
来日公演中のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)の記者会見が2025年11月18日(火)にサントリホールブルーローズで開催された。今回の日本公演は全国6公演(11月11日~18日)すべて完売しており、次期音楽監督のクラウス・マケラとの初来日は大成功に終わった。併せて、来日記念盤としてマーラー《千人の交響曲》も発売され、記者会見ではその話題でも質問が飛び交った(通訳:井上裕佳子)。その模様を速報レポでお届けしよう。(文・構成:編集部T.O.)
「マーラー・フェスティバル」での
歴史的快挙となったライヴ
《千人の交響曲》は今年5月に開催された「マーラー・フェスティバル2025」でのライヴ録音で、マケラとRCOの初共演盤となる。この公演についてマケラは、「忘れられない経験になりました。マーラーが指揮したことのある伝統あるオーケストラとホールで、多くの演奏者とともにこの曲を指揮できたことをとても大事に思っています」と話す。RCO事務局長のドミニク・ヴィンターリンクも「RCOはマリス・ヤンソンス指揮で2011年にライヴ録音していますが、それに勝るとも劣らない歴史的快挙です」と褒め称えた。
現在、CDとしては日本と韓国のみでの発売となっているが、今後ヨーロッパでの発売も検討されているという。

マーラー:交響曲第8番《千人の交響曲》
クラウス・マケラ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団,オランダ放送合唱団,パリ管弦楽団合唱団,ローレンス交響合唱団,オランダ国立児童合唱団&国立少年合唱団,ヘイリー・クラーク,ゴルダ・シュルツ,ミリアム・クトロヴァッツ(S)ジェニファー・ジョンストン,オッカ・フォン・デア・ダメラウ(A)ジョルジョ・ベッルージ(T)ミヒャエル・ナジ(Br)タレク・ナズミ(Bs)
〈録音:2025年5月(L)〉
[デッカ(D)UCCD45040]
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クラウス・マケラ Klaus Mäkelä
1996年フィンランド生まれ。12歳からシベリウス・アカデミーでチェロと指揮を学ぶ。若くしてスウェーデン放送響の首席客演指揮者に就任し、「数十年に一度の天才指揮者の登場」と評される。2020年、24歳の若さでノルウェーのオスロ・フィルの首席指揮者に、翌2021年のシーズンからは名門パリ管弦楽団の音楽監督にも就任。2027年シーズンからは、世界三大オーケストラの一つであるロイヤル・コンセルトヘボウ管の首席指揮者とアメリカ五大オーケストラに数えられるシカゴ響の次期音楽監督への就任が予定されている。
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コミュニケーションを大事にするRCOと
ラブリーな関係を続けていきたい
2027年シーズンからRCOの首席指揮者に就任するマケラだが、今回の来日公演は両者の相性の良さを示すような名演が続いた。「首席指揮者への就任前ですが、RCOとはすでに60回以上共演しています。世界的なオーケストラは高いレベルを目指している点では同じなのですが、オーケストラによって優先順位が異なっています。RCOは指揮者や奏者同士のコミュニケーションを大事にしているのが特徴です。RCOとは現在とてもラブリーな関係ですので、しばらく一緒にやっていきたいですね」(マケラ)。同時期にシカゴ交響楽団の音楽監督にも就任するが、「RCOとは毛色が異なるスーパー・オーケストラですので、どんな演奏ができるか楽しみにしています」と抱負を述べた。

快進撃の先を見据えて
現在まだ29歳のマケラは、12歳で指揮者を志した。「フィンランドは人口550万人ですが、文化に力を入れる国策もあって、国内に20のオーケストラがあります。現在94歳のヨルマ・パヌラ先生の薫陶を受けた指揮者たちが、若くしてオーケストラを振る機会に恵まれているのは、こうした事情もあります。ただ指揮者は一生が勉強です。もうすぐ100歳になろうというヘルベルト・ブロムシュテットさんは、毎日スコアを勉強しては新しい発見をしているといいます。見習わなくてはいけません」(マケラ)
快進撃が続く一方で、こうした謙虚さを忘れないマケラ。これからの活躍に注目していきたい。

