速報レポ特別企画
速報レポ

リッカルド・ムーティが来春日本で
《ドン・ジョヴァンニ》を指揮!

9月10日に東京文化会館で行なわれた記者会見の登壇者。左から田口道子(通訳)、ムーティ、主催者から東京・春・音楽祭実行委員会の鈴木幸一実行委員長、公益財団法人日本舞台芸術振興会の髙橋典夫専務理事(写真:Toru Hiraiwa)

世界的指揮者リッカルド・ムーティが、来年4~5月に日本でモーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》を舞台付きで上演する。その開催に向けた記者会見が開かれた。主催者の挨拶のあと、ムーティのコメントと続く質疑応答が約1時間半(!)にわたって行なわれた。ムーティとの質疑応答は多岐にわたったので、《ドン・ジョヴァンニ》関連に要点を絞って紹介しよう。(文・構成:編集部T.O.)

日本における「ダ・ポンテ三部作」完結編

ムーティはウィーン国立歌劇場来日公演で2008年に《コシ・ファン・トゥッテ》、16年に《フィガロの結婚》を振っているので、18年越しの日本における「ダ・ポンテ三部作」(《フィガロ》《ドン・ジョヴァンニ》《コシ》)完結編となる。「《ドン・ジョヴァンニ》のおもな公演として、ミラノ・スカラ座(1987年)がジョルジョ・ストレーレルの演出でトーマス・アレンやフランシスコ・アライサ、エディタ・グルベロ―ヴァらと、ウィーン国立歌劇場(1990年)はウィリアム・シメル、サミュエル・レイミー、キャロル・ヴァネスらと、同じウィーン国立歌劇場で1999年にカルロス・アルバレス、イルデブランド・ダルカンジェロ、アドリアンヌ・ピエチョンカらと共演してきました」(ムーティ)
※編註:いずれも映像または音源がある。下のジャケット写真は発売当時のもので、左から1987年スカラ座、1990年ウィーン国立歌劇場、1999年ウィーン国立歌劇場。現在はいずれも廃盤

ムーティはモーツァルトの「ダ・ポンテ三部作」を「イタリア・オペラ」と認識している。「モーツァルトのイタリア語は完璧でしたし、イタリア人の台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテとも深いやり取りをしていました。オペラはアリアよりも物語を語るレチタティーヴォこそ重要です。モーツァルトのレチタティーヴォはイタリア語のリズムや抑揚とピッタリ合っていて、奇跡的です。またダ・ポンテの台本にはイタリア語で二重の意味にとれる言葉がたくさん出てきますので、その意味を考えながら歌うべきです」(ムーティ)。

歌手はイタリア勢、オーケストラと合唱は日本勢で上演

今回の公演はムーティの希望で、娘のキアラ・ムーティの演出(2022年トリノ王立劇場で初演。舞台装置と衣装はトリノから運んでくる)、タイトルロールのルカ・ミケレッティほかムーティ肝煎りの歌手陣(ほぼイタリア人)を招聘するが、オーケストラと合唱団は東京春祭オーケストラと東京オペラシンガーズの日本勢が固める。「この企画を聞いたとき、すぐに『日本のオーケストラと合唱団で実現したらどうか』と提案しました。東京春祭オーケストラは反応がすばらしく、イタリア・オペラを勉強したいという意欲も強いので、東京オペラシンガーズともどもよい結果を生みだすと思います」(ムーティ)。

モーツァルトやヴェルディは人間を描いている

ムーティは、モーツァルトとヴェルディに格別の愛情を抱いている。「これまでたくさんのオペラを指揮してきました。勇気を出したいときには崇高なワーグナーを聴きますが、慰めを得たいと思うときにはモーツァルトやヴェルディを聴きたいと思っています。この2人に共通しているのは『人間を描いている』ことで、彼らのオペラでは登場人物の中に自分と似た人を見つけられるのです。ですから、もし無人島にいくなら《コシ・ファン・トゥッテ》と《ファルスタッフ》のスコアを持っていきます」(ムーティ)

最後にムーティは聖アウグスティヌス (Aurelius Augustinus、354~430)の言葉「音楽をする人は、愛することを知っている人だ」を引用して会見を締めくくった。近年、舞台装置付きのオペラ公演でピットに入ることがきわめて少なくなったムーティによる「東京文化会館休館前の最後の公演」(2026年5月から3年間休館)は、とても貴重な機会となろう。期待して待ちたい。

【オペラ『ドン・ジョヴァンニ』公演日程】
会場:東京文化会館(上野)
2026年
4月26日(日)14時開演
4月29日(水祝)14時開演
5月1日(金)14時
※公演速報はこちらから。

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