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音楽評論家。ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会プログラム、各社ライナーノート等に執筆。著書に『究極のオーケストラ超名曲徹底解剖66』(共著、音楽之友社)など。
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ショスタコーヴィチ
ジダーノフ批判で

ボリス・チャイコフスキー(以下BT)に限ったことではないのだが、ミエチスワフ(モイセイ)・ヴァインベルク、ゲオルギー・スヴィリ―ドフといった、ショスタコーヴィチ以後の世代のソ連の作曲家たちに対しては、ソ連の内外で、長らく大きな評価の差が存在した。原因はいろいろあるが、―つには、無調から12音技法、そしてセリーヘという、西側でかつて信じられていた音楽史観から見ると、彼らは時代遅れに見えたためである。つまり、西側から見たソ連音楽史において、ショスタコーヴィチの後は、シュニトケ、グバイドゥーリナ、デニーソフらの、いわゆる前衛的な作曲家たちにいきなり飛んでいたのだ。しかし近年、そのような偏見が薄れるにつれ、彼らの評価は変わりつつある。中でも、2002年に設立された協会の尽力もあって、このところ急速にその名前を聞く機会が多くなったのが、今年没後10年を迎えるBTである。
BTは、1925年9月10日、モスクワに生まれた。父はベラルーシ国籍の教師で、母は婦人科医だった。二人ともプロの音楽家ではなかったが音楽好きで、父は独学ながらなかなかの腕前のアマチュア・ヴァイオリニストであり、また、ボリスに音楽の勉強を勧めたのは母だった。なお、《白鳥の湖》の大作曲家とは血縁関係はないが、作曲家でピアニストのアレクサンドル・チャイコフスキーは甥にあたる。
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