最新盤レビュー

『不思議の国のマッダレーナ』プレゼンテーション
@ウィーン イタリア大使館

ディスク情報

不思議の国のマッダレーナ – ヴィオラ・ダ・ガンバ作品集
〔ヒューム,テレマン ,サロ,マレ,ダウランド,シューマン,エルガー,他の作品〕

マッダレーナ・デル・ゴッボ(gamb, vc)ルカ・クィンタヴァッレ(cemb)アロイス・ミュールバッハー(C-T)アルテム・ヤシンスキー(p)
[Supreme Classics(D)SMGG005]SACDハイブリッド
※7月25日発売予定

ムーティ&フィルハーモニック・ブラスの『イタリアーナ!』で話題を呼んだイタリアの新興レーベルSupreme Classicsから、イタリアのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者マッダレーナ・デル・ゴッボの新譜『不思議の国のマッダレーナ』が発売される。今回、発売に先立ちウィーンのイタリア大使館で開かれたプレゼンテーションの模様をオーストリア在住のチェリスト、平野玲音さんにレポートしていただいた。

イタリア大使による挨拶 ©Reine Hirano

ヴィオラ・ダ・ガンバとチェロで奏でる大冒険

会場内の様子を窺い、フリルのついたピンク色のドレス姿でヴィオラ・ダ・ガンバを持った女性が顔を出す。――ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』のようにメルヒェンティックに始まったのは、6月23日ウィーンのイタリア大使館での、スプリーム・クラシックスの新たなCD『不思議の国のマッダレーナ』のプレゼンテーション。イタリアのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者マッダレーナ・デル・ゴッボが、イタリア大使の挨拶や司会のテレーザ・フォーグルらとのトークを間に挟みつつ、収録曲からヒューム、テレマン、サロ、ガウの一部を披露した。中でもテレマン《ヴィオラ・ダ・ガンバのための12のファンタジア第6番》第1楽章は、スケルツァンド(諧謔的に)の遊び心を保ちつつ、朗々とした歌に溢れる名演だった。

サロ《マダム・デル・ゴッボのためのお茶の組曲》(本CDが世界初録音)の第1、3楽章においては、時空を超えた独自の世界を創り出したが、作曲者が最前列で聴いていたため少々緊張した様子。「存命している作曲家の前でヴィオラ・ダ・ガンバを弾いたのは初めて」との説明に、客席からは納得した笑いが漏れた。

最後には、ヴィオラ・ダ・ガンバをチェロに持ち替え、アルテム・ヤシンスキーのピアノと共にエルガー《愛の挨拶》を。本人曰く「二つの違う脳を使う」ため、生演奏でのこの持ち替えは容易ではない。アリスよろしくこの難関も切り抜けて、チェロへの愛を再燃させた亡き父親への思いを紡いだ。どの楽器を奏でていても「彼女の声」になっており、トークから伝わってきた情熱的で人好きのする性格に、音を通して触れられる。

収録曲の大きな流れは、『不思議の国のアリス』と同様「深刻→さらに深刻→光明が差し、めでたしめでたし」なのだそうで、短調の作品群が長く続く。アリスを想像して聴くと、暗い曲の一つ一つに夢が広がり、わくわくしながら先へ先へと進んでしまう。あなたもマッダレーナに連れられて、不思議の国の大冒険に出かけてみては?

平野 玲音 (チェリスト)

(左から)ヤシンスキー、カウンターテナーのアロイス・ミュールバッハ―、デル・ゴッボ、サロ、イタリア大使 ©Reine Hirano

協力:ナクソス・ジャパン

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