レコ芸アーカイブ

特捜プロジェクト・アニバーサリー作曲家2005
② マーク・ブリッツスタイン(生誕100年)
[2005年2月号掲載]

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文・満津岡信育(まつおか・のぶやす)

1959年東京都杉並区生まれ。音楽評論家。コピーライターを経て、40歳を目前にして名刺に音楽ライターと刷り込んで以来、音楽誌やCDのライナー・ノーツの執筆を中心に活動中。内外の音楽家へのインタビューも数多く手がけている。旧『レコード芸術』誌では、新譜月評で交響曲を担当。著書に『ON BOOKS advance もっときわめる! 1曲1冊シリーズ ② ストラヴィンスキー:《春の祭典》』(音楽之友社)がある。2016年からNHK-FMの『名演奏ライブラリー』で案内役を務めている。

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Marc Blitzstein
1905〜64

今月号で取り上げる作曲家は、今年が生誕l00年のアニヴァーサリー・イヤーにあたるマーク・ブリッツスタインである。彼の場合、バーンスタインの評伝等に、必ず姿を見せるものの、こと日本ではその作曲作品が親しまれているとはお世辞にも書けないと思う。しかも、同性愛者であったブリッツスタインは、64年の冬に避寒のために訪れていたマルティニック島のフォール・ド・フランスのバーで3人の船乗りと痛飲し、その内のひとりを誘って路地裏ヘ連れ込んだ際に、残りのふたりも付いてきてしまい、よってたかって殴打され、400ドル入りの財布と身ぐるみを剥がれ、その際に受けた挫傷の内出血により亡くなってしまったのである。社会正義をテーマにした劇場作品を数多く残し、一時期はアメリカ共産党に人党していた人物の死に方としては、いかがなものか、という思いを抱くのは筆者だけではないだろう。ブリッツスタインには、モダニスト、コミュニスト、反ナチの愛国者、劇楊人など、さまざまな顔があり、どこに重きを置くかによって、その評価に大きな偏りが出てしまう点も、彼の立ち位置を微妙にしているのである。なにはともあれ、まずは彼の生涯を簡単に紹介することにしたい。

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