プレルーディウム連載

【新連載】プレルーディウム 第1回/舩木篤也

音楽評論家・舩木篤也氏の新連載がスタートしました。「プレルーディウム(Präludium)」はドイツ語で「前奏曲」の意味。毎回あるディスク(音源)を端緒として、ときに音楽の枠を超えて自由に思索を巡らせる、毎月1日更新の注目連載です。第1回は河村尚子の最新アルバム『20-Twenty-』を取り上げます。

河村尚子:『20-Twenty-』
ディスク情報

『20-Twenty-』
河村尚子(p)
[RCA(D)SICC19080]SACDハイブリッド

徳の指、機転の声

2023年7月号をもって休刊となっていた『レコード芸術』が、多くの読者・支援者の力を得て、ついに復刊する。私自身、存続を願う声を同志の執筆者たちと上げた立場から、とても嬉しく思っている。

もちろん、いっぽうで冷ややかな声があったことも承知している。窮地に立たせた非力なお前たちがどの口で言うかという批判もあった。無数の情報に誰もがアクセスできる時代なのだから、そもそも役目は終わっているとか、エラそうな教養主義はもう要らないとか、いまどき「レコード」だなんて、音源はもはや吟味選択して手に入れるものじゃない、とか。

それぞれに一理あるとは思う。けれども私たちは、音楽をめぐる、音源をめぐる複数の異なる「声」が交差する、そうした場が続いて欲しかった。そんな場が一つ、また一つと消えてゆくなかで、『レコ芸』までもが消滅するのが辛かった。SNSがいかに盛んでも、個々人(その多くは匿名だ)が放つ寸評が乱立するだけでは、それらが衝突し「炎上」を起こすだけでは、豊かな場とは言えない。

『レコ芸』とて、もちろん旧態を繰り返していては、それこそ豊かになれないだろう。onlineという道を決断したのも、そこを考えてのことだと思う。どうなるか。期待したい。

さて、そんな新たな門出に似つかわしい素敵なディスクを紹介しよう。ピアニスト、河村尚子の新作ディスク『20 -Twenty』。これは痛快な一枚である。彼女の「声」が、じつによく伝わってくるのだ。

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