最新盤レビュー

BOXセット注目盤(11月)

ここでは、最近発売されたBOXセットのなかから注目盤を厳選して紹介します。

大作が目白押し。ドホナーニ&クリーヴランド管のデッカ録音集成

『ドホナーニ&クリーヴランド コンプリートDECCAレコーディングス』は、1982年から2002年までクリーヴランド管弦楽団の音楽監督を務めたクリストフ・フォン・ドホナーニの95歳の誕生日を祝して発売されたCD40枚組のBOXセット。クリーヴランド管弦楽団を指揮してデッカに残した1984~1998年のレコーディングが集められている。レパートリーはモーツァルトからシューマン、ドヴォルザーク、ブルックナー、マーラーなどを中心としてヴァレーズ、アイヴズといったアメリカの現代作曲家まで網羅されている。ワーグナーの楽劇《ラインの黄金》《ワルキューレ》の全曲が収められているのも注目ポイントだ。

『ドホナーニ&クリーヴランド コンプリートDECCAレコーディングス』
〔モーツァルト:交響曲第35,36,38~41番,シューマン:交響曲第1~4番,ブルックナー:交響曲第3~9番,マーラー:交響曲第1,4,5,6,9番,ドヴォルザーク:交響曲第6~9番,ベルリオーズ:幻想交響曲,ワーグナー:楽劇《ラインの黄金》全曲,同《ワルキューレ》全曲,他〕


クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランドo,他〈録音:1984年~1998年〉
[Decca(S,D)4854683(40枚組:海外盤)]

一挙復活。『清水和音の芸術』

1981年、弱冠20歳でロン・ティボー国際音楽コンクール・ピアノ部門で第1位を獲得、センセーショナルなデビューを飾った清水和音。今回、デビュー直後から1990年代後半にかけてRCAとソニーミュージックで録音した“すべての音源”を収録したBOXが登場した。ショパンをメインにシューベルトや上村昇とのフランクのチェロ・ソナタなどを収めた『RCA YEARS』。ティルソン・トーマス/ロンドン響との共演によるチャイコフスキー、ラフマニノフ、リストの協奏曲、リストとラフマニノフのソナタ、《展覧会の絵》など清水のヴィルトゥオジティを存分に堪能できる『SONY MUSIC YEARS』。極めつけは90年代にすべてライヴで完成させた『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ全集』。最近でも三浦文彰とのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集[エイベックス]が話題となるなど、ますます旺盛な活動を繰り広げる清水和音の“原点”にして永遠の価値を持つ録音集成だ。

名匠サヴァリッシュ。ドイツ・オペラの真髄

半世紀以上にわたってオーケストラやオペラで活躍し2013年に没した指揮者、ヴォルフガング・サヴァリッシュ。彼のキャリアの中でも、生まれ故郷ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場では1971~1992年の21年間にわたって音楽監督を務めた。31枚組の『ヴォルフガング・サヴァリッシュ ワーナークラシックス・エディション~オペラ作品録音全集』はそのバイエルン国立歌劇場管弦楽団およびフィルハーモニア管弦楽団とともに旧EMIに残した14曲のオペラを収録。レパートリーは《ニーベルングの指環》全曲を含むワーグナー作品や、R.シュトラウス、オルフらドイツ人作曲家の作品が中心となっている。


『ヴォルフガング・サヴァリッシュ ワーナークラシックス・エディション~オペラ作品録音全集』
〔モーツァルト,ウェーバー,シューベルト、ワーグナー,R.シュトラウス,オルフのオペラ(全14作品)〕

ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場o,同cho,フィルハーモニアo,同cho,他
〈録音:1956年~1993年〉
[Warner Classics(M,S,D) 5419794946(31枚組:海外盤)]

復活! “アルゲリッチと仲間たち”

アルゲリッチとその仲間たちが出演してきたスイスのルガーノ音楽祭が2016年に終了したことを受け、ハンブルク交響楽団主催による「マルタ・アルゲリッチ音楽祭」が2018年にスタートした。2020年はコロナ禍により開催されなかったが、2021年に復活。『ランデヴー・ウィズ・マルタ・アルゲリッチ第3集』はそれをライヴ収録したものだ。息もぴったりなマイスキー(vc)やルノー・カピュソン (vn)らとの共演はもちろん、アルゲリッチと初共演となったムター(vn)と、マイスキー(vc)によるメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲や、同じく初共演のピリス(p)とのデュオによるモーツァルトの4手のためのピアノ・ソナタK.521なども要注目。また、2022年に亡くなったアンゲリッシュ(p)の最後となった公の場での演奏(ブラームス:ヴィオラ・ソナタ)も収められている。

『ランデヴー・ウィズ・マルタ・アルゲリッチ第3集』
〔全16曲〕

マルタ・アルゲリッチ,マリア・ジョアン・ピリス,ニコラ・アンゲリッシュ(以上p)ルノー・カピュソン,ギドン・クレーメル,諏訪内晶子(以上vn) ミッシャ・マイスキー(vc)他
〈録音:2021年6月21~30日(L)〉
[Avanti Classic(D)AVA10702(7枚組:海外盤)]

ウェストミンスター&米デッカに遺された名ピアニストの記録

『ピアノ・ライブラリー~ウェストミンスター&アメリカ・デッカ・エディション』は、1950年から1963年までにウェストミンスターおよびアメリカ・デッカ(ロンドン)でレコーディングされた、イェルク・デームス、レイモンド・レーヴェンタール、エゴン・ペトリら10人のピアニストたちの演奏を新たにマスタリングし、CD21枚組にまとめたもの。デームスのフォーレや、ファナルディによるゴドフスキー作品、レーヴェンタールのベートーヴェンやショパン、ニーナ・ミルキナによるC.P.E.バッハ、ギオマール・ノヴァエスによるドビュッシーやショパンなど、初CD化された音源も多く含まれている。

『ピアノ・ライブラリー~ウェストミンスター&アメリカ・デッカ・エディション』

イェルク・デームス、エディト・ファナルディ、クララ・ハスキル、ヨウウラ・ギュラー、レイモンド・レーヴェンタール、ニーナ・ミルキナ、ベンノ・モイセイヴィチ、ギオマール・ノヴァエス、エゴン・ペトリ、カルロ・ゼッキ(以上p)
〈録音:1950年~1963年〉
[DG(Eloquence)(M,S)4843829(21枚組:海外盤)]

没後20年。園田高弘の円熟のベートーヴェンを再聴

日本のピアノ界に大きな足跡を残した園田高弘(1928~2004)。没後20年を記念しベートーヴェン録音を集成したBOXが発売された。協奏曲全曲、ソナタ全曲、《ディアベリ変奏曲》など、すべて90年代の録音で音質も良好。加えて貴重なのは園田自身の書き下ろしによる90ページに及ぶ曲目解説。鑑賞の助けになるだけでなく、ピアノ学習者にとっても示唆に富んだ内容だ。

『園田高弘・ベートーヴェン大集成』

園田高弘(p)大山平一郎指揮 九州so,豊嶋泰嗣(vn)岩崎淑(vc)
〈録音:1993年~2000年〉
[キングインターナショナル(D)KKC8863~77(15枚組)]

Text:今泉晃一&編集部

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