
6月3日に長嶋茂雄読売巨人軍終身名誉監督が逝去、その後様々な追悼番組があったが、その中で、ちょっと引かれた企画が一つ。街頭インタビュー的なコーナーで、氏の有名な引退試合(1974年10月14日)の話になり「当然、引退試合のスタメンは暗唱できますよ。
1番センター柴田
2番レフト高田
3番ファースト王
4番サード長嶋
5番ライト末次
6番ショート黒江
7番セカンド土井
8番キャッチャー森
9番ピッチャー高橋善正!」と得意げに語る。
巨人ファンならそんなの当たり前、と言われそうだが、ん?コレって何かに似ている。そう、オペラの熱狂的なファン、レコード蒐集の “オペラ馬鹿” 好事家たちの言葉――「愛聴盤のキャストは当然すべて暗記している」。例えばカラヤンの《ばらの騎士》(長嶋流に言うと「永久に不滅の名盤」ですね)なら
1番オクタヴィアン:クリスタ・ルートヴィヒ
2番マルシャリン:エリーザベト・シュヴァルツコップ
3番ゾフィー:テレサ・シュティヒ=ランダル
4番オックス:オットー・エーデルマン
5番ファーニナル:エーバーハルト・ヴェヒター
6番テノール歌手:ニコライ・ゲッダ(!)
7番ヴァルツァッキ:パウル・クーエン
8番アンニーナ:ケルスティン・マイヤー
9番 警部:フランツ・ビールバッハ
私は名古屋出身で、長嶋引退試合の時は相手チーム側だったので、巨人のスタメンより中日、1番セカンド高木守道、2番サード島谷、3番レフト井上…となるが(10月14日は別メンバー)その後が出てこない。ただし(ちょっと地味め?の)ドラゴンズ贔屓のわが愛聴盤、エーリヒ・クライバー指揮の《ばらの騎士》のキャストは全部暗記している。
1番セーナ・ユリナッチ
2番マリア・ライニング
3番ヒルデ・ギューデン
4番ルートヴィヒ・ヴェーバー
5番アルフレート・ペル
6番アントン・デルモータ
7番ペーター・クライン
8番ヒルデ・レッスル=マイダン
9番ヴァルター・ベリー(!)
ついでに、今ならCS(クライマックスシリーズ)進出権のある第3位も、ということで、カール・ベーム指揮ドレスデン国立歌劇場の《ばらの騎士》。コレも要暗記の超銘盤ですネ。
1番イルムガルト・ゼーフリート
2番マリアンネ・シェヒ
3番リタ・シュトライヒ
4番クルト・ベーメ
5番ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(!)
6番ルドルフ・フランツル
7番ゲルハルト・ウンガー
8番ジークリンデ・ヴァーグナー
9番アルブレヒト・ペーター
50年以上前の長嶋の引退試合のスタメンなんて、世代的に無縁の人、あるいはそもそもプロ野球に興味がない人にとっては、なんのこっちゃ?という話だろうが、ファンにとっては宝物のような記憶。同様に60年以上も前の《ばらの騎士》のレコードなんて、今さら?という人も多いかも知れないが、自分にとっては何物にも代え難い。


本文冒頭のメイン写真は、1956年録音カラヤン指揮フィルハーモニア管による《ばらの騎士》[Warner]。上左は1955年クライバー指揮ウィーン・フィル《ばらの騎士》[Decca]、右は1958年ベーム指揮ドレスデン国立管《ばらの騎士》[DG]
文=編集部(Y.F.)