復刻!柴田南雄の名連載レコ芸アーカイブ
柴田南雄『新・レコードつれづれぐさ』 

第十二回(1984年6月号)フルトヴェングラー/交響曲第2番

柴田南雄の名連載『新・レコードつれづれぐさ』第12回は、フルトヴェングラーの自作自演が登場! さまざまな評価のある彼の交響曲第2番について、ナチと第2次世界大戦の時代を生きた巨匠の精神世界を辿る論考が展開されます。

※文中レコード番号・表記・事実関係などは連載当時のまま再録しています。

万に過ぎにしかたの恋しさのみぞ
せんかたなき

フルトヴェングラーに「作曲」のあることをわたくしがはじめて知ったのは、たぶん1937年10月のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期公演において、彼のピアノとオーケストラの《交響的協奏曲》がベルリン初演され、その批評が、日本の音楽雑誌にも紹介された時のことだった。その記事には「『ピアノのソロを弾いたエドヴィン・フィッシャーはこの複雑な大曲を暗譜で弾いてのけたが、彼の超人的暗譜力と絶大な努力は真に賞讃に値する』と批評文にあるのは、曲そのものが如何につまらないものだったかを読者に告げているのであって、つまりフルトヴェングラーの作品を公然と批判することは誰にもできないからだ」、との解説が加えられてあり、へえ、そんなものかなあ、と思ったのを憶えている。

しかしその曲も、その後の作品で代表作と言われている《第2交響曲》や二つの《ヴァイオリン・ソナタ》も、曲の存在は知っていても、これまでまったく耳にすることはなかった。だから今回、フランクフルトのヘッセン放送交響楽団(「ジンフォニッシェ・オルケスター・デス・ヘッシッシヤールントフンク」、現在はスマートな名称に変わり、「ラジオ・ジンフォニー・オルケスター、フランクフルト」)を作曲者自身が1952年12月16日に振った録音(チェトラ K19C363~4)が新譜で出るというので、早速、聴いてみることにした。ついでに、以前に出ていて、これまで聴くチャンスのなかった同じ曲の、1951年12月にベルリン・フィルを彼自身で振った録音(グラモフォン「フルトヴェングラーの遺産」7枚組、GM1071~72、1962年10月発売、廃盤)も借用、試聴して参考にすることができた。演奏に1時間20分を要する大曲である。

わたくしは、指揮者フルトヴェングラーをナマで聴く機会は残念ながらなかったし、彼のベートーヴェンやブラームスのレコードにも、格別の関心がある訳ではない。むろん、戦前の学生時代、SPレコードで《運命》や《悲愴》に熱中没頭した経験は人並みにもっているが、それは遠い昔のことだ。

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