パーヴォ=DKAMのシューベルト全交響曲録音
第2弾は、対照的な5番と6番《小ハ長調》!

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SICC10490

文=沼口隆 (音楽学)

シューベルトの交響曲創作史のなかの5番と6番

F. シューベルト(1797~1828)は、知られている限り13曲の交響曲に着手し、7曲を完成させた。旧来の番号づけでは、未完の2曲、すなわち第7番ホ長調D 729と第8番ロ短調《未完成》を含むため、番号は「第9番」にまで及ぶが、1820年代に作曲された第7~9番に対し、第1~6番は1813~18年の約6年ほどの間に集中的に作曲された。

最初の6曲には、全体の構成なども含めて共通点が多いが、唯一短調の第4番は、先行する3曲からは一線を画し、第5番はまた、第4番とわずか数ヶ月しか隔てずに作曲されているにもかかわらず、第4番とは異なる境地を切り開いている。第5、6番は、ほぼちょうど1年を隔てて作曲されているが、見事なまでに対照的なペアを成しており、小規模で明朗な第5番に対し、独特の壮大さのある第6番は、同じ調の第9番《ザ・グレイト》の存在を踏まえて「小ハ長調」の異名でも呼ばれる。本盤は、1820年代の大躍進を遂げる前のシューベルトの、二つの異なった横顔の魅力を存分に味わわせてくれる。

それぞれの個性を鮮明にする最新録音

作曲者自身が「大交響曲」と題した第6番は、第5番に対してクラリネット2本、トランペット2本、ティンパニのほか、2本目のフルートが加わっており、そもそも編成だけでも規模が大きい。ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンは、これらの楽器を除けば、第5、6番をまったく同じメンバーで演奏しており、弦は共通の28名、第6番の場合には、総勢で41名となっている。譜面上はところどころコンチェルト・グロッソを思わせるほどに音の強弱の差が際立つ楽曲であるが、秀逸な機動性を誇る小規模編成が、コントラストを単なる音の大小としてではなく、明瞭な描線として浮き上がらせているのが耳を惹きつける。当時絶大な人気を誇ったロッシーニ・オペラからの影響も指摘されるが、終楽章などは、冒頭の音楽的なジェスチャーからして、そうした「におい」を漂わせ、細かい音型の執拗なまでの反復には、明瞭な影響が感じられよう。そうした細部のキャラクターの描き分けが心から楽しめる録音である。

見事なまでにコンパクトにまとまった第5番は、動機や主題の変化に満ちており、その均整が、バランスに長けたアンサンブルによって際立っている。知らずに聴けばW. A. モーツァルトをも思わせるような端正さは、ピリオド楽器の演奏でも似つかわしく思えるが、絶妙に抑制の利いたモダン楽器の小規模アンサンブルもまた、公開初演が1841年であったという初期シューベルト作品ならではの歴史的経緯にどことなく合っているような気がしてくる。メヌエット(第3楽章)の調が、平行短調であるという意表を突いた選択は、しかしモーツァルトには想定し難い、シューベルトならではの大胆さであろう。

ディスク情報

シューベルト:交響曲第5番,同第6番《小ハ長調》

パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(DKAM)
〈録音:2025年12月〉
[RCA Red Seal(D)SICC10490]SACDハイブリッド

※2026年4月22日発売予定

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協力:ソニーミュージック

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