音楽評論家・舩木篤也氏の連載「プレルーディウム」。
プレルーディウム(Präludium)は、ドイツ語で「前奏曲」の意味。毎回あるディスク(音源)を端緒として、ときに音楽の枠を超えて自由に思索を巡らせる、毎月1日更新の注目連載です。
第13回の舞台は瀬戸内の直島。庄司紗矢香が芸術監督を務めた「ナオシマ・シネステジア・フェスティヴァル」から、論が展開されていきます。

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第25番,同第34番,同第40番
庄司紗矢香(vn)ジャンルカ・カシオーリ(fp)
〈録音:2023年12月〉
[アルカナ(D)NYCX10507]
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「生ぬるさは一切存在しえません」
瀬戸内海に浮かぶ香川県の島、直島。安藤忠雄建築など現代芸術作品が点在し、ここが「アートの島」と称されているのは、よく知られているだろう。ずっと気になっていながら、これまで行ったことがなかったのだが、去る9月に初訪問が叶った。庄司紗矢香が芸術監督を務める「ナオシマ・シネステジア・フェスティヴァル」に参加したのだ。2011年2月、フランスはナントで接したライヴでノックアウトされて以来、常に注目してきたヴァイオリニストである。そんな彼女が、東京でも大阪でもない、直島でしか催さないフェスであり、「なぜここで?」と、興味を抱かずにはいられない。

ナオシマ・シネステジア・フェスティヴァル
2025年9月23日(火・祝)15:00開演 ※終了
直島ホール
新ダヴィッド同盟〔庄司紗矢香(vn,芸術監督),磯村和英(va),北村陽(vc)〕,勅使川原三郎,佐東利穂子(以上ダンス)
今回が2回目で、第1回は2023年に開催。平田オリザ(作・演出)の演劇とのコラボレーションだった。
シネステジア(Synesthesia)とは、「共感覚」の意。共感覚というと、とかく「音を聴くと色が見える」といった話になりがちだが、庄司の意図は、音楽を、演劇、絵画、舞踊といった他ジャンルと交わらせた形でパフォームする点にある。その交差において、演者が、観客が、なにを感じ、なにを考えるか。その未知なる可能性に挑んでみたい、ということだろう。今回交差するのは、ダンス・パフォーマンスである。
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