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音楽評論家、スペイン文化研究家。1935年東京生まれ。少年時代よりスペイン・中南米の文学、音楽に興味を抱いて研究、1960年ごろより翻訳、雑誌での執筆、レコード解説などの仕事に就く。おもな著書に『フラメンコの歴史』『エル・フォルクローレ』(以上晶文社)、『スペイン音楽のたのしみ』(音楽之友社)、『約束の地、アンダルシア』『南の音詩人たち』(アルテスパブリッシング)、『なんでかなの記』(言言句句)、訳書にカーノ著『フラメンコ・ギターの歴史』(パセオ)、スビラ著『スペイン音楽』(白水社文庫クセジュ)ほか。1990年より日本フラメンコ協会会長。1985年より清里スペイン音楽祭を総監督として責任開催。1984年第3回蘆原英了賞受賞。2021年3月没。
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モーツァルト生誕250年の賑わいがまださめやらぬうちに、「モーツァルト」の名を持った作曲家が登場するのは、ふさわしいかもしれない。もっとも彼は、そのことにべつだん関係なく、彼自身が今年生誕100年の「アニヴァーサリー作曲家」であるが故に、ここに登場するのだが。
そして実は、彼のファーストネームは、彼の国においては「モーツァルト」ならぬ「モザールト」と発音される。苗字のほかにもうひとつ名前を持っていて、モザールト・カマルゴ・グァルニエリ。彼の国ブラジルでは、エイトル・ヴィラ=ロボス、フランシスコ・ミニョーネ(ミジノーニ)と並べて、「20世紀ブラジル・クラシック音楽の3大作曲家」と呼ぶことが、しばしばある。ほかにもたとえば、クラシックのみならずサンバやショーロなどブラジル・ポピュラー音楽の畑、ジャズ畑にも広く活動し、多くのファンを惹きつけたラダメス・ニャタリ(ハダメス・ジナタリ)などもいて、「3大家」には異論の余地も生じようか。しかし、この日本をも含め、まだまだ認識不足と思われるヴィラ=ロボスに比べてすら、世界的にみて10分の1ほどの知名度しか持たないグァルニエリは、疑いもなく、卓越した技術を具え、霊感にもけっして欠けていない作曲家であった。これからこそ見直され、正当に評価されると共に、作品を収めたCDがぜひ多く紹介されてほしいと願われる作曲家の、彼は筆頭格にほかならないと私は思う。
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