
1963年度から2022年度まで、60回にわたり実施された「レコード・アカデミー賞」は、日本のクラシック音楽文化、とりわけ録音芸術の発展に大きく寄与してきました。その伝統を受け継ぎつつ、新たな時代における録音芸術の姿を映し出すことを目的に、「新レコード・アカデミー賞」を創設いたします。ストリーミングやデジタル配信など、音楽の楽しみ方が多様化する現代において、優れた録音・演奏・企画を顕彰し、クラシック音楽の未来を展望します。
全部門の結果発表が終わったいま、選考委員長の満津岡信育さんに、今回の賞をふりかえっていただきました。
◎第1回新レコード・アカデミー賞の概要はこちら
総評(選考委員長:満津岡信育)
記念すべき「第1回新レコード・アカデミー賞」は、きわめて僅差で大賞が決まった。「レコード・アカデミー賞」時代は、第二次選定会で過半数を得るまで投票が繰り返されることもあったのに対して、今回は、選定委員が、5点・3点・1点と3枚のディスクに票を入れる形の一発勝負となり、結果はご覧の通りである。大賞、大賞銀賞、大賞銅賞のいずれも、通り一遍の解釈とは対極に位置した、果敢に攻めまくった演奏を収録したディスクが選ばれている。もちろん、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集にしろ、モーツァルトの《レクイエム》にしろ、王道の名曲だけに名盤は数多くある。佐藤俊介+スーアイ・チャンとピション/ピグマリオンの両盤は、聴き手によっては、「さすがにやり過ぎでは?」と感じる方もおられるかもしれないが、21世紀も、四半世紀を経過した2025年にふさわしい存在感と説得力を放っている。大賞銅賞を獲得したコパチンスカヤは選曲・演奏の両面で、例によって独自の世界を形づくり、期待を上回る成果を収めている。今回は、選考対象から、国内盤/国内仕様盤という枠が取り払われ、【音楽史部門】はリュリの抒情悲劇《アルセスト》、【現代曲/ポストクラシカル部門】はオスパルトの器楽作品集といった具合に、一般的とはお世辞にも書けない新鮮な演目のディスクが選ばれたことも喜ばしい。特別部門の各ディスクおよび「配信」も、ぜひ、この機会に接していただきたいものばかりである。
音楽評論家。1959年東京都杉並区生まれ。1999年から現在の筆名を用い、音楽誌やCDのライナーノートの執筆を中心に活動中。旧『レコード芸術』誌の月評では、「再発売」を振り出しに、「ビデオ・ディスク」、「管弦楽曲」、「交響曲」の新譜月評を担当し、内外の音楽家たちのインタヴュー取材も数多く手がけた。2016年4月からNHK-FMの『名演奏ライブラリー』で案内役を務めている。
第1回 新レコード・アカデミー賞 大賞3賞

【大賞】
佐藤俊介(vn)スーアン・チャイ(fp)BEE1H0VEN
[COBRA (D)COBRA0094S(3枚組)]

【大賞銀賞】
ピション指揮 モーツァルト:レクイエム
[Harmonia Mundi(D)HMM902729(海外盤)]

【大賞銅賞】
コパチンスカヤ(vn)エグザイル
[アルファ(D)NYCX10503]
第1回 新レコード・アカデミー賞 部門賞

【オーケストラ曲部門】
コパチンスカヤ(vn)エグザイル
[アルファ(D)NYCX10503]

【室内楽/器楽曲部門】
佐藤俊介(vn)スーアン・チャイ(fp)BEE1H0VEN
[COBRA(D)COBRA0094S(3枚組)]

【鍵盤曲部門】
アヴデーエワ(p)ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ(全曲)
[PentaTone(D)PTC5187480(2枚組,海外盤)]

【オペラ/声楽曲部門】
ピション指揮 モーツァルト:レクイエム
[Harmonia Mundi(D)HMM902729(海外盤)]

【音楽史部門】
リュリ:抒情悲劇《アルセスト》全曲
[Chateau de Versailles Spectacles(D)CVS149(3枚組,海外盤)]

【現代曲/ポスト・クラシカル部門】
クラウス・オスパルト/書いた…~器楽作品集
[Bastille Musique(D)SBM033(海外盤)]
第1回 新レコード・アカデミー賞 特別部門/企画・制作

デジレ=エミール・アンゲルブレシュト(指揮)他/エラート録音全集
[Erato(M/S)2173251689(16枚組,海外盤)]

究極のSACDハイブリッド・コレクション第12回(3タイトル)
[ソニー・クラシカル]
※ジャケットは『ストラヴィンスキー:春の祭典,ペトルーシュカ,火の鳥(1910年全曲&1911年組曲)』(SICC10470)のもの

ショスタコーヴィチ/交響曲全集,協奏曲集,歌劇《ムツェンスク郡のマクベス夫人》
[DG(D)4866649(19枚組,海外盤)]

「クラシック・タワーレコード企画盤」シリーズ
[タワーレコード]
第1回 新レコード・アカデミー賞 特別部門/配信

ボムソリ(vn)フルシャ=バンベルク響 /ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 他
[ステージプラス]
結果発表ページへのリンク集
【第一次選定:年間ベスト】2025年12月1日(月)発表
・新譜月評執筆者全員による年間ベスト その1「オーケストラ曲部門」
・新譜月評執筆者全員による年間ベスト その2「室内楽曲/器楽曲部門」
・新譜月評執筆者全員による年間ベスト その3「鍵盤曲部門」「音楽史部門」「現代曲/ポスト・クラシカル部門」
・新譜月評執筆者全員による年間ベスト その4「オペラ/声楽曲部門」
【第二次選定:部門賞】2025年12月8日(月)発表
・第1回「新レコード・アカデミー賞」部門賞 発表!
【最終選定:大賞、大賞銀賞、大賞銅賞】2025年12月19日(金)発表
・第1回「新レコード・アカデミー賞」大賞3賞 発表!
【特別部門:企画・制作】2025年12月22日(月)発表
・第1回「新レコード・アカデミー賞」特別部門/企画・制作 発表 + 選定座談会
【特別部門:配信】2025年12月22日(月)発表
・第1回「新レコード・アカデミー賞」特別部門/配信 発表
