最新盤レビュー

新シリーズ「ベスト・クラシック100極」
角野隼斗監修のオムニバス盤も

ディスク情報

ベスト・クラシック100極 角野隼斗セレクション
〔ショパン:バラード3番,ポロネーズ第6番「英雄」,ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番~第1楽章,ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー,武満徹:弦楽のためのレクイエム,ライヒ:18人の音楽のための音楽~Pulse,他〕

アルトゥール・ルービンシュタイン,ウラディミール・ホロヴィッツ,セルゲイ・ラフマニノフ(p) レナード・バーンスタイン(p・指揮) 小澤征爾(指揮) アンサンブル・モデルン 他
〈録音:1929~2017年〉
[ソニークラシカル(M)(S)(D)SICC40314~5(2枚組)]

「クラシック音楽の百科事典」が
最新のラインナップと技術で登場

 日々、世界中で数え切れないほどの真新しい音源が世に送り出されているにもかかわらず、私たちは半世紀前の名盤、各時代の人々を釘付けにした名録音を聴き続ける。
 もちろんどんなジャンルの音楽でもそうした過去の音楽を掘り起こす楽しみはあるが、クラシック音楽が特別なのは、そうして掘り起こす宝箱のサイズが文字通り“底なし”なことだろう。そこには古くて新しい魅力があふれている。
 そんなクラシック音楽のジャンルにおいて、長い歴史を持つソニー・クラシカルとRCAレッド・シールから選りすぐりの名盤100枚がラインナップされ、手頃な価格で再発売されるのが「ベスト・クラシック100」シリーズだ。
 CBS・ソニーレコード社長だった大賀典雄の「クラシック音楽の百科事典を作る」という理念のもとスタートしたこのシリーズは、いわば各時代の音楽ファンの“底なし宝箱”の探究をサポートしてきた。
 今回の新シリーズ「ベスト・クラシック100 極」は、全タイトルを、新たに開発された高品質CD「極HiFi CD」でリリース。昔の巨匠の演奏がどんなものか聴いてみるだけなら、今やネット上でほとんどの音源にアクセスできるが、その音の粒だちや質感、奏者の呼吸を明確に味わいたいなら、こうした新技術を用いた音源を聴くと良い。

イメージキャラクターは角野隼斗
彼による『セレクション』にも注目

 今回、この新シリーズのイメージキャラクターにピアニストの角野隼斗が就任。これを記念して、角野がその100の音源から「好きなもの」、「自分自身の体験と深く結びついたもの」を選んだ『角野隼斗セレクション』(2CD)もリリースされた。
 そこには、永遠の名盤として名高いグレン・グールドのバッハ《ゴルドベルク変奏曲》より〈アリア〉(角野は1981年の録音のほうを選んだ)、ルービンシュタインやホロヴィッツのショパンや、ラフマニノフの自作自演、ヴァン・クライバーンが歴史に名を残したクラシック初のミリオンセラー盤など、ピアノ愛好家なら触れておくべき音源が収められている。また、小澤征爾指揮の武満徹《弦楽のためのレクイエム》、冨田勲のシンセサイザーによる《惑星》など、日本音楽史に燦然と輝く存在もセレクト。あわせて、クライバー指揮、ウィーン・フィルのJ. シュトラウスII世《こうもり》序曲や、モリコーネ自身が指揮する《ニュー・シネマ・パラダイス》といった、振れ幅の広い“愛され曲”も選ばれている。

幅広い音楽ファンに
新しい出会いのきっかけを

 「ベスト・クラシック100 極」全体のラインナップには他に、オイストラフやカザルス、チェリビダッケといった伝説の巨匠の音源もある。また、五嶋みどり、樫本大進、藤田真央といった今の日本を代表する顔ぶれも揃う。時代も国籍も実に幅広い名盤が高音質で再発売されたということだ。

 ジャンルを超越したピアニストとして、YouTubeで「かてぃん」としても活躍する角野がイメージキャラクターを務めることで、幅広い層に“古くて新しい”音楽と出会うきっかけがもたらされることにも期待してしまう。
 ネットで無料配信されるほどほどの音質につい慣れてしまっている方は、改めて歴史的名盤を高音質で聴くことで、その魅力を再発見できるかもしれない。また新進気鋭の情報を追うことで手一杯になっている方は、今に至る音楽を伝承し、次世代に影響を与えた巨匠の音楽に出会い、何かを学べるかもしれない。
 この機会に、聴いておきたかった音楽家や音源と改めて向き合うことができそうだ。

高坂はる香 (音楽ライター)

ソニーミュージック「ベスト・クラシック100 極」シリーズの詳細(外部サイト)はこちらから↓↓↓

ベスクラ_メイン

協力:ソニーミュージック

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