プレルーディウム連載

【連載】プレルーディウム 第18回/舩木篤也

音楽評論家・舩木篤也氏の連載「プレルーディウム」。
プレルーディウム(Präludium)は、ドイツ語で「前奏曲」の意味。毎回あるディスク(音源)を巡って、ときに音楽の枠を超えて自由に思索する、毎月1日更新の注目連載です。
第18回は、NHK連続ドラマ小説『ばけばけ』の主要登場人物ヘブンのモデルとなった、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の音楽観を端緒に、ハーディ=ガーディ編曲版による、シューベルトの歌曲集《冬の旅》が登場します。

ディスク情報

シューベルト:歌曲集《冬の旅》(全曲)

ナターシャ・ミルコヴィチ=デ・ロー(vo)マティアス・ロイプナー(ハーディ・ガーディ)
〈録音:2010年3月〉
[Raumklang(D)RK3003(海外盤)]※現在取扱なし
[Raumklang]配信

分からないはずなのに

むこうの村のはずれに
辻音楽師がひとり立っている
かじかんだ指でライアーを回す
それだけが彼にできること

——シューベルト《冬の旅》より

 前回(第17回 音楽の置きどころ)に続くような形になるが、ラフカディオ・ハーンの話をしてもいいだろうか? NHKの朝ドラ『ばけばけ』のことではない。実在したハーンの話である。ドラマの方が、近ごろどうも低調なので、劇中のヘブンさんからリアルのヘルンさん——松江ではハーンをそう呼ぶ——を救い出してあげたい気持ちもあってのことだ。
 1850年、ギリシア人を母に、アイルランド人を父に、ギリシアのレフカダ島で生まれた。だが早くも2歳で離島。少年時代をアイルランド、フランス、イギリスで過ごした。おもに親戚筋に育てられ、母、次いで父からは、見捨てられたも同然と言ってよいだろう。16のときには事故で左目を失明している。19でアメリカに渡り、シンシナティ、ニューオーリンズで物書きになり、カリブ海のマルティニークで2年間クレオール文化を取材、そうして1890年、すなわち明治23年に、日本へやってきた。松江で小泉節子と結婚し、その後家族を養いながら熊本、神戸、東京で、教師もしくは物書きの人生を送った。家族への正当な相続に配慮し日本に帰化したのは1896年。このとき、小泉八雲と改名した。1904年、東京府西大久保にて没。享年54。書き遺したものは、日本語訳で「作品集」が全12巻、「著作集」が全15巻と膨大である(いずれも恒文社)。現在は、雑司ヶ谷霊園に節子とともに眠っている。
 さて、そんなハーンの音楽観は、どのようなものだったのだろう?

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