サー・サイモン・ラトルと、バイエルン放送交響楽団(以下、BRSO)の記者懇親会へ行って参りました。その模様を速報で、ダイジェストにてお届けします。
指揮者ラトル & BRSO
苦節6年を経た、新たな挑戦
11月25日、2023/24シーズンよりBRSOの首席指揮者に就任したサー・サイモン・ラトルと、事務局長ニコラス・ポントの初来日コンビが、東京で記者懇親会を開いた。
ラトル BRSOは、伝統的レパートリーの公演、さらに同時代音楽の演奏会シリーズ「ムジカ・ヴィヴァ」にも意欲的に取り組んでいる、魅力あふれるオーケストラです。日本とはすでに深い関係がありますが、今回の来日を契機に、より新鮮な関係を結べたらと思っています。
BRSOの事務局長ポントは、この6年間は苦難の連続だったと語る。団員に親しまれた前任の首席指揮者マリス・ヤンソンスが亡くなり、パンデミックで公演もままならない。それまで行っていた来日も見合わせることになった。
ポント しかし、サー・サイモンが首席指揮者に就任してからの1年間は、われわれにとって新時代の幕開けでした。ピリオド楽器の使用や、吹奏楽の演奏など、今までになかったことに次々挑戦しています。ようやく叶った来日も、とても特別な機会となります。
ニューイヤー・コンサート並みの素早さで
準備されたマーラー:交響曲第7番のディスク
今回の来日公演では、11/23兵庫、28東京、29愛知のプログラムにマーラー:交響曲第7番《夜の歌》を入れている。サー・サイモンが1980年にバーミンガム市響で振って以来、何度も取り上げてきた、渾身のレパートリーだ。
ポント 今月上旬にミュンヘンで行われた公演のライヴ盤を、ニューイヤー・コンサートのCD並みのスピードで準備しました。大成功を収めた演奏です。今回の日本公演で先行発売していますよ!
マーラー:交響曲 第7番 ホ短調《夜の歌》<初回限定生産盤>
サー・サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
〈録音:2024年11月6-8日 ミュンヘン、イザールフィルハーモニー・イン・ガスタイクHP8(L)〉
[BR KLASSIK(D)900225JP]
初回限定生産盤・日本語解説付
2024年12月13日 一般発売予定
【音楽之友社の関連書籍】
マーラーを語る 名指揮者29人へのインタビュー
ヴォルフガング・シャウフラー 編 天崎浩二 訳
ISBN:9784276201361 〈発行:2016年3月〉
29人の名指揮者が、マーラー作品との出会い、演奏の難しさ、楽しさを語り尽くす。サー・サイモンはもちろん、今までにBRSOの首席指揮者を務めた、マリス・ヤンソンス、ロリン・マゼールによる言葉も収録されている。
ブルックナーの交響曲第9番
そして尊敬する指揮者たち
サー・サイモンは質疑応答で、さらに色々なことを語ってくれた。
今回のプログラムのなかには、コールス校訂版によるブルックナーの交響曲第9番もある。
ラトル 今回演奏するブルックナーの第9番は、「現世」を描いていると考えています。そして終わり方にも議論がありますね……私はいずれの終結の方法もいいと思っています。またこの曲は、20世紀へ向かう作品だということを忘れてはならないですね。今回のプログラムでは、9番とともに、リゲティやウェーベルンを入れています。
この楽曲も、ぜひ音源化を期待したいところ。そしてブルックナーの指揮者については、ヘルベルト・ブロムシュテットを尊敬していると語る。
ラトル 彼は古楽、教会音楽……ブルックナー演奏の基盤をしっかり押さえています。彼以上のブルックナー指揮者はいないと思っています。
またピリオド楽器を使用する背景には、ニコラウス・アーノンクールへの敬愛もあるようだ。
ラトル 私はアーノンクールの追っかけでした! 古楽、特にバッハに向き合うためには、音楽の内外のもの(テクストなど)の探究を積み上げなくてはいけません。この姿勢は、他のあらゆる音楽と対峙する場合にも相通じると考えています。
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【サー・サイモン・ラトル指揮、バイエルン放送交響楽団 日本公演】
*はマーラーの第7番を演奏
2024/11/23(土・祝) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール*
2024/11/24(日) ミューザ川崎シンフォニーホール
2024/11/26(火) サントリーホール
2024/11/27(水) サントリーホール
2024/11/28(木) NHKホール (NHK音楽祭2024)*
2024/11/29(金) 愛知県芸術劇場 コンサートホール*
各公演の詳細はこちらから。
Text:編集部