
作り込まれたスタジオ録音を楽しむ喜びがある一方で、ラジオやテレビなどを通じてリアルタイムでコンサート中継を聴くことには、特別な魅力があります。それは、自宅にいながら、まさに今音楽が生まれる瞬間に立ち会うという不思議さと高揚感にあるのかもしれません。近年、配信サービスの登場によって、コンサート中継のあり方が大きく変わり、より手軽に、そして臨場感たっぷりに楽しめるようになっています。今回は、そんな最新のコンサート中継の魅力について、山之内正さんに解説していただきます。
文=山之内正(オーディオ評論)
世界中のコンサート中継にアクセス
ひと昔前まで演奏会のライヴを家で楽しむといえばFMやテレビなど放送が主役だったが、最近はスマホやパソコンで鑑賞するスタイルも一般的になってきた。放送や物理メディアからインターネット配信へと、家庭の音楽鑑賞を取り巻く環境が大きく変化するなか、コンサート中継も例外ではないのだ。
放送と配信の大きな違いは後者の方が視聴の自由度が高いことにあり、特に、ライヴ中継の終了後も楽しめるオンデマンド再生には大きな付加価値がある。ネットにつながってさえいれば、録音や録画の必要がなく、いつでも好きなときに再生できるのだ。FMで中継された演奏会をカセットやMDにエアチェックした経験がある読者ならお分かりだと思うが、記録済みメディアの管理は手間がかかり、最近は再生環境を維持し続けるのも簡単ではない。
インターネットがあれば世界中どこにでも配信できるため、放送のように視聴地域が限定されない点も配信の長所の一つと言えるだろう。海外の音楽祭などチケットが入手しづらいコンサートも居ながらにして体験できるメリットは大きく、これまでなじみのなかったアーティストの演奏に接する機会が増える楽しみもある。多くの配信サービスは音だけでなく映像付きのプログラムが充実しているので、舞台をじっくり鑑賞したいオペラファンにもお薦めしたい。
このコンテンツの続きは、有料会員限定です。
※メルマガ登録のみの方も、ご閲覧には有料会員登録が必要です。
【ログインして続きを読む】下記よりログインをお願いいたします。