構成・文・CDセレクト=芳岡正樹
過去71年分の旧『レコード芸術』誌には、来日した名演奏家たちの多くの貴重な写真が眠っています。当連載では、今から半世紀前(=1975年)以前の日本のクラシック界の活況を、それらの写真を通して振り返ってきました。今回は1974年の後半。1964/65年分から始まった当連載は、まる10年の旅の終着点に辿り着きまして、いったんの区切りとなります(次回は「オペラ特別篇」として、この時代の名歌手たちの名ショットをまとめてご紹介予定です)。






1974年後半も前半に引き続き暗いニュースが多かった。8月30日には三菱重工ビル爆破事件、9月1日には多摩川水害、11月26日には田中角栄首相が退陣表明。スポーツ界のヒーロー長嶋茂雄も10月14日に引退試合に臨み、夕闇迫る後楽園球場で「我が巨人軍は永久に不滅です」と名スピーチを行なった。環境破壊と核戦争の恐怖を描いた映画『ノストラダムスの大予言』も、当時9歳だった筆者も観に行ったほどの大ヒットで、日本は終末感に覆われていたように思う。しかし『レコード芸術』誌のグラビアを見ると、海外アーティストの来日公演は引き続き活況で、しかも初共演や初来日など顔ぶれに新鮮味があり、少なくともクラシック・ファンは音楽から安らぎを得られたのではないかと思う。
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