レコ芸アーカイブ

特捜プロジェクト・アニバーサリー作曲家2005
⑤カール・アマデウス・ハルトマン(生誕100年)[2005年5月号掲載]

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文・増田良介(ますだ・りょうすけ)

音楽評論家。ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会プログラム、各社ライナーノート等に執筆。著書にONTOMO MOOK『究極のオーケストラ超名曲徹底解剖66』(共著、音楽之友社)など。

カール・アマデウス・ハルトマンの作品の中で抜群に演奏頻度が高いのは、ヴァイオリン協奏曲《葬送》(1939)だろう。何度聴いても心打たれる音楽だ。この協奏曲は、アダージョとアレグロという2楽章を2つのコラールが挟む形になっている。独奏ヴァイオリンが沈鬱に歌う最初のコラールは、チェコのフス派教徒のコラール《汝ら、神の戦士たち》、弦楽によって歌われる最後のコラールはロシアの革命歌《同志は倒れぬ》の引用である。前者はスメタナ《わが祖国》の〈ターボル〉〈ブラニーク〉やスークの交響詩《プラハ》など多くの作品に、後者はショスタコーヴィチの交響曲第11番第3楽章にも使われているのでご存知の方も多いだろう。非常に印象的な引用だが、その意味は明らかだ。この協奏曲は、1939年3月のナチスによるプラハ占領への抗議として書かれたのである。《葬送》協奏曲だけではない。彼の多くの作品には、ナチスヘの、そして戦争の非人間性への抗議が込められている。今月取り上げるのは、音楽によるレジスタンスを続けた作曲家、カール・アマデウス・ハルトマンだ。

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