特別企画

【追悼】 “21世紀のトリスタン” との突然の別れ
R.I.P. ペーター・ザイフェルト

ドイツのテノール歌手ペーター・ザイフェルト(1954.1.4.~2025.4.14.)が亡くなった。享年71。1990年代~2010年代、ワーグナー上演では欠かせないヘルデンテノールとして活躍、ドイツ語圏のメディアではそのあまりに早すぎる逝去を惜しむ声が上がっている。わが国においても、ザイフェルトは、1986年のN響定期公演1000回記念のメンデルスゾーン《エリア》を皮切りに、バイエルン州立歌劇場の88年(サヴァリッシュ指揮《ドン・ジョヴァンニ》,《アラベラ》日本初演)92年(同《影のない女》《さまよえるオランダ人》)2005年(メータ指揮《ニュルンベルクのマイスタージンガー》)来日公演に帯同、その他2001年、2018年、2019年にも単身来日と、日本のオペラ・ファンにはお馴染みだった。ディスク歴では、バレンボイム指揮の一連のワーグナー全曲録音(オランダ人、タンホイザー、ローエングリン、マイスタージンガー)やヴェルザー=メスト指揮《トリスタンとイゾルデ》等の他、《フィデリオ》《魔弾の射手》《アラベラ》など主要なドイツ・オペラを網羅。さらに特筆すべきは、アバド唯一のマーラー《千人の交響曲》や、サヴァリッシュ(コンセルトヘボウ管)やムーティ(フィラデルフィア管)、バレンボイム(ウェスト=イースタン・ディヴァン管)の《第九交響曲》などオーケストラ曲のソリストとしても様々な指揮者に起用された。最後に、長身の凛々しい舞台姿でいつも颯爽と歌った彼の「二枚目ぶり」が窺えるCDジャケットをまとめてみた。あらためてその美声とスタイリッシュな歌唱を偲びたい。

上段3点は、RCAと旧EMIに録音したオペラ・アリア集および名歌集。ドイツ・オペラはもちろん、イタリア・オペラでも明るい美声を聴かせた。下段左は、フィッシャー=ディースカウの指揮で、その夫人ユリア・ヴァラディと録音したワーグナー名場面集。中央は、パートナーでもあったペトラ・マリア・シュニッツァーとのワーグナー二重唱集。右はドミンゴ指揮で主役アイゼンシュタインを歌ったオペレッタ《こうもり》全曲盤(ザイフェルトは右から2人目)

Text゠編集部(Y.F.)

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