
このコーナーでは編集部が、資料室に眠る旧『レコード芸術』の複数の記事を、あるテーマをもとに集めて、ご紹介していきます。
テーマは「レコード芸術が旅をした」。東京をねじろとする『レコード芸術』ですが、誌面で展開されたまなざしは、東京近辺に完結するものでは決してありませんでした。
1967年に、4回にわたって掲載された、若林駿介さんの『欧米の音と生活』の第1弾「ドイツ・グラモフォンを訪ねて」(1967年9月号)をお届けします。本邦を代表する録音エンジニアとして活躍し、オーディオ評論家の顔も持っていた若林さんは、海外通でもあり、欧米諸国を繰り返し訪れ、そのレポートを『レコード芸術』に寄せることもありました。
タイトル通り、生活面にも着目した若林さんの文章・写真からは、その土地に生きる人々の「音・音楽」観が浮かび上がります。
※記事中の写真は、若林駿介氏の撮影によるものです。
ヨーロッパ・アメリカへ向って日本を発つのを前にして、ある熱烈なるレコード・ファンに
「内外を通じて最も盤質の良いレコードはどのレーベルでしょうかネ?」
と聞いてみた。この質問に対して彼は即座に「もちろん、アルヒーフなどを含むドイツ・グラモフォンの輸入盤です」と答えた。
私も内外を問わず、あらゆるレーベルのレコードを毎月数多く聞いているつもりであるが、この解答には全く異議なく、機械的の歪の少ない、また雑音の少ないレーベルといえば、ドイツでプレスしたドイツ・グラモフォン盤を何の抵抗もなく第一にあげる。

①ベルリンのUfaスタジオ(ウーファー・スタジオとよむ)におけるアマデウス弦楽四重奏団の録音
このスタジオは映画で有名なUfa社の撮影所の一角にある貸スタジオ。貸スタジオといってもその容積は7000立方米という巨大なもの。非常に残響が多くあたかも教会堂のようなイメージである。近所に飛行場があるが、外からの遮音も完璧である。ミキサーはハンス・ベーター・シュヴァイクマン。


②Utaスタジオの録音室
スピーカーの中央に調整卓があり、ミキサーが座る。スピーカーはアメリカ・アルテック社の605Eを自社製のキャビネットに入れたもの。マイクから録音機までの全系統はノイマン製のいわゆる自国のものであるが、スピーカー・システムにアメリカ製のものを使っている所など興味深い。
③ハンブルグの軽音楽用のスタジオ
調整卓はノイマン製のもので、ベルリンのUfa スタジオと同じものであるが、エコー設備とかリミッターとか、特殊録音機器が駆使できるよう設計されている。共通していえることは、調整室が非常に広いということ。
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