時計が雲になる
なんのために生まれて なにをして生きるのか
「アンパンマンのマーチ」
連日、次から次へと仕事が土砂のように降ってくる。しかし「忙しい」とは口が裂けてもいえない。何しろわたしの知人には、音楽史と思想史を横断しながらとてつもない量の仕事をこなすK山M秀さんや、80歳を越えても常に日本中を飛び回っている(あちこちの地方を訪れているので、自らを「地方老人」と称しておられる)作曲家のI辺S一郎さんなど、超人たちが沢山いる。彼らのことを思えば、わたしの仕事量など、取るに足らない。それでも、たった一日のうちに授業1、雑務、会議1、授業2、原稿1、企画提出、ズーム会議、原稿2、会議2、視察といった具合で、朝から晩までミルフイユのように業務がいくつもの層をなして迫ってくると(エクセルで20分刻みのスケジュール表を1年先まで作ってある)、いったい、何のために生まれてきたのかと自らに問いたくなる時もある。自分のプロフィールには「趣味は自転車」と書いているのだが、ロングライドなどもう半年以上行ってない。これでは古代エジプトの奴隷と一緒ではないか……。
しかし、考えてみれば、今のところこの国には徴兵もなく、空から爆弾が降ってくるわけでもない。寒ければ暖房、暑ければ冷房が効いた環境下で、のうのうと仕事ができるというのは世界的・歴史的にみれば大変な幸せというべきなのだろう。朝ドラ『あんぱん』を見ていると、つくづくそれを思う。

NHK連続テレビ小説『あんぱん』
冒頭で突然にアンパンマンの歌などを引用したのは、毎朝欠かさず、NHKの朝ドラ『あんぱん』を観ているからである。アンパンマンの作者、やなせたかしとその妻の実話をもとにしたドラマ。このところは、ちょうど第二次大戦真っただ中にさしかかっている(もちろん実際のやなせたかしも戦争経験がある)。ともかく、主演の今田美桜が良い。
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