構成・文・CDセレクト=芳岡正樹
過去71年分の旧『レコード芸術』誌には、来日した名演奏家たち多くの貴重な写真が眠っています。当連載では、今から半世紀前(=1974年)前後の日本のクラシック界の活況を、それらの写真を通して振り返っていきます。第2回は、名ピアニストたちの来日ラッシュとなった1966年を特集します。
1960~70年代の高度経済成長にあって、ピアノは豊かさを象徴する文化資本となっていた。「ピアノ・ブーム」という言葉が生まれ、各地に音楽教室が開かれ、ピアノの生産台数も1960年が約5万台だったところ、1966年には15万台に急増していた。1965/66シーズンの世界的ピアニストの来日も実に14人を数えた。その中心はアルトゥール・ルービンシュタイン(1887~1982)とヴァン・クライバーン(1934~2013)という新旧の大スターだった。1966年6月に来日したルービンシュタインは1936年以来30年ぶり2度目。東京文化会館大ホールだけで8公演を行い、そのうち協奏曲を読響とともに3夜で7曲も披露(指揮はヴァンデルノートと岩城宏之)。オーソドックスで重厚な演奏により好楽家を喜ばせた。5~6月に初来日したクライバーンも負けてはいない。東京文化会館大ホールで6公演行い、渡辺暁雄&日本フィルとともに協奏曲を2夜、4曲を演奏。「メカニックで流麗な新鋭の演奏」(音楽年鑑1967年度)には女性ファンが多く、都内レコード店で開かれたサイン会は、会場に居合わせた中村紘子が「まるでビートルズなみの人気ね!」と形容するほどの熱気だった。
こちらの閲覧には有料会員へのご登録が必要となります。
有料会員登録がお済みの方は、Fujisan.co.jpにてお申込み頂いたアカウントにてログインをお願いします。