柴田南雄『名演奏のディスコロジー』 #5

第5回(1976年5月号)マウリツィオ・ポリーニ

復刻!柴田南雄の名連載レコ芸アーカイブ
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ポリーニによる『ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ,プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番《戦争ソナタ》,他』[グラモフォン]ジャケット

柴田南雄の連載、「名演奏のディスコロジー」の再掲載5回目です。
『レコード芸術』1976年1月号から77年12月号まで、計22回続いた本連載の第5回にはピアニスト、マウリツィオ・ポリーニが登場! 1976年3月11日に東京文化会館で行なわれた来日公演を聴いて「コンサート形式のピアノ演奏から、これ以上の大きな感銘を受けることはあるまい」と称賛する柴田さん。ポリーニの演奏について、ブーレーズのピアノ・ソナタ第2番を中心に論を展開させていきます。

※文中の記述・事実関係などはオリジナルのまま再録しています。(今日では不適切と思われる表現も含まれますが、原典を尊重してそのまま掲載いたします)
※文中レコード番号・表記・事実関係などは連載当時のまま再録しています。

マウリツィオ・ポㇽリーニ(以下、ポリーニと書くことにする)は、東京公演の2日目にピエール・ブーレーズの《第二ピアノ・ソナタ》(1948年作)を演奏した。1976年3月11日、東京文化会館大ホール。もう、わたくしはコンサート形式のピアノ演奏から、これ以上の大きな感銘を受けることはあるまい、と思った。

同じ作曲者の《第三ソナタ》(1957)は、もはや断片の集積から成る不確定の要素の強い曲態で、礼装のピアニストが何千人の聴衆を前に弾くという曲ではあるまい。今日言うところの「前衛的」音楽会に向いている。大コンサート・ホールで弾けないことはないが、《第二ソナタ》のように古典的な四楽章制から来る感動の集中は期待できない。その点、23歳の《第二ソナタ》はベートーヴェンの作品109以後やリストのロ短調ソナタなどよりも、楽章配置の上ではもっと古典的で、ともかくもソナタ・アレグロ的第1楽章、2番目に緩徐楽章、つづいてスケルツォとトリオ、最後にロンドンふうフィナーレから成っている。シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンにはもちろん、こういう大ソナタはない。メシアンには組曲形式の大作品(《まなざし》《鳥類譜》)があるだけだ。それをドビュッシーの伝統と見るなら、ブーレーズの《第二》は、半世紀前のポール・デュカの変ホ短調ソナタ以後の唯一のヨーロッパで書かれた古典的ソナタであろう。1950年以後、こういう作品が生まれる可能性はなくなったから、音楽史上最後の、正統的な四楽章のピアノ・ソナタということになるかもしれない。23歳のブーレーズがそれを意識して書いたかどうかは別として。

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