルの100年連載
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これから、「クラシック・ レコードレーベルと演奏家・録音の100年」と題した連載をさせていただくことになった。
 エジソンによるレコード発明から、来年2027年で150年。そのうち、電気録音が実用化された1925年からの100年間をメインとして、クラシックのレコードレーベルと、そこで活躍した主要な指揮者や演奏家の話を、時代を追って書いていこうというものである。
 この連載では、まずは多くの読者が興味をもつであろうLP登場から始めて年代を追い、それ以前のSP時代については、いずれ折りを見て立ち戻る、という進行とする。
 堅苦しくない読み物、物語として、楽しんでいただける内容にするつもりである。長くおつきあいいただけることを、心より願う。(山崎浩太郎)

LPの誕生まで

 1948年6月21日、アメリカのメジャー・レーベルの一つ、米コロンビア・レコード(現在のソニー・ミュージックエンタテインメント)が、LPレコード(Long Play Record)の公式発表会をニューヨークのウォルドーフ・アストリア・ホテルで行った。
 それまでのレコードが、直径12インチ(約30センチ)の盤の片面の再生時間が最長でも約4分半だったのに、このLPは22分半も再生できることが最大の利点だった。その登場により、従来のレコードはSP(Standard Play Record)とか、回転数から78回転盤などと呼ばれることになる。発表会では、325曲を収めたSPを積んだ高さが8フィート(約2メートル40センチ)にもなるのに、LPでは15インチ(約37.5センチ)と、6分の1以下ですむことが誇示された。

『Long Playing Microgroove Record』プロモーション広告
LPの産みの親の一人であるピーター・ゴールドマーク(画像はAIによるイメージ)

 長時間再生のディスクの発売は、実はこれが初めてではない。エジソンが蓄音機を発明した1877年からの約70年間のあいだには、いくつかの試みが存在した。1分間に78回転というディスクの標準的な回転数を33⅓回転にまで速度を下げる、あるいは盤面に刻まれた音溝の幅を約⅓に細くする、どちらかを選んだり両方を組み合わせたりすることで、長時間化を実現しようとしたのである。
 しかし、事業として成功したものは一つもなかった。たとえば、1905年からイギリスのネオフォン社は、片面10分再生できる直径20インチ(約51センチ)の大型盤や、片面12分間再生可能な10インチ(約25センチ)の細溝盤を発売したが、負債がかさんだためにレーベルそのものがわずか数年で清算された。また1926年にエジソン社は音溝を細くした片面20分のディスクを世に出したが、ノイズがひどいために不評に終わった。
 このなかで最も大がかりだったのは、1931年にアメリカのレコード会社の雄、RCAビクターが発売した、回転数を33⅓に下げ、溝の幅も約⅓に細くした、片面14分の長時間レコードである。SPの原材料として用いられてきた天然樹脂のシェラックはノイズと音の歪みが多く、そのままでは音質低下が避けられないため、ヴィトロラックと称するポリ塩化ビニル(PVC、塩ビ)を素材にしたディスクを新たに用いていた。ところが、この素材は軟らかいために当時の蓄音機のピックアップの重量に耐えられず、すぐに磨耗してしまうという致命的な欠陥があった。さらには時代も悪かった。世界大恐慌による大不況のさなかであり、消費者の関心はラジオに向いていて、新たな回転速度に対応する高価な蓄音機を買おうとはしなかったのだ。RCAビクター社長のエドワード・ウォーラースタインが撤退を決定したのは、わずか2年後の1933年だった。

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