構成・文・CDセレクト=芳岡正樹
過去71年分の旧『レコード芸術』誌には、来日した名演奏家たちの多くの貴重な写真が眠っています。当連載では、今から半世紀前(=1974年)前後の日本のクラシック界の活況を、それらの写真を通して振り返っています。第3回は1967年、コンドラシン、オーマンディ、そしてフランソワ、スターンと錚々たる来日陣で、 “泣く泣く選外” 欄でもご紹介しきれないほどのラッシュでした。
1967年の音楽界の話題は米・ソの名門オーケストラ、フィラデルフィア管弦楽団とモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の初来日であった。4月にモスクワ・フィルが一足先に来日。招聘は当時ソ連アーティストの来日を一手に担っていた新芸術家協会(1981年倒産)だった。4月4日から20日まで東京6公演、大阪(宝塚)2公演、横浜、名古屋、広島、福岡を各1公演と計12公演行なった。指揮者はキリル・コンドラシン(1914~81)とダヴィド・オイストラフ(1908~74)、ソリストはオイストラフ親子。幸いにも東京での4公演分が会場の空気感も伝えるステレオ録音でNHKにより収録されており、ALTUSがCD化しているので、今日でもその「底知れぬほど線の太いハーモニー」(旧『レコード芸術』6月号)を追体験することができる。とくにコンドラシン指揮の《悲愴》は評判で、『レコード芸術』5月号の「ステージ評」で大木正興氏は野村光一氏との対談で「チャイコフスキーの音楽を感傷だと考えるのは、西欧人の考え方で(中略)ロシア人にいわせればあくまでロシアのものであって、ドイツ風な音楽でもなんでもない。それを感じさせたのはコンドラシンの功績だと思うのですね」と語っている。
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